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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百二十九

 第一グループは、ほとんど差が無く次の走者グループへと棒が渡ったが、第二グループで差が若干着き赤の二組が優勢。続いて棒が渡った第三グループの白組には楓と淀。ちなみに楓が左側で淀が右側。


「あ……」


 棒が渡り楓と淀のグループが走り始めたが、すぐにバランスの悪さが浮き彫りになった。楓は足が速く、淀は遅いせいで楓の持っている左が先行、淀の右側が大きく遅れており、間の二人も走りづらそうだった。


 まあ、足の速さを考慮しないでグループを作ったら、それはこうなるのは当然と言えば当然。


 何で楓と淀が同じグループになったのかというと、今回の台風の目の特殊ルールが『グループと並ぶ順番をランダムに決める』ことだったせいだろう。淀も頑張って走っているけれど、さすがにどうしようもない。


 楓が引っ張る形でぐいぐいと進めんでいきコーンにたどり着いて回転するゾーンになると、今度は楓の脚が止まった。台風の目はコーンを一周する必要があるため、回転の軸が必要になる。今回楓の居る左側がコーン側になると決められているため、楓は軸になるために脚を止めたわけだ。


「なるほど……」


 台風の目は、回転の軸になる方は体が大きく力がある人を置き、外側を走る方は脚が速い人にするのがセオリー。今回楓達の組は脚は早いものの体は小さめの楓が軸側、脚が遅い淀が外側のため、組み合わせで言えば最悪。

 楓は遠心力に耐えられず軸がぶれぶれで大きくコーンから離れてしまっているし、淀は頑張ってはいるものの回転に脚がついていかない様子。これが逆だったらもう少しましだったろうけど、ランダムに決められてしまう以上は仕方がない。


 グループと並ぶ順番をランダムに決めたことで台風の目のセオリーは崩されていて、楓達のグループのようにひどい組は本当にひどい。そのせいで順位は絶えず入れ替わる可能性があり、競争がより面白くなっている。


 かぶりもので走らせたり、水着で走らせたりとその案を出しただろう体育祭実行委員会に不信感さえ芽生えそうだった優花だが、この特殊ルールだけは納得してしまった。


 楓と淀の組で大きくついた差は、女子のグループが終わっても挽回できず、楓達の組が最下位のまま競争は男子グループに移る。

 組み合わせが良かったのか、男子組では徐々に盛り返し、竜二が参加している最終グループでは他三グループが接戦で、楓達の組だけが遅れている感じだったが、


「おらああああああああ!」


 棒が渡った瞬間から、気合いの入った雄たけびと共に竜二が爆走。同じ組の三人を引きずるレベルで疾走すると、回転するゾーンもバットか何かのように別の三人が必死にしがみつく棒を振り回すようにして即クリア。


「化物かあいつは……」


 走っては振り回し、走っては振り回しで既にあとはラストの直線。

 竜二の身体能力の高さに優花はむしろ呆れてしまったが、最下位から一気に首位争いする竜二組に観客はむしろ大盛り上がり。


「よっしゃああああ!」


 そのまま1位を走っていた赤組を抜き去り、竜二達の組が1位になった。体育祭始まるまでの竜二のローテンションは本当になんだったんだろうか?


 竜二が見せた大逆転劇に大きな拍手が起こる中、優花も釣られて拍手すると丁度よくこっちを向いた竜二と目が合った。


「兄貴―! やりましたー!」


 今絶賛注目を浴びている竜二が満面の笑みで優花目がけて手を振りながらダッシュで近づいて来るせいで、皆の視線がこっちにまで注がれるのを感じた。極力人から注目を浴びたくない優花からしたら最悪だが、逃げたくなる気持ちをぐっと抑えて竜二に声をかける。


「見てたよ。すごかったな」

「ありがとうございます、兄貴! 兄貴も良い走りでしたね! まさか兄貴があんなに速く走れるとは思いませんでしたよ」

「うん、まあそれは自分でも思ったけどな」


 でも、できればそれは心の内に留めておいてほしかった。竜二の素直すぎる感想に思わず苦笑いが出た。


 台風の目が終了し、全体の点数を確認すると今は白組が若干リード。これは間違いなく竜二の奮闘の結果だろう。


 それから二言三言、竜二と話をしてから、竜二と別れて自分のクラスの場所に戻ると半分ぐらいの人が居なかった。

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