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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百八十五

 ……椅子の音がした段階でわかってたけど、やっぱり立ち上がったのは凜香さん。


 ゆっくりと振り返ると、凜香さんが険しい目でこっちを見ていた。どうやらまだ結構怒っているらしい。……やっぱりさっさと謝っておくんだった。


「え? 案を出してないのって誰だ?」


 本気で首を傾げる翡翠をしり目に、優花はぽりぽりと頬を搔いた。


「いや、俺は別に……」


 深雪にちゃんと協力するために文化祭実行委員に立候補しただけで、特にクラスで何かやりたいものがあったわけじゃない。案を出せといきなり言われても困る。


 ……いやまあ、正直に言うなら凜香さんのメイド服姿はぜひ見てみたいのでメイド喫茶で良いけれど、堂々とメイド喫茶と言うのも己の欲望むき出しで恥ずかしい。


「ダメですわ! 早く自分の案を言いなさい。わたくしに勝ったゆうかさんならさぞ良い案が出せるのでしょうね?」


 いや、これだいぶ根に持ってるな……。


 よっぽど優花にテストで負けたのがショックだったのか、それとも他にも理由があるのかはわからないけれど、今までで一番凜香さんの当たりが強いのは気のせいじゃないだろう。


 ……まあそんな凜香さんも可愛いけれど、今はそんなこと言っている場合じゃない。


 良い案と言われてもなあと少し考えると、ふとまだ文化祭と言えば定番の一つの『あれ』が出てないことに気が付いた。


 『あれ』といえば、いつか凜香さんと翡翠と真央と一緒に行ったときに手に入れた物を使ってみるのも面白いかもしれない。……まあ、呪われたりはしないだろう。


「あら? どうしたんですの? もしかして既に出ているメイド喫茶とか言うつもりでしたの?」


 いや、地味に鋭いな……。


 凜香さんにメイド服を着てもらいたいという優花の願望まで見抜かれていたわけでもないだろうけれど、ここはきっちりと否定しておいた方が良いだろう。


「違いますよ。俺がやりたいのは――――お化け屋敷です!」

「お……化け……屋敷?」


 他の人の案にはなかったけれど、文化祭のクラスの企画と言えばやっぱりメイド喫茶かお化け屋敷だろうと思っていたのだが……。


「お化け屋敷……文化祭で?」

「そもそも私達にできるの?」

「なるほど……!」


 優花の出した案は皆的には普通じゃなかったらしい。予想外に教室がざわつき、険しい顔を見せていた凜香さんも驚いたように目を見開いていた。


 なんでだろうと首を傾げかけて、そういえばマジハイの文化祭ではお化け屋敷の描写はなかったなと今さら思い出す。

 マジハイの文化祭であったのは深雪の攻略イベントだけ、他のキャラクターは会話イベントだけであり、文化祭の企画や出し物は会話の中で軽く触れられるだけだったので、こんな細かいところまで覚えていなくても仕方ないだろう。


「ぐっ……」


 優花の出した案はどうやら凜香さん的には黙らざるを得ない案だったらしく、悔しそうな表情をした後大人しく席に座り直していた。


 これは……あとが怖いな。


 何となくまた勝ってしまったような雰囲気に優花は内心ひやひやしながら、とりあえず黒板にお化け屋敷と付け足した。 


「お化け屋敷……いいんじゃないか同士!」


 今度こそこれで皆の案は出そろったので翡翠に多数決を取ってもらおうと思っていると、翡翠が目をキラキラさせながらこっちを見てきた。


 いやまあ、聞かなくてもわかる。お化け役をやってみたいんだろう。それはいいけれど、翡翠が今こんなことを言ったら……。


「翡翠くんがそういうなら……」

「王子がやりたいなら仕方ないわね!」

「お化け屋敷……こっそり王子に接近してもばれないわね……」


 若干一名欲望が漏れていた人が居たけれど、クラスの女子のほとんどは翡翠のファン。女子達のほとんどの意見はこれで翡翠と同じお化け屋敷になってしまった。


「お化け屋敷かあ……腕が鳴るな!」

「暗い中で女子と……」

「カップルで入ってきたらビビらせてやる……!」


 残る男子の反応ももうお化け屋敷寄りらしい。多数決を取るまでもなくお化け屋敷で決まってしまった。


「まあいいか……」

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