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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百七十七

「ん? ああ、たまたま同士くんの顔を見かけてね、声をかけたんだよ」


 地図から目を離さず、顔を上げずに四五郎がそう言うと、翡翠はため息をついた。


「はあ……そういうのいいから。それで? 今度は同士に何するつもりなんだ?」

「え、俺?」


 翡翠の言い方では、四五郎さんは優花に会いにここに来たことになるけれど、さすがにそんなことは……。


「そ、そそそ、そんなことはないよ」


 ……あるらしい。


 明らかに動揺している四五郎に優花は呆れてしまう。


「なんであんなに演技は上手いのに嘘は下手なんですか……」

「あはは、演技が上手いなんて褒めてくれてありがとう」


 にこりと笑う四五郎さんに優花は後半は無視ですかとツッコむのも面倒になり、代わりに目でどういうことかと問いかけると、四五郎さんは笑みを浮かべたまま優花の方をまっすぐ見てきた。


「いや、もうテストも終わったんだよね? それなら時間があるよね? 同士くんにはぜひまた僕のレッスンを受けてもらおうと思ってね。ああ、もちろんお金なんて取らないから安心してくれて良いよ?」

「……レッスン?」


 もしかしなくても、最初に会った日に色々と仮面をつけたまま接客させられたり、翡翠の家で色々とさせられたことを言っているのだろう。


「いや、お断りします」


 四五郎のレッスンを受けている途中から翌日の放課後の屋上まで記憶がなく、その間竜二達によると色々と迷惑をかけてしまっていたらしいことを思い出して、ろくなことにならないとすぐさま断ると、四五郎さんはいつも通りあははと笑った。


「大丈夫、大丈夫。今度は前みたいにならないためのレッスンだから!」

「いや、どういうレッスンですか! いりませんよ!」

「よし、わかった! それならさっき僕がやってみせた特技も伝授してあげよう!」

「いや、そういう問題じゃなくてですね!」


 正直さっきの声音を使い分ける特技はすごいと思うし、さっきのように使えたら便利な場面はありそうだけど……。


「そうだ! それじゃあ、追加で文化祭に協力するっていうのはどうだろう?」

「……文化祭に協力?」

「うん。同士くんも文化祭で何かするんだろう? それなら僕も協力してあげられるよ?」

「ぐっ……」


 ここにきて初めて優花は揺らいでしまった。


 文化祭で優花がやること、それは深雪のために文化祭のメインイベントになる白桜学院男女混合コンテスト(仮)を成功させること。


 今は男子を女装させてコンテストに出すためにめいさんにメイクをやってもらうことしか決まっていないけれど、実際の開催のためには参加者が着る衣装を準備したり、より多くの人に見てもらうために宣伝等もしたりしないといけないはず。それを考えると、四五郎さんの協力というのは非常に助かる。


 この女性の天敵ジゴロのジゴロウさんは、女性限定だろうけれどとにかく顔が広い。一声かければ無数の人が文化祭に協力してくれるだろう。


「ぐぐぐっ……」


 絶対に厄介なことになるのは目に見えているのに、目の前に吊り下げられた報酬は決して無視できず……。


「わかりました。レッスン受けますよ! 受ければ良いんでしょ!」

「よし来た!」


 結局四五郎さんの話を受けることにしてしまった。


 深雪への協力を惜しむつもりはないけれど、まあ考えてみれば、文化祭成功のために優花にできることなんてたかが知れている。レッスンとやらに時間を取られるだろうけれど、こうして四五郎さんの協力を取り付けられたのはむしろラッキー。


 これも文化祭成功のため……ひいては凜香さんを救うため。そう自分に言い聞かせて、自分で自分を納得させる。


「それに……」


 文化祭が成功すれば、おそらく深雪の想いの欠片が手に入る。竜二と翡翠のものに続いて三個目の欠片だ。


 まあ、凜香さんを絶対に守るつもりとはいえ、凜香さんを危険な目にあわせたくはないし、残りの欠片を入手できるのかという問題はあるとはいえ、凜香さんを救うための希望――――いよいよあらゆる願いを叶える白桜の出現が見えてきたと言えるだろう。

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