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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二十九

 真央達のテーブルを見てみると、案の定凛香は真央がいることで緊張して、顔が強張り不機嫌に見え、真央は真央で凛香が不機嫌そうなので苦笑い。竜二は隣の真央と、機嫌が悪そうな凛香に困って優花の方を助けを求めるように見ていた。


『兄貴! 助けてください! 超きまずいっす!』

『……がんばれ!』


 竜二とアイコンタクトを交わしていると、優花の隣に座っていた楓がぐいぐいと肘で脇腹を押してきた。


「灰島先輩! 聞いてます?」

「ん? 悪い、聞いてなかった」


 楓に話しかけられていたことに気が付かなかったらしい、素直に謝ると、楓は呆れたようにため息をついていた。


「はーもー、だから……獅道君と真央先輩って結構お似合いに見えませんか? 二人並ぶと絵になるって言うか!」

「お似合い? ……んー……まあまあかな?」


 マジハイでは竜二ルートも当然あるので、真央と竜二がくっつくエンディングも当然あった。


 楓の言う通り確かにイケメンの竜二と可愛い部類に入る真央はお似合いに見えなくもないけど……。


 ちらっと淀の方を見てみると、じっと竜二達の方に顔を向けていた。相変わらず前髪で顔が隠れているため、その表情はわからない。竜二と真央がお似合いと聞いて淀は内心複雑なのではないだろうか?


 優花と花恋はともかく、楓と淀はやっぱり話が合わないようで、二言三言言葉を交わしてはすぐにお互いに黙ってしまい食事中静かになってしまうシーンが続いた。


 くじで席を決めたのは失敗だったな……。


 一年生組の竜二と淀と楓そして二年生組プラス花恋の、優花と凛香、真央、花恋組の二つに分けていれば、会話に困ることもなかっただろう。優花が同じ席にいれば凛香へのフォローもできたのだが、別の席なのでフォローはできない。


 この状況を楓が狙った可能性は……まあないか。楓が使ったのはスマホアプリで、細工をする余裕も無かったはずだし……。


 いや、待てよ?


 あらかじめくじの結果が分かれば、くじを引かせる順番を自分で決めることで、結果を自由にできる可能性がある。ただ、そのためには、楓はあらかじめ優花達と会うことを知っていなければいけなかったはずなので、それはありえない。


 考えすぎか……。


 最後のライスを口に入れて、水で無理やり流し込む。なんだか全体的に気まずい昼食も終わり、次は竜二が苦手だというミニマム・ワールドに行くことになった。


「んー……別に普通だな」

「物足りないくらいだよねえ……」

「そっ、そうっすね!」


 ミニマム・ワールドは三人ずつ座るため、また楓がくじをしようと言い出した結果、優花は花恋と竜二と一緒に挟まれるようにして座り、後ろが真央と凛香と淀そして一番後ろが楓と見ず知らずのカップル。


 後ろから会話が全く聞こえてこないのが怖い。

 やっぱりくじは微妙なんじゃないだろうか? 次楓がくじと言い出したら止めた方が良いかもしれない。


「……で? 竜二はこれの何が苦手なんだ? 子供が歌う歌に合わせて、人形の世界を船で旅してるだけで、スピードも出てないし……」

「いや、なんつうか、説明しづらい怖さがあるっつうか……」

「お兄ちゃん、このミニマム・ワールドが苦手な人は結構いるんだよ?」

「そうなのか?」


 まあよくわからないが、花恋がそう言うならそうなんだろう。

 結局竜二を弱らせることには成功したものの、竜二を弱らせて淀とくっつける作戦は完全に失敗だったと言わざるを得ない。竜二と淀が話せる機会がないまま次のアトラクションへ行くことになってしまったのだ。



「ホラーハウス……そのまんまのアトラクション名だな」

「あはは、そうだね」


 優花のツッコミに真央が横で笑っていた。


 木々の奥にある今にも崩れそうな洋風の大きな家といった感じの建物に入り、少しだけ並んだあと中へ。

 中に入ると、一枚の肖像画が話しかけてきて案内をしてくれるという凝った仕掛けがあった。案内に従い先に進むと、すぐに乗物に乗るよう促された。


「今回は……」


 くじはやめようと言おうとした、優花の機先を制するように楓がぱぱっと優花達の背を押し、勝手にペアを決めてしまった。


 優花の隣になったのは淀、その後ろが凛香と花恋、竜二と真央、最後に楓。


 順番を勝手に決められてしまい、何も言う暇もなく出発になったが、これで一つはっきりしたことがある。


 やっぱり楓は竜二と淀のカップル成立を阻止しようとしているし、竜二と真央をくっつけようともしている。優花の思惑とは真逆のことをしようとしているわけだ。


 優花は心の中で楓への警戒度を上げつつ、隣の淀の様子をうかがった。


「……せんぱい?」

「あっ、ごめん。竜二と一緒の方が良かったかなって」

「……そんなことは」


 うつむいてしまった淀に優花はぽりぽりと頭を掻いた。


 淀の前髪が長すぎて表情が見えないため、照れているのか、それとも不快だったからうつむいているのか判断がまったくつかない。竜二だったらわかるのだろうが、離れているため話しかけることはできなかった。


 暗い中を、ポルターガイストで物が動いたり、絵画に描かれた人が話しかけてきたりする度に、すぐ後ろから「きゃっ!」という可愛らしい凛香の声と「にははっ!」という凛香の反応を楽しむ花恋の声が聞こえる。


 とりあえず二人が楽しんでいるのは良いんだけど……。竜二と真央の方はどうなんだろうか? さすがに暗すぎて竜二達の方までは確認できなかった。


「……せんぱいは」

「ん?」


 うつむいていた淀が顔を上げ、ずいっと優花の方に顔を寄せてきた。


「……せんぱいは……どう、おもいますか?」

「……どうって? なにが?」

「……だから……その……あたしとりゅうのことです」


 二人をどう思うか……ね。うーん……。


 ここで「お似合いだと思う」と言うのは簡単だが、それで良いのだろうか?

 淀が安心してしまうと、今のままで仲は進展しないように思える。淀と竜二をくっつけるためには、淀からももっと積極的に行ってもらう必要があるんじゃないだろうか?


「あー……そうだな。仲は良さそうに見えるけど、竜二があの様子だからもう少し積極的に話しかけても良いんじゃないかな?」


 余計なお世話だという自覚はあるものの、凛香のためだからと自分に言い聞かせてそう言うと、淀はこくりと頷いた。


「……そうですか……そうですよね……わかりました!」


 ぐっと拳を握る淀に心の中でエールを送っていると、ホラーハウスはもう終了。


 きゃーきゃー言いすぎて明らかに疲れている凛香を気遣って、空いていたベンチに座り二人で休憩。残りの五人は別のアトラクションに行き、あとでスマホで連絡を取って合流することになった。

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