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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百八十八

「なんだ奥真?」

「男女混合ミスコンってことは、男子は女装するんだろ? そもそも勝負になるとは思えないぜ?」


 まあ、当然と言えば当然の疑問。むしろ、何で誰も言い出さなかったというレベルの疑問に深雪はきらんと眼鏡を光らせた。


「うむ。そう思うのも無理はない。そこで……この資料を見てくれ」


 あらかじめ疑義を抱く人がいるのは想定し、準備していたらしい深雪が、手元にあったリモコンを操作、ピッという音と共に会議室に設置されているスクリーンが上から降りてきた。


 続いて会議室の明かりを切り、プロジェクターをつけると映し出されたのは……。


「あー。そういえば写真撮られてたなー……」


 いつか深雪に取られた優花の女装写真だった。茶髪のロングに紺色のワンピース姿の優花の女装姿に、会議室が揺れる。


「え? え? うそでしょ?」

「か、会長! ま、まさか!」

「ああ、そのまさかだ」


 首肯し、疑問を肯定した深雪にさらに会議室が盛り上がっていく。


「本当にこれが女装なんですか? 女子にしか見えませんけど!」

「このレベルならたしかに……」

「いや、でも素材が良かっただけじゃないの?」


 ぎゃあぎゃあと今日一番の盛り上がりを見せる会議室に、深雪がパンパンと手を叩き、それだけで場を静かにさせた。


「むろん、個人で差異は出るだろうが、メイクとコーディネイトを担当してくれる人物は超一流。メイクを受けた者は皆女子と見間違うレベルにはなるだろう。少しでも興味が沸いた男子諸君はぜひとも参加を検討してくれ」

「……おれ、やってみようかな」

「なんか面白そうだしな。一生の記念になるレベルだよこれ」


 問題はイベントの盛り上がりのために、どれだけ男子が参加してくれるのか、参加者がどれだけ募れるかだと思っていたものの、この反応の良さなら案外どうにかなるかもしれない。


 こうして、結局反対派は出ないまま、文化祭のメインイベントは男女混合のミスコンに決まったのだった。


*****


「兄貴、お疲れさんっす。今日は委員の仕事はいいんすか?」

「竜二か、お疲れ。ああ、文化祭までまだ時間があるからな。準備って言ってもまだできることはそんなにないんだよ」

「へー、そうなんすね」


 放課後、軽い打ち合わせも終わり、ちょうど帰ろうとしていた優花はたまたま会った竜二と一緒に久しぶりに一緒に帰りながら、ここ数日の忙しかった日々のことを思い出す。


 最初の文化祭実行委員会の会議から既に五日。優花がしたことは、深雪と当日のミスコンのスケジュールを詰めたり、ミスコンをどういう構成で開催するかという話し合い等の打ち合わせと、四五郎さんのツテで文化祭に協力してくれる人やお店等との話し合い。

 隙あらばレッスンも入れてくる四五郎さんのおかげで忙しすぎて毎日家に帰るのは夜の十時過ぎ。家に帰ったらほとんどそのまま寝てすぐに学校という日々だった。


 クラスのお化け屋敷の方はほとんど翡翠に任せきりになっているけれど、ミスコン含めた文化祭の準備は順調に進んでいる……一点を除いて。


「なんかあったんすか兄貴?」


 どうしたもんかと悩んでいるのが、竜二でもわかる程度には顔に出ていたらしい。


「いや、ちょっとうまくいってない案件があってな……」


 心配そうにこっちを見てくる竜二に、優花は変に遠慮せずに今直面している問題を話すことにした。


「なるほど、ミスコンの参加者が足りないんすね」

「ああ。今のところ女子は楓と鬼島先生含めて四人。それで男子は俺だけなんだ」

「兄貴だけっすか? たしか文化祭実行委員会でミスコンの話が出た時は結構好感触だったんすよね?」

「そのはずだったんだけどな。めいさんのあのレベルの高い女装術を受けてみたい男子はそれなりにいるっぽいんだけどな……やっぱりいざミスコンに参加するとなると大勢の注目を浴びることになるからな。そこまでの覚悟はない人が多いらしい」

「なるほど、納得っすね……たしかに大勢の前で女装は、おれには絶対無理っす」

「だよなあ……」


 今さら断ることもできないものの、優花だってできれば人前に女装姿で出たくはない。


 最悪竜二に頼む可能性も検討していたけど、今の絶対にやりたくないという竜二の意思を折ってまで強引に参加させるのはかわいそうか。


「それで兄貴。あと何人くらい参加者が欲しいんすか?」

「ああ、女子は最低あと二人、男子は最低四人は欲しいって話になったな」

「それは……大変っすね」


 学外では四五郎さんの顔の広さで協力者集めが簡単に済んだけれど、学内のことは四五郎さんには頼れない。友人知人が数えるほどしかいない優花では、あと六人も参加者を集めるのは難しい。


「でも兄貴。何も全員兄貴が集めないと駄目ってことでもないんすよね? 素直に誰かに頼ったらいいんじゃないっすか? 生徒会長とか?」

「いやまあ、それはそうなんだけどな。深雪先輩からはミスコンの方に集中してくれって言われてるからな。ここで深雪先輩には頼りづらいだろ?」


 理想を言えば、自然と参加者が集まってくれれば良かったが、文化祭まで残り三週間を切っているこの状況で、誰か参加してくれるだろうとこのまま放置して楽観視ができるはずもない。

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