乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百三十
「お、同士。戻ったか。随分長くトイレに行ってたな。お腹の調子でも悪いのか?」
そう言えばトイレに行くって言ってから、離れたんだった……。凛香さんにも同じこと思われてないかちょっと心配だ。
「いや、別に。それよりも皆は? 次の競技か?」
「おお。今居ない連中は次の競技の大縄跳びだ」
「大縄跳びね……」
一人のミスで全員失敗扱いになる大縄跳びは、優花としては参加したくない競技の筆頭。参加者に選ばれてなくて良かった思いつつ、改めて周囲に居るクラスメイトを確認すると真央と凛香さんは居なかった。
そういえば、二人共参加者だったか。真央はともかく、凛香さんの近くには居られない状態のままなので大縄跳びに参加していてくれて助かった。
『それでは、次の競技は大縄跳びです』
アナウンスと共に選手達が入場していくが、全員の頭にうさ耳ヘアバンドがついている。今回の特殊ルールはうさ耳をつけて大縄跳びをするというものらしい。
「……可愛い」
主に女子達がうさ耳をつけてきゃーきゃー騒ぐ中、優花の視線は必死にうさ耳をどうにかしようとする凛香さんに釘付け。抑えたそばから手から逃れてピンと立つうさ耳に四苦八苦している凛香さんがまた可愛らしい。
「ああ、可愛いな……」
隣では翡翠が真央を見て同じ感想を抱いていたが、こいつは真央しか目に入らないんだろうか。全く困った奴だ。
凛香さんのうさ耳装備というレアな格好を目に焼き付けておこうとずっと見ているうちに、あっという間に優花達のクラスの大縄跳びは終了。それぞれのクラスの回数に応じて入った点数は、若干白が多く、白優勢のまま次の競技へ。
「次はリレーか」
短距離走同様、誰もやりたがらなかったせいでこの競技も優花は翡翠と共に参加することになっている。まあ短距離走とは違い、翡翠とはチームメイトなのでその点は気が楽だ。
「なんだあれ?」
参加者の移動も終わり、いよいよリレーが始まるのかと思ったら新たにコースに運び込まれてきたのは複数の扉が付いた巨大な箱。
『えー、それでは今回のリレーの新ルールですが、順番はランダムに、そして走者はバトンが渡った後まずこの更衣室に入っていただき、中にある服に着替えてそのまま走っていただきます』
「なるほど。仮装リレー……いや、コスプレリレーか」
コース上に設置された巨大な箱は簡易の更衣室だったらしい。本当にどこに予算をかけているんだろうか。
「着替えるスピードも重要になりそうだな同士」
「なんか楽しそうだな……」
「同士は楽しくないのか? 俺様は普通にやるより面白いと思うぞ?」
「いや、自分じゃなければ別にいいんだけどな……」
そう。例えば凛香さんが走る時だったら、凛香さんがどんな格好で出てくるのか楽しみに……。
「あ!」
そこまで考えた瞬間、優花に衝撃が走った。
「凛香さんもリレー参加だ!」
「そう言えばそうだったな。でも同士、重要なのは真央も走るってことだ」
これは速攻でリレーを終わらせて見に行く必要がある。
『どんな格好するんだろう……』
二人で同じ言葉をハモる姿に近くに居た同じチームのクラスメイトが若干引いていた気がするが、そんなことはどうでもいい。
「全力で行くぞ同士!」
「ああ。当たり前だ! さっさと終わらせよう!」
気炎万丈。突然やる気に満ちた優花達にクラスメイトどころか、別のチームまで引いた気がするが、それすらも今は気にならない。




