乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百九十三
「誰が!」
「遊んでない!」
二人そろって否定すると、楓は「はあ……」と深くため息をついた。
「まあ、楓にはどうでも良いですけどね。それよりも……本当に女装して配ってたんですね。冗談かと思ってました」
「男女混合ミスコンの宣伝にもなるしな。実際ビラ配ってみると反応は良かったぞ。参加者が来てくれるかはわからないけど」
実際、優花達からビラをもらった人達の反応を見れば、普通に配るよりも宣伝効果はあったと思う。
あとは参加者が名乗り出てくれるかどうか。こればっかりは参加したいと思ってくれた人がどれだけ増えたかを正確に把握することはできない以上、実際に参加者が来るまでわからない。
「いや、灰島先輩。女装の姿のままでいつのも感じで話さないでくださいよ。違和感がすごいです」
「そう? じゃあ楓さんにはこっちでいきますね?」
凜香さんが来てから通常モードに戻していた声と仕草を、女性モードに切り替えると楓は目をぱちくりとさせて本気で驚いていた。
「……え? 今の灰島先輩が喋ったんですか?」
「ええ。まあ、四五郎さんと違ってそんなに長くは持たないですけどね」
ふふっと笑って見せると、楓は優花の変わりように言葉を失っていたが……、
「ちょっと、わたくしは無視ですか!」
優花と楓の間に凜香さんがずいっと割り込んできた。
「いやいや、無視したとかじゃないですから……」
また凜香さんとのビラを巡る攻防戦が行われそうな気配に優花がどうしたもんかと内心冷や汗をかいていると、今度は楓が優花と凜香との間に割って入ってきた。
「はい、そこまで。二人で遊ぶのは楓が行った後でやってください」
「いや、だから遊んでたわけじゃ……」
優花がまた否定しようとすると、
「はいはい、そういうのいいんで。それよりももうビラは配り終わったんですか?」
面倒くさそうな顔の楓に適当な感じで流された。
「いや、まだですけど……」
優花が手に持っているビラの束を楓に見せると、楓は少しだけ驚いた表情を見せた。
「あんなにあったのに……もうこれだけですか?」
「竜二も手伝ってくれましたからね」
楓が驚くのも無理はない。優花達がビラ配りを始めてから、優花達の前を通ったほとんどの生徒にビラはちゃんと受け取ってもらえたので、想像していたよりもビラの減りが早かったのだ。
「ふーん……もっと作っておいた方が良かったですか?」
「いや、全校生徒の全員に配る必要はないから、これ以上はいらないかな」
一人一枚受け取ったとすると、ビラが行きわたるのは全校生徒の六割か七割ぐらい。このビラを見て友達やクラスメイトと話す人も多いだろうし、ちゃんと全部配ればほとんど全員に宣伝はできるはずだし、これ以上作ってもあまり意味はない。
「あっそうですか」
「足りなくならないか心配してくれたってこと?」
「別に違いますけど。勘違いしないでください。楓はただ男女ミスコンが参加者が集まらなくて中止なんてつまらないことにはしたくないだけです」
優花の言葉を否定するようで、内容的にはしっかり心配してくれていると思うのだけど、気のせいだろうか。
「いや、だから心配してくれてるんでしょ?」
「だから違いますってば! 男女ミスコンを無事に開催させて誰がこの学校の女王にふさわしいかをはっきりさせたいだけです! まあ、勝つのは楓に決まってますけどね!」
その自信はどこから来るんだ……?
まあ、現時点での参加者の中なら楓はたしかに可愛さだけで言えば上位に入るとは素直に思う。ただ、楓が圧倒的に人気が出そうかと言われると正直微妙だと思うのだけど、楓のこの自信は何か秘策でもあるんだろうか。
壱百満点のお嬢様(-)が今度、募集した夢小説を読む企画をやるらしく、夢小説とか書いたことないけど募集に間に合えば出したいと思い、ちょっと夢小説について調べていたところ主人公の名前を自分の名前に変えてくれる機能が付いた夢小説を発見。
ウェブ小説ならではの楽しみ方だなと思い、ちょっと感動。これを応用すれば登場人物を知人の名前とか好きな人とかキャラの名前とかにしたりして色々できそう。
全然知らなかったけど……こういう機能っていつからあったんだろう?




