乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百三十四
「ふふふ。今年の体育祭は趣向を凝らしていて面白いですね。まさか白桜学院でこんな体育祭が見られるとは思いませんでしたよ」
くすりと笑っためいさんだけじゃなく、周囲に居る他の保護者達もとても楽しそうだと感じるのは気のせいではないはず。なんだかんだで体育祭実行委員会の狙い通りということでしょうか?
「ああ。そう言えばめいさんは白桜学院の卒業生でしたね。やっぱりいつもはこんなことはしないんですか?」
「ええ、もちろん。どこの学校でもやっていそうな至って普通の内容でしたよ?」
「そうなんですか。それじゃあどうして今年だけ……」
いくら体育祭実行委員会の要望があっても、教師陣としては準備もお金もかかることを考えて普通に例年通りの体育祭にしようと考えたはず。それならば、どうして今年だけそんな許可が取れたのかという新たに生まれた疑問は、めいさんが答えてくれた。
「もしかしたら、生徒会長さんのお力かもしれませんね?」
「生徒会長――――深雪先輩のお力……ですか?」
「ええ。予算のことはもちろんですけれど、先生方の説得も生徒会長さんがされたんだと思いますよ。白桜学院の生徒会長は権限も大きいですし、先生方からの信頼も大きいですしね」
「そうなんですね……」
割とお堅いタイプの深雪が、体育祭を面白くするために頑張るなんてイベントはマジハイには無かった。竜二や翡翠に比べればまだ優花との接触が少ない深雪も、優花の行動の影響を受けているということかもしれない。
「あっ、始まりそうですね。お嬢様は……アンカーみたいですね」
深雪の変化に思考が没頭しそうになっていた優花はめいの声に慌てて顔を上げた。
遠目から見たところ既にくじを引いて順番は決まっており、真央の順番は二番手、凛香さんが四番手でアンカー。優花達のレースの時のコスプレを考えると、後の順番の人ほど恥ずかしいコスプレになっていそうなので、最悪凛香さんがリタイアする可能性すらある。
とりあえず凛香さんがコスプレをしている所を見たかった優花からすると、一番手、二番手くらいで良かったのにと思っている内にレースはスタート。
「あれは……走りづらそうですね」
一番手の女子達が更衣室ボックスから出てくるとその格好は所謂ゴスロリ服。スカートは膝丈ぐらいだけれど、たしかボンネットという名称の大きい帽子が走るたびにずり落ちそうになっている。
各チーム一番手ではあまり差はつかず、レースは互角のまま二番手……優花達のクラスのチームだと真央にバトンが移った。
渡されたバトンを手に疾走する真央は一番最初に更衣室ボックスに入り、十数秒で出てきた真央の格好は、水色の大きいリボンに同色のフレアワンピース、その上に白いエプロン。たぶん不思議の国のアリスをモチーフにしたコスプレでしょう。
「うおおおおおおお! 真央! 最高だああああ!」
着替えて出てきた真央を見た瞬間に発狂した人物(翡翠)が居てうるさい。
「嘘、本当に八雲さん?」
「うわ、めっちゃ似合ってるな……」
「……まあまあね」
「え、普通に可愛いな」
翡翠から好意を向けられているせいで翡翠ファンの女子達からは露骨に嫌われているし、男子達からもあまり目立たない印象を向けられがちなのだけれど、優花達のクラスの方では男女問わず真央の変身に動揺が広がっていた。
明るく元気で優しい真央だけれど、正直に言うと実は優花と翡翠、そして凛香さんを除くクラスメイト達からの評判はそれほど高くはなかった。ただ、それを今綺麗に覆したような感じ。この世界の主人公の面目躍如といったところでしょうか。
同じクラス以外の人達からもざわざわと広がる動揺の波を気にせず、素晴らしい快足を見せた真央は他のチームを圧倒的に引き離してバトンは三番手に。
「三番手は……メイドさんですね」
「少々スカートがミニ過ぎますね。あれでは仕事中に見えてしまいます」
さすがは虚空院家の現役のメイドのめいさん。メイド服には一家言あるらしい。
めいさんの指摘通り少々ミニスカートなメイド服姿の女子達が走り、レースは盛り上がりを見せたままバトンは四番手。いよいよ凛香さんの番だ。
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