乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百六十四
「お願いします兄貴! ほら、テスト勉強は兄貴も他人事じゃないでしょう?」
「まあ、それはそうだけど……うーん……」
「兄貴! 本当にお願いします!」
正直、優花が一緒に居ても邪魔になるだけだと思うのだが、こうまで必死に頼まれては断れない。
「……はあ。わかった、わかった。それじゃあ俺も一緒にテスト勉強するから……」
「ありがとうございます、兄貴! 恩に着ます!」
テスト勉強かあ……。
一緒にテスト勉強することを了承はしたものの、そもそも優花は竜二達とは学年が違う。このままでは優花は本当にただ居るだけになってしまうので、ちゃんと勉強をするなら誰か優花の勉強を見てくれる人を誘った方がよいかもしれない。
「それじゃあ明日から適当な場所取ってテスト勉強するから、竜二は黒岩さんに連絡入れてくれ。俺は俺で勉強教えてくれそうな人に来てもらうかもしれないけど、別にいいよな?」
「うっす。大丈夫っす兄貴!」
「よし、それじゃあ……もう竜二の用事は終わりでいいな? 体も痛いし俺はもう寝るぞ?」
頭を使ったおかげか、ちょうど眠気もやってきた。今日はもうこのまま眠ってしまった方が筋肉痛に悩まされなくて済むのでいいだろう。
「大丈夫っす。それじゃ兄貴、また明日っす!」
「ああ。また明日な」
竜二の恋愛相談に乗った結果、何故かテスト勉強をすることになってしまったけれど……まあどうせテスト勉強は必要だしこれはこれで良かったのかもしれない。
竜二が帰っていく音を聞きながら、優花は重くなってきた瞼に抗わず目を閉じ――――いつの間にか寝てしまった。
*****
「うむ、だいたいはできているが、ここは違うぞ灰島。ここはこの方程式を使ってだな……」
「あー……そういう」
翌日、無事に一日で筋肉痛から回復した優花が居るのは白桜学院内の図書館。
さすがというべきか、この図書館は本を読むスペースや自習をするスペースが多数あるのはもちろん、複数人で利用できる会議室然とした部屋も複数用意されており、事前に申請すれば割と気軽に利用できるらしい。
もちろん、優花がそんなことを知っているわけがなく、この場所をテスト勉強のために利用するのを提案してきたのは……深雪生徒会長だった。
「それにしても、すみません深雪先輩。勉強を見てもらっちゃって」
「いや、構わない。灰島には中間考査が終わったら文化祭のために色々と動いてもらう予定だからな」
「は、はは……お手柔らかに」
昨日、竜二が帰りしばらく眠った後、起きた優花が連絡したのは翡翠だったのだが、あいにく翡翠は予定があるらしく、代わりに推薦されたのが深雪。考えてみれば、当然竜二同様自分のテスト勉強が必要ない深雪に勉強を見てもらうのは正解だろう。
「ばっか! お前! 文脈を考えろ文脈を! だから違うっつうの!」
「うぅ……そんなこと言われても……」
当然ながらこの場には優花と深雪だけではなく、竜二と淀も居る。優花が深雪に勉強を教えてもらっているように、淀が竜二に勉強を教わっているのだが……。
「竜二……お前もの教えるのは下手だったんだなあ……」
「ちょっ、兄貴! 何言ってるんすか! おれのせいじゃないっすよ!」
「うぅ……」
一緒にテスト勉強をすることで、あまり意識することもなく、一緒に過ごす時間を増やす――――優花の狙い通りにはなっているのに、なぜだろう逆に仲が悪くなりそうな気しかしない。




