乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百五十四
横で竜二が何か言っているが、隣の翡翠と自分の声がでかすぎて何も聞こえない。
今回凛香さんが勝っても真央が勝ってもマジハイの攻略的には影響はほぼない。であれば、優花がすべきなのは凛香さんを全力で応援することだけだ。
先にバトンが渡ったのは、遅めに走り出して徐々に加速していた凛香さん。それに対し、真央の方は真央の加速が早すぎて中々バトンを受け取れず、わずかに減速してようやくバトンを受け取った。
ぐんぐん勢いに乗る凛香さんが真央を追い越してスピードを上げる最中、ちょうど進行方向で応援していた優花と目が合った。
「凛香さん! いけーーーー!」
声が枯れても良いと声を張り上げる優花の応援に、凛香さんのスピードが更に一段ぐんと上がった。
「真央ー! 負けるなー!」
翡翠の声援に笑顔を見せながら真央が凛香さんを追走。コーナーに差し掛かった段階で真央もスピードを上げ二人の差は徐々に縮まっていく中、凛香さんは先頭を守り切り最終直線。
二人のデッドヒートに観客全員が盛り上がる中、最高の走りを見せた二人の勝敗は……。
「……り、凛香さんが勝った?」
二人の差は本当に僅差。勝負の明暗を分けたのはスタートとスパートのタイミングか。
真央は早めにスタートしてスパートは逆に遅めだったのに対し、凛香さんは遅めのスタートで優花の目前あたりからの早めのロングスパート。最初にできたリードを守り切った凛香さんの意地の勝利だ。
「やりますね虚空院の姉御。おれはてっきり八雲の姉御が勝つのかと……」
「ま、真央が負けた……」
他チームを圧倒する素晴らしい走りを見せた凛香さんと真央の二人に大勢の観客から拍手が送られる。
真央が拍手に応えて少し恥ずかしそうに笑顔で手を振り、凛香さんは他人の反応など全く気にしないようにただ息を整えているのを見ながら、優花は一人違和感を覚えていた。
……なんで凛香さんが勝てたんだ?
たしかに二人の実力は高いレベルで拮抗していると言えるけれど……マジハイでは成長しきった主人公に凛香が勝つことはまずない。
どっちが勝っても大丈夫だと思ったのも本当だし、本気で応援もしていたし、凛香さんが勝ってくれて嬉しいけれど、心のどこかで凛香さんが本当に勝てるのかと疑問を持っていたことは否定できない。
「うし、そんじゃ今度はおれ達の番っすね兄貴。今度こそ負けないっすよ! ……兄貴?」
「あ、いや。何でもない」
あの競技開始前の不自然な流れは完全にマジハイのイベントを起こすためのもの、それなのに結果はマジハイでは起こりえないもの。
凛香さんが真央に本当に勝ててしまった違和感が強く残るが、次は優花達男子の全学年リレー。今は深く考えてる暇がない。
女子達の競技結果が全体のポイントに加算され、赤組と白組の点数はまさかの同点。完全に次の優花達の競技の勝敗がそのまま全体の勝敗に繋がる展開。
女子組の撤収が完了し、竜二と共にアンカーの待機位置へと移動が終わるとすぐに競技が始まった。
「ふー……すー……ふー……」
深く深呼吸を繰り返し意識を集中している竜二は超本気。
これはさすがに無理かな……。
フィジカルモンスターな竜二に優花が勝つためには、バトンが優花に渡る前にかなりのリードを作ってもらう必要があるけれど、第二、第三走者の段階になっても両チームの差はほとんど無い……というかなんなら全体の順位だと5位と6位を走っており1位争いにすら加われてない感じ。
むしろ気楽に走れてありがたいかもなんてことを思った優花だったが、そこでバトンが赤組二年生チーム第四走者の翡翠に渡り状況が一変。
「きゃーーー! 王子頑張ってー!」
「翡翠様! ファイトですー!」
「王子ー! 負けないで――!」
黄色い声援が激しく飛ぶ中、翡翠が快走を見せぐいぐいと順位を上げていく。
前やっていたFEZというオンゲが今日の15時でサービス終了。最後にかつての友達に会えないかと待ってみたけれど結局会えず。サービス終了まで何も手につきませんでした。
もうプレイはしなくなっていたけれど……ちょっと寂しい。
FEZを元ネタにしたテーマで何か書こうかな……。




