乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その二百十八
白桜学院のグラウンドは当然ながら広く、高等部の全員が並んだところでまだまだスペースがある。元の世界で通っていた学校のグラウンドの何倍なのかは最早考えるのも無駄なぐらいなレベルだ。
「同士? どうかしたのか?」
「いや、グラウンドが広いなと改めて見て思っただけだ……と言うか翡翠、お前こそどうしたんだ? もっと後ろだろ?」
開会の宣言から始まり、壇上には学院長。鬼島先生の話だと病気で入院していたらしいが、もうすっかり体調が良くなったのかいつもの長話が続いている中、背が低い順に前から並んでいるにも関わらずすぐ後ろに来た翡翠の方を振り返る。
ちなみに優花は前より少し背が伸びたおかげでクラスの男子のちょうど中間ぐらいで、翡翠は背がすらりと高い方なので一番後ろだったりする。
「開会式は暇だからな、変わってもらったぜ」
にこりと微笑む翡翠の微笑みに、翡翠の移動のおかげで翡翠の近くになったクラスの女子達が頬を赤くしていた。
……これだからイケメンは。
微笑みを浮かべるだけで女子達がキャーキャー言うのだからイケメンはずるい。優花が同じことをしたって誰も反応したりしないだろう。
キャラではなく一人の人間として翡翠に接すると決めたものの、やっぱり翡翠のイケメンっぷりにいらっとするのは変わらないらしい。
まあ、別にいいけど。
今、優花の脳内は全て凛香さんのことで埋め尽くされている。翡翠が笑みを浮かべた所で凛香さんが反応するとも思えないのであまり気にする必要はないわけだ。
翡翠を振り返ったついでに、女子の中では背が高い方のため後ろに居る凛香さんを探すとちょうど凛香さんも優花の方を見ていたようで目が合った。たったそれだけで心臓が早鐘を打ち始める中、凛香さんはすぐに目をそむけ、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
……怒ってるって感じでもないな。なんだろ?
「同士? おーい」
凛香さんの気持ちを考えるよりも先に翡翠に呼ばれて思考は中断、仕方なく凛香さんから視線を外し翡翠の方を見るとなんだか不満そうな表情だった。
「俺様がわざわざ話しに来たってのに、虚空院の方を見てたな? まったく嘆かわしいぜ……」
「嘆かわしいって……」
王子ムーブをBL本で学んだという謎の行動をしている翡翠のことだ、通常の会話ではまず出てこない言葉を使っているのはたぶん読んだ本か何かに影響されたんだろう。意外と影響されやすいやつなのだこいつは。
「ふっ、まあいい。それより同士、あれを見てみろ」
「ん? あれってどれだよ」




