乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百二十
「ああ、運動部からかなり熱烈にスカウトされてたらしいけど、全部蹴ったって聞いたぜ」
「へー……」
競技をちゃんと考えれば、あの恵まれた体格を活かして世界でも狙えそうなのにもったいないと思ってしまうのは他人の勝手な考えか。
……ってそんなことはどうでも良い。
「生徒代表は深雪先輩じゃないんだな」
「たしかに会長はやりたがりそうだな」
文化祭を絶対成功させようなんて前期から思っていた深雪のことだ、体育祭も同じぐらい気合いを入れているのかと思ったけれどそうでもなかったのか、それとも何度も話し合った末にボスゴリラが選手代表になったのか。
「んー……」
マジハイでの深雪の攻略情報を思い出してみても体育祭で特別何かした記憶はない。自分の選択次第で選んだキャラのCGが一枚とその活躍シーンが少し描かれ好感度がわずかに上昇するという他のキャラと共通のものがあるだけだった。
ただ、これが文化祭となると話は変わる。文化祭の成功失敗は深雪ルートを進む際には重要で、文化祭が失敗すると深雪ルートがその後選べなくなるぐらいなので、この世界の深雪にとってもやっぱり体育祭よりも文化祭の方が重要ということなのだろう。
「ああ、そう言えば……」
攻略とは直接関係ないけれど、マジハイの体育祭は主人公と凛香が競技で対決するミニゲームがあったのを思い出した。
ステータスが低い攻略一週目は大体凛香に勝てず、攻略二週目ではちょうど良い勝負になり、ステータスがカンスト近くなる攻略三週目以降は主人公が負けることはほぼなくなる感じで、その勝敗次第で体育祭終わりの凛香のセリフが少し変わる。
マジハイでの凛香のハッピーエンドとでもいうべきエンドを見つけるために再びゲームをプレイした時には全キャラのルートで凛香に勝ったパターンと負けたパターンでそれぞれのルートを確認したけれど、結局結論としては攻略には一切関係がなくて徒労感がすごかった記憶がある。
でもまあ、今の凛香さんなら大丈夫かな。
前期はよく真央に突っかかってテストとかでも勝負していた凛香さんだけれど、夏休みに実行した真央と凛香さんを仲良くさせよう大作戦のおかげか最近では凛香さんが真央と張り合おうとすることもなくなったように思う。たぶん今日も真央に勝負を挑むようなことはしないだろう。
そんなことを考えている内にボスゴリラの選手宣誓……どころか気が付けば開会式自体が終わっていた。
「行こうぜ同士、俺様達は赤組だからあっちだな」
後ろに居た翡翠が肩を組んで優花の横を歩くのを見て、女子達がまたきゃーきゃー言っているがもはや気にするのも面倒なのでスルー。
ちなみに同じクラスなので当然ながら優花と翡翠、真央と凛香は全員赤組。
赤のハチマキをしめながら、優花達のクラスの指定されている場所に移動する途中、一年生の所から竜二がわざわざ走ってやってきた。
「兄貴! 今日は敵同士っすけど正々堂々勝負しましょうね!」
竜二の頭には白のハチマキ。登校中はなんだかやる気なさそうにしてた癖に今はやる気がみなぎっているように見えるのは気のせいじゃないだろう。なんだかんだで運動ができる竜二のことだ。体育祭が始まったら始まったでテンションが上がってきたんじゃないだろうか。
優花達四人が赤組だから……というわけでもないだろうけれど、竜二の他にも深雪と淀、あとは楓は白組らしい。
正々堂々勝負って言われてもなあ……。
竜二と直接対決するような競技はないし、赤組白組の対決に関しては、参加人数が多すぎて優花達個人がどれだけ頑張っても全体から見れば大して影響は無い……と思ってしまうのはひねくれすぎか。
「まあ怪我しない程度にお互い頑張ろう」




