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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百二十六

 ちゃんとゴール後のことも考えられていたらしい。かぶりもので走らせるとか、水着で走らせるとか今の所変なことばかりの体育祭だけれど、ちゃんと安全面の考慮はされていたらしい。


「良い走りだったな、灰島」

「あっ、深雪、先輩。……はあ……はあ……ありがとう、ございました」


 ひょこっと優花を受け止めたマットの横から顔を見せたのは深雪。どうやら深雪達は二人一組でマットを持っていて、走ってくる水着の男子達を受け止める役らしい。優花の背後でも優花同様止まれなくなっていそうな男子達をマットで捕まえている。


 水着で走るの嫌だなとか翡翠の隣だとかごちゃごちゃ考えていたせいでゴール付近をちゃんと見ていなかったけど、ゴールした後に転んで怪我する心配をする必要はなかったらしい。


「深雪先……」


 せっかく深雪と会えたので、開会式中に疑問に思ったなんで生徒代表じゃないのか聞こうと思ったものの、すぐ次の組がスタートしたため、止めておく。


「はーい。走り終わった人は更衣室で大丈夫ですよー。お疲れさまでしたー」


 順位の記録はゴール段階で既にしてくれているらしく、走り終わった男子達はそのまま更衣室に戻る流れの中、未だに息を弾ませながら翡翠が優花の隣に来た。


「はあ……はあ……負けたぜ同士! さす……さすが……同士だ!」


 悔しさをにじませながらも相手をちゃんと称賛できる翡翠に少し驚く。


 走っている最中は勝敗を意識しないで走っていたとはいえ、優花が負けていたら翡翠のことをちゃんと褒められただろうか?


「まあ、もう二度と……はあ……勝てる気……しないけどな」

「そんなことは……ないだろ、はあ……ふう。よし、もう大丈夫だ!」


 既に息を整えた翡翠に対して、限界を超えて走ったせいで優花の息は結局更衣室に戻るまで整わなかった。やっぱり身体能力の差は歴然、今回の勝因を上げるとすれば、凛香さんが見てくれてたことと、竜二の応援……あとは翡翠の自滅のおかげか。


 体操着に着替えてグラウンドに戻るとちょうど最終組がゴールしたところ、そこでふと気になったのは現在の全体の点数だった。


「点差は……」


 全体の点数は電子化されており逐一更新されているらしく、掲示されている点数を見てみると現在の赤組と白組に点差はほとんど無い。


 凛香さんと真央、優花と翡翠が赤組として1位と2位を取ったけれど、やっぱり全体への影響は小さかったと見るべきか、それとも優花達の点数があったからこそ拮抗していると考えるべきか。


「まだ体育祭は始まったばっかりだぜ? これから、これから。頑張ろうぜ同士!」


 優花同様点数を見た翡翠が優花の背を叩く。


「お、おお」


 ……いまさらだけど、翡翠はここまで明るいキャラだったろうか? 


 それに、以前よりも優花に対して、なんというか……そう、よりフランクにより普通の友達っぽくなった気がする。……まあ、女子達の前……というか真央の前では無駄に格好つけたがるのは変わっていないけれど。


 自然と受け入れていたけど、この変化が翡翠の心境の変化の結果だとすれば、その変化のタイミングはやっぱり誕生日パーティーの時か。


 翡翠の想いの欠片は以前既に入手していたけれど、想いの欠片を入手できなかった今回の方がより変化が顕著に感じるのは気のせいじゃないだろう。


 ……つまり、想いの欠片はあくまでゲーム内イベントをこなした結果手に入るものに過ぎず、それを入手したからといって心の距離が近づき、親しくなったことにはならないということ。


「いや、違うか……」


 つぶやきながら頭を横に振り自分のクラスの場所に戻る。


 重要なのは想いの欠片が親しさの証明ではないこと……ではない、より重要なのは想いの欠片の入手自体は親しさなんて関係なく、マジハイのキャラ攻略イベントをこなしさえすれば良いという逆の発想。


 凛香さんに及ぶ危険を全く考慮しなければ、白い桜の伝説を利用すること自体はそれほど時間をかけずに達成できる可能性が高い。

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