乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百九十六
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「なるほど……アピールタイムか」
「はい。参加者それぞれが与えられたアピールタイムを自由に使って自分をアピールすれば、単純に容姿を比較するだけじゃなくなるでしょう? それに女装している男子は、アピールのやり方次第で声を出さなくても済むようになるでしょうし……」
翌日、文化祭実行委員会で会議をする中、凜香さんのおかげで思いついた新しい案――――アピールタイム作戦を提案してみたところ、深雪は渋い顔になっていた。
「ええと、ダメでしたか?」
「いや、ダメではないんだがな……。ただ、それで本当に参加者が来てくれるのかは疑問が残るのではないかと思ってな」
深雪の渋る反応に流され、全体の雰囲気も否定派が多い雰囲気となり、少なくとも新たな男子の参加者を募るための案としては否定されそうになったところで、
「待ってくれ!」
翡翠が手を挙げた。
「俺様は良いと思うぜ! 同士の目的は男子側に声を出さなくても大丈夫なんて消極的な逃げ道を作ることじゃない。むしろアピール次第で十分な勝ち筋がある状態を作ることだろう?」
「おお……」
意外……でもないけれど、優花の目的までしっかり把握して賛成をした翡翠に少し驚く。
「真央と虚空院が参加決定してるからな。単純な容姿だけの審査じゃ勝負にならないのはわかりきってるぜ? それに他に案もないんだろ?」
「む……」
深雪に向けられた翡翠の言葉に、深雪が図星のようにうなり、ゲームセット。翡翠の鶴の一声によって、一気に場の空気が賛成に傾き、優花のアピール作戦とそれを周知することが決定した。……ところまでは良かったが、
「アピール次第で十分な勝ち筋……と言ったが、実際八雲と虚空院が参加する中で勝ち筋を見出せる者がどれだけ居ると思う」
翡翠に他に案がないと言われてからずっと考えていたのだろう、会議後深雪が優花と翡翠だけを残し三人での小会議をすることになった。
「まあ、凜香さんも真央も容姿はもちろん良いですし、能力も高いですしね……大抵のことはできますよねあの二人は……」
これでアピール作戦だけで勝ち筋を見出せと言う方が無茶だったかもと優花が思ったところで、翡翠がにやりと笑った。
「ふっ! おいおい二人共、肝心なことを忘れてるぜ! たしかに真央も虚空院も容姿は抜群、能力も高い。でも、それが周知されているかは別の話だぜ?」
「あ……たしかに!」
真央と凜香さんが両方居る優花達のクラスと、二人の知り合いである深雪は二人の容姿と能力の高さを知っているけれど、他のクラスや他の学年の人からすれば縁遠い人物である二人のことをどれだけ知っているのかという疑問はたしかにある。
「……二人共先日の体育祭で活躍していたと思うが?」
「たしかに活躍はしてたけどな、結局みんな遠くから見てるからな。足が速いことぐらいしかわからなかったはずだぜ」
「言われてみれば、そうかも……」
凜香さんを見ることに夢中で気が付かなかったけれど、今思えば翡翠の言う通り真央と凜香さんの注目度はそれほど高くなかったかもしれない。
今回のミスコンで間違いなく二人は他の学年の人達にも有名になるだろうけれど、今の段階では二人の参加で心が折れる人は少ないという翡翠の指摘は当たっているかもしれない。
「二人がそれほど有名ではないというのはその通りかもしれんが、二人を知らない者の参加を促しているのは騙している気分になるが、そこはどうだ?」
「気分の問題なら気にしなければ良いぜ。別に優勝する可能性がゼロってわけじゃない。それに最悪参加者が居なくてもあと二人は確保されているようなもんだし、問題ないだろ?」
「……あと二人?」
怪訝な顔をした深雪に、翡翠がまず指したのは自分、そして次に――――深雪だった。
Twitterにサロメ嬢の一周年記念で書いた小説と夢小説企画の時の小説を上げてましたが……鍵垢? だったみたいで、探しても見れなかったというのが今さらわかりました。興味あったら探してください何て書いてたのに、もし探してくれた方がいたらすみませんでした……。
新しくアカウント作ってそっちで上げなおしたり、短編小説も何か書いたらそっちで上げる形にしようかな……と現在思っておりますが、暑すぎて何もやる気が……。




