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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百六十三

 とは言えなあ……。


 喋ることすら難しいというのなら、竜二達のカップル成立までの過程を充実させるというのは不可能に近くなる。不安が残るとは言え、一応二人は両想いなのは優花には確認済みの事実だし、いっそこのまま告白させるべきだろうか?


 ……いや、待てよ?


 竜二に直接告白に行かせるという最後の手段を検討しようとした優花の脳裏にふと浮かんだのは、昨日の体育祭のみんなでとった昼食の時間。

 思い返してみれば、優花が機嫌の悪い凛香さんと楓に挟まれてなんだか居心地の悪い昼食を味わっている間、竜二と淀は二人共普通に楽しそうに過ごしていた。


 ……何か別のことをしながらなら大丈夫……ってことか?


 たぶん竜二の言う『話せない』というのは、会話自体を目的にするからかえって意識してしまい喋れなくなってしまうというのが本当のところ。

 だったら『別の目的』を用意してしまえば、二人の間に自然と会話が生まれるだろうし、そうなれば『過程』も充実、そして最後は折を見て告白をすれば、二人はめでたく結ばれてカップルになるだろう。


 不安があるとすれば、竜二がマジハイの攻略キャラであることだが、既に優花が想いの欠片を入手済みであることを考えれば……たぶん大丈夫だろう。


 あとの問題は――――『別の目的』を何にするかだ。


「……兄貴、何か良い案見つかりました?」


 思考を回している内に思いのほか時間が経っていたらしい。長い沈黙の時間に耐えられなくなった竜二がおずおずと話しかけてきた。


「ああ、まあ何となくは……」

「おお! さすが兄貴! それで? どんな案なんです?」


 相変わらずキラキラとした期待の目で顔を近づけてくる竜二を片手で押し返す。


「待て待て、何となくって言っただろ? まだはっきりと答えは出てないよ」

「そうなんすか?」

「ああ、とりあえずだな……」


 このまま一人で結論を出そうとするとまた長く黙ってしまいそうなので、先に優花の考えを竜二に細かく説明し、竜二にも何か案が無いか聞いてみると、竜二は優花の説明に納得した上で、意外な提案をしてきた。


「別の目的っすか。それなら……とりあえずテスト勉強ってのはどうっすか?」

「……テスト……勉強?」

「兄貴、何でそんな理解できないことを言われたみたいなリアクションなんすか……。ほら、そろそろ中間考査があるじゃないっすか」

「もうそんな季節か……」


 前期の期末こそ赤点を取ったけれど、それは指を骨折して利き手が使えなかった影響がやっぱり大きかった。普通に勉強できていれば平均点程度はいけるはずの優花だが……やっぱりテスト勉強はすすんでしたいものではない。


「まあおれはテスト勉強なんてしたことないっすけど……」


 ……たぶん特別テスト勉強をする必要がないぐらいに普段からの勉強を欠かしていないのだろう。


「それで一位とかお前は本当にすごいな……」


 まあ、マジハイで知ってはいた事実ではあるけれど改めて竜二の努力を実感した優花は、竜二の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でることにした。


「ちょっ! 兄貴! 筋肉痛はどうしたんすか!」

「いや、痛いけど。やっぱり褒めるときは撫でてやらないといけないからな」

「いや、犬じゃないんすから……」


 満足するまで竜二の頭を撫でた後、改めて竜二の提案してきた『テスト勉強』について考えてみる。


 テスト勉強で一緒に過ごす内に気持ちが募って告白か……まあ、まだ弱いけど、なくはないな。


 中間考査まであと二週間ないくらい。毎日テスト勉強すればそれなりに一緒に過ごす時間は長くなる。優花の狙いの過程の充実としては最低限のラインはいっているんじゃないだろうか。

 

「……そうだな。テスト勉強っていうのは二人になる口実としては実際ありだろうな」


 これはいけると判断した優花が、竜二の背を押そうとすると、竜二は慌てた様子でぶんぶんと首を横に振った。


「いやいや、兄貴! いきなり二人きりは無理っすよ! 一緒に居てください!」

「えっ? 俺も?」

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