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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百五十九

「痛たたたたた!」


 翌日、全身の疲労が筋肉痛という形に姿を変えて優花に襲い掛かってきていた。まず間違いなく限界を超えた走りを何度もしたせいだろう。


 凛香さんを思えばいくらでも力が湧いて来るけれど、それはそれとして無茶をすれば当然の報いがやってくるらしい。全身痛くない所がない。そして少し動こうとするだけでやってくるのは激痛。今日は体を起こすことすらできそうにない。


 ……まあ、今日は休みだからいいか。


「にははははは! 全身筋肉痛なんて中々ないよお兄ちゃん! 運動不足にもほどがあるでしょ!」

「いや、運動不足とかそう言うレベルじゃないけど……痛たたた!」


 激痛に身動きが封じられた優花を楽しそうに笑いながら見に来た花恋を自室から追い出し、ひたすらベッドでじっとする時間を過ごす。


 病気の時もそうだけれど、こういう時はもう一回眠ってしまえば楽になるのだけれど、残念ながら眠気は全くこない。腕を動かすのもつらいため、スマホで暇つぶしもできやしない。


「…………」


 思わず花恋を部屋から追い出してしまったけれど、こんなことなら話し相手として花恋には部屋に居てもらった方が良かったかもしれない。


 ひたすら暇な時間が続き、退屈を通り越して無になっていると、突然玄関のインターホンのチャイムが鳴った。

 今日は誰か来る予定もなければ、ネットの通販で買った物もない、セールスマンか何かだろう。


「花恋、悪いけど出てくれー」

「にははっ! わかったー!」


 花恋に任せるのは色々と不安だけれど、身動きが取れない今は花恋に対応を任せるしかない。


 優花が一抹の不安を覚える中、肝心の花恋は二言、三言インターホン越しに喋ったかと思うと、玄関の方にパタパタと走っていってしまった。


「こんにちはー!」


 玄関のドアを開けつつ花恋が元気良く挨拶していることから察するに、来たのは花恋の友達だったのだろう。それなら心配はいらないかと思い安心していると、玄関を上がった足音が優花の部屋の前で止まった。


「兄貴! こんにちはっす!」


 ばん! と勢いよく部屋のドアを開けて現れたのは竜二。花恋の友達じゃなかったらしい。


 さすがと言うべきか、竜二は優花と違い筋肉痛の様子も、昨日の疲労が残っている様子もない。


 ……さすがフィジカルモンスター。


「竜二か……悪いな、今」

「全身筋肉痛っすよね! 聞いてるっす!」

「…………」


 当然ながら今の優花の状態を知っているのは花恋だけ、つまり竜二に情報を流したのも花恋だろう。いつの間にか凛香さんだけではなく、竜二ともよく連絡を取るようになっていたらしい。


 花恋のコミュニケーション能力の高さには素直に脱帽の思いだけれど……恥ずかしいので何でもかんでも話のネタにするのはやめて欲しい。


「いや、わかってて何で来るんだ……」


 いくら竜二とは言え、病気ではなくあくまで筋肉痛なのでさすがに寝たまま対応するわけにもいかない。仕方なく痛みを堪えて体を起こそうとすると、竜二が慌てて止めてきた。


「ああ、いいっすよ! そのままで!」

「いや、そういうわけには……」


 いかないのが普通だけれど……相手は竜二。


「まあ、いいか……」


 本人がいいというのなら、寝たままでいいかと思い直し、起こしかけていた体をベッドに戻した。


「そうっすよ、無理しないでください兄貴」


 セリフだけ聞けば良い後輩なのだけれど、だったらなおさら何で今日来たという話になるだろうと思っていると……口には出していないけれど雰囲気で伝わったらしく、竜二はすぐに慌てて弁明してきた。


「いや、兄貴が身動き取れないぐらいの筋肉痛だっていうんで、色々とお手伝いしようかと思って飛んできたっす。水臭いっすよ兄貴! こういう時はおれを頼ってくださいよ!」

「あー…………」


 竜二が良いやつすぎる……。

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