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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百四十

「……ところで灰島先輩。ちょっと虚空院先輩とくっつきすぎじゃないですか?」


 ……たしかに、言われてみれば凛香さんの位置がかなり近い。


 ちょっとでも身じろぎしたら当たってしまいそうな距離に居る凛香さんを意識してしまって優花は、再び体が発火したように熱くなってきた。


 凛香さんには悪いけれど、少し離れた所に移動しないと心臓が破裂しそうなので少し位置を移動しようとしかけた優花だったが……。


「あら? わたくしがゆうかさんの隣に居て何か問題がありますの?」


 何だか久しぶりに見る気がする凛香さんのつんつんモードに優花はピタッと体の動きを止めた。


 あ、機嫌悪い……。


 たぶんめいさんが無言のままでいたのもこの凛香さんの不機嫌モードを察したからだろう。


 この状態の凛香さんは対処を間違えると更に機嫌が悪くなり最悪拗ねる。


 不用意に口を挟めず、身動きも取れなくなった優花に対し、楓は凛香さんを挑戦的な目で見た。


「……別に問題はないですけど。それじゃあ楓が灰島先輩の隣に居るのも問題ないですよね?」


 そう言って楓がぴたりと優花にほとんどくっつく感じで身を寄せてきて、今度は凛香さんが柳眉を逆立てた。


 楓。何でお前はそうやって火に油を注ぐような真似を……。


 好きでも何でもないだろうに、わざわざ凛香さんを怒らせるためだけにすり寄ってくるのはやめてほしい。


「いや、近いから離れてくれ……」


 凛香さんの方にこれ以上寄るわけにもいかず、優花が楓を押して元の位置に戻すと、凛香さんがふふんと笑った。


「あら、ゆうかさんに拒否されてますわね! ま、当然ですけれど!」

「違いますー! 灰島先輩は女の子に耐性が無いから照れ隠ししてるだけで本当は嬉しいんですー!」


 ……ばちばちと俺を間に挟んで視線で火花を散らすのは本当にやめて欲しい。


 凛香さんと楓は今までそれほど表だって対立することは少なかったけれど、実は相性最悪だったと今知った。なるべくこの二人は一緒にしないようにしようと心に留めておく。


 助けを求めるように優花が凛香さんの隣に座るめいさんに視線を向けると、さすがはめいさん。こほんと咳払いを一つして凛香さんを窘めてくれた。


「…………ふん」


 不満そうにしながらも、とりあえず楓とのばちばちの視線の応酬は解除してくれた凛香さんは、また無言になってめいさんが作ったと思われるお弁当を口に運んでいる。


「ふう……」


 とりあえずこれ以上凛香さんの機嫌が悪くならなくて良かったと胸を撫で下ろした優花だったが、すぐに状況は改善されてはいないことに気が付いた。

 他のメンバーが楽しそうに話しながら食事を取っているのに対して、無言のままお弁当を食べ進める凛香さんと同じく無言になった楓に挟まれたまま自分のお弁当を食べることになってしまったわけだ。


 凛香さんが近くに居ること自体は今もどきどきしているのだけれど、それが気にならなくなるぐらいには凛香さんの不機嫌オーラが凄まじく非常に気まずい。


 結局、そのまま時間は進み気がつけばお昼の時間は終わっていた。もうお弁当の味はわからなかったものの、とりあえず無事に昼食を終えられたことにほっとする。



 昼食も終わり、メンバーもそれぞれ解散。結局かなり貴重な昼食イベントをこなせたわけだけれど、得られたのは、凛香さんと楓の相性が悪いという情報だけだった。

 非常に疲れた気分のまま自分のクラスの席に戻ると、早速翡翠が寄ってきた。


「最高の時間だったな同士」

「……お前はそうだろうな」


 優花が凛香さんと楓に挟まれて居心地の悪い空間を味わっている間、翡翠は意中の相手である真央と楽しく食事がしていたのだから、それは最高の時間と言いたくもなるだろう。


 悪気なく言っているのはわかるけれど、軽くいらっときてしまうのは許してほしい。きっとこの先どれだけ翡翠と仲良くなったとしても、この感覚は味わうことになるのだろう。

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