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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百四十六

「やる気満々っすね兄貴! 負けないっすよ」


 優花同様、知り合いや友達が少なくたぶん不利なはずの竜二が事ここに至っても自信満々なのは何故だろう……。


「お、ちょうど組み合わせの抽選っすね」


 まずは誰と競争するかというグループ分けの抽選。参加者にどんどん紙が渡されていき、全員に行き渡ったところで一斉に紙を開く。


「『D』だな、竜二は?」

「俺も『D』っすよ兄貴! 一緒っすね!」

「うわぁ……」

「ちょっ、兄貴! だからそれひどいっす!」


 まさかの竜二と同じグループ。

 さっきは誰でも竜二に勝てる可能性があるかもとは言ったものの、実際に同じグループになってみるとちょっと勝てる気はしない。二人三脚も……相手を抱えて片足でゴールとかむちゃくちゃしそうだ。


 グループが発表されると、すぐにAグループから競技が始まり、参加者が駆けだしていく。


「そういや、借り人競争やるの初めてかもな……」

「そうなんすか兄貴?」


 この世界に来る前の学校では借り人競争の競技自体無かったので、優花はこれが初めての借り人競争。どんなお題が出てくるかとかも実はあまりわかってはいない。


「で? どんなお題が出てくるんだ?」

「あー……そうっすね。例えばっすけど、身長が170センチとか、靴のサイズが27とか」

「なるほどな。それは難しいな」


 普段仲の良い相手でもさすがに身長や靴のサイズまで完璧に把握はしていないだろう。それに友達や知り合いに指定のサイズの人がいなければ、別の人を探す必要が出てくるあたり中々に面倒そうなお題だ。


「あとは部活を指定したりとか、眼鏡のやつとか……後は好きな先生とかっていうのもあった気がしますね」

「へー……」


 好きな先生と聞いてぱっと浮かんだのは優花達の担任でもある三日月昴先生。ちらりと職員が待機している場所を見てみても、昴はそこにはいない。仮に好きな先生というお題が来ても別の人を指定した方が良さそうだ。


「後は……あー……」

「ん? どうした?」

「いや、まあ……」


 何か思いついたけれど、言いにくいみたいな微妙な感じで言い淀む竜二に優花が首を傾げると、ちょうどAグループの競技が終了。見ていなかったけれど、ポイント的には赤が若干勝ったらしい。


 すぐにBグループの競争がスタートし、優花が再び竜二に視線を戻すと、竜二はようやく思いついたことを口に出した。


「いや、だから好きな人とか……っすね」

「あー……」


 竜二が何で言いにくそうにしていたのかがこれでわかった。


 なるほど、こんな公の場で好きな人を指定されるなんて、公開告白と変わらない。たしかに見ている方はそういうお題があった方が盛り上がるかもしれないけれど、競技参加者としては勘弁してくれって感じだ。


 まあでも人として好きとか、友達として好きとかって逃げ道はあるか……。


 自分に『好きな人』というお題が来たらどうやり過ごすか考えていると、ちょうどゴールした組のお題が『好きな人』だった。


 審判が本当に好きか確認するためという建前で告白を促し、そのまま公開告白、結果は……。


『ご、ごめんなさい。今まで通りお友達で……』


 残念ながら告白は断られてしまい、膝からガクッと崩れ落ちる男子を見て、これは本当に好きだったと判断した審判が合格の印を出した。


「いや、きついな……」


 告白後の反応で合格不合格を判断するのがまたえぐい。今回告白した男子はふられてしまったけれど、皆の前で告白する勇気を称賛したい。


 盛り上がった告白も終わり、Bグループの残りの人達も次々ゴールしては審判が合格かどうかを判断し走り直しが二組、結局時間切れになり今度はCグループの番になった。


「はい。Dグループの人達集まってください!」


 Cグループが走り出したところで、次の出番のDグループの集合がかかる。


「む、灰島と獅道か」

「よろしくお願いします、深雪先輩」

「負けないっすよ生徒会長!」


 ここでようやく今の今まで目をつぶっていた深雪が目を開けて優花と竜二と合流。Dグループの残りの三人は顔も名前も知らない人達だ。


 そろそろ始まりそうな雰囲気に少し緊張感が出てくる中、優花は深雪の顔色が少し悪いことに気が付いた。


「あの、深雪先輩大丈夫ですか? 顔色が少し悪そうですけど……」

「……最近は準備が忙しかったからな。少し疲れが出てるだけだろう。問題ない」


 心配かけまいとずれていた眼鏡をくいっと戻しながら笑みを浮かべる深雪に、優花はそれ以上追及することはできなくなってしまった。


「そうですか……あの、無理はしないでくださいね」

「ああ。大丈夫だ。ありがとう」


 本当に大丈夫かな……。


 今思えば優花を助けに来た時汗をかいていたのも、部活動対抗リレーの調子が悪かったのも、体調が悪かったからかもしれない。


『さあ、今Cグループ最後のチームがゴール! 審判の判定は……合格!』


 優花が深雪を心配している内にCグループも終了。いよいよ優花達の番になってしまった。


『さあ! 続いて生徒会長も参加するDグループです! それでは、スタート!』

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