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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二十一

 ロリータにゴスロリ、フェミニン、ガーリー、カジュアルにモード。

 凛香の家に戻ると、文字通り人形遊びのように、次々色んな女ものの服を着させられ、優花の眼は死んだ魚のようになっていた。


「もうお嫁にいけない……」


 虚ろな目でつぶやくと、それを聞いた花恋がやれやれと肩を竦めた。


「いや、お兄ちゃん男でしょ……それとも目覚めちゃったの?」


 ぶちっという音が脳内に響き、優花は久しぶりにキレた。


「誰が目覚めるか! というか! 前メイド服着せられたとき『目覚めそうだから女装は禁止にします』って言ってませんでしたか!」


 きっと涙目で凛香を睨むと、凛香は視線を横にそらした。


「……こ、こういう時なら良いかなーと思っただけですわ」


 凛香の横の花恋に視線を移すと、花恋も視線をそらし「私はアドバイスしただけだし……」なんて言い訳をつぶやいていた。そして、一番問題なのは……。


「めいさん! あなたまで参加してどうするんですか!」

「……すみません……つい」


 最初は凛香と花恋だけで、優花を着せ替えていたのだが、途中からめいまで参戦し、メイクやアクセサリーなどまで含めた全身コーデに発展してしまったのだ。その結果、優花は女装男子とは思えないレベルになっていた。


 あらためて鏡で自分の姿を確認すると、どこからどう見ても茶髪ロングのゆるふわ系女子だった。

 ウェーブがかかった長い茶髪に、白いブラウスにピンクのフレアスカート。高級そうなバッグを持たされ、爪にも軽くマニキュアが施されている。


 街を歩けば普通にナンパされそうで怖いくらいだった。


「まったくもう……それじゃあ、これでもう終わりでいいですね?」


 さすがにもう満足しただろうと三人に問い掛けると、三人は目を合わせて頷き、同時に答えた。


「「「……いや、あと少しだけ」」」

「終わりにする気ないんかい!」



 結局、その後も散々着せ替え人形にされ気が付けば夜。

 中間考査が終わったので、執事も終わりにして家に帰るつもりだったのに、また凛香の家に泊まることになってしまった。


「失礼します。今日はお疲れ様でした、ゆうかさん」

「めいさん? どうしたんですか?」


 凛香達の優花を着せ替え人形にした遊びも終わり、晩御飯を食べて、お風呂にも入り、あとは寝るだけという頃になって、めいが優花の部屋を訪ねてきた。

 優花は既に執事服を脱いで私服だが、めいはまだメイド服を着ている。


「いえ、お礼をと思いまして」

「そんなに俺を着せ替えて楽しかったんですか?」


 思わずじとっとした目で言うと、めいはくすりと笑った。


「ふふ、そっちじゃありませんけど……まあ、そっちもですかね?」


 楽しそうに笑うめいに、優花は首を傾げるしかない。


「そっちじゃないってどういうことですか? 他にお礼を言われるようなことなんてしてませんけど……」

「お嬢様のことに決まっているじゃないですか」


 お嬢様と言ったら、凛香しかいないが、何かめいにお礼を言われるようなことをしただろうか?


「最近のお嬢様は毎日大変楽しそうに過ごされていますので、そのお礼を言いたかったのです」

「ええと、それを俺に言っても仕方がない気がしますけど?」

「……ふふ、それはどうでしょうね? それでは、私はこれで、おやすみなさい」


 ぺこりと相変わらず綺麗なお辞儀を見せ、めいは優花に貸し与えられている部屋を出ていってしまった。


「何だったんだ?」


 なんで凛香が楽しそうに過ごしていると、優花がお礼を言われるのか。ふかふかのベッドに転がりながらぼんやりと考えていると、いつの間にか眠ってしまった。



 中間考査も無事? 終わり、時期としては五月ももう終わりで、もうすぐ梅雨が来そうな頃。


 マジハイのイベント的には、主人公の真央が急に雨に降られ、攻略キャラ達の傘にいれてもらい、相合傘をするという梅雨イベントが六月中旬くらいにある程度で他には何もない平和な時期。


「そろそろ動くべきか……」


 優花は一人決意を口に出した。

 七月になれば今度は期末考査がある。また凛香に振り回される可能性もあるので、動くなら今しかないと思い立った優花は、まず竜二に合うことにした。


「偽の白い桜の話を一年生に広めている犯人を捜す……っすか?」

「ああ、竜二は心当たりはないのか?」


 中間考査のために忙しくて、まったく調査もできていなかったので、そろそろこの問題にも対処することにしたのだ。


 白い桜の願いを凛香を救うこと……もしくは、元の世界に帰ることに使いたい優花にとって決して放置し続けることはできない問題だからだ。


「ええと……兄貴。どうして兄貴がそんなことを?」

「そうだなあ……まあ回り回って凛香さんのためと言うか……」

「兄貴は本当に漢っすねえ……」


 しみじみと竜二に感心され、優花はぽりぽりと頬を掻いた。

 普通に褒められるとなんだか気恥ずかしい。


「そうっすねえ……心当たりは……まあ、あるかもしれないっすねえ」

「なんか嫌そうだな?」

「いやあ……まあ、あんまり気は進まないんすけどね」


 気乗りしない様子の竜二に頼み込み、竜二の心当たり人物を紹介してもらうことになった。


 放課後、優花が竜二のクラスを訪ねると、仏頂面の竜二と、竜二にびびって妙に距離を取っている竜二のクラスメイト達がいた。普段ならすぐ帰る竜二が、教室に残っているのが余計に怖いんだろう。すぐに竜二に声を掛けた方が良さそうだ。


「おーい! 竜二!」

「あ! 兄貴! すんません、わざわざ教室まで来てもらって!」


 優花が声を掛けると、竜二はすぐに席から立ち上がり、さっきの仏頂面はどこへやら笑いながら駆け寄ってきた。


「お前はずっと笑っていれば人気者なのにな……」

「え? 急になんすか?」

「いや、何でもない」


 まあ不良っぽくて怖い方が好きな女子もいるのだろう。現にまだ教室に残っている竜二のクラスメイトの女子の中には、竜二を熱っぽく見てる子もいた。


「それじゃあ行きましょう兄貴! こっちっす!」


 竜二に先導され、連れていかれたのは隣の教室。


「あれ? クラスメイトじゃないのか?」

「うっす、隣のクラスっす。おい! 来たぞ!」


 堂々と隣のクラスに入った竜二は、中にいた一人の女子の前で立ち止まった。


「ああ……来たんだ……いらっしゃい……」


 ……おお……なんだこの負のオーラが実際に見えてきそうな感じの女の子は。


 口元を歪めて笑うその女の子は、長くくねくねした癖っ毛をしていて、前髪が長く、顔が口元以外のほとんどが見えない。白い着物を着て、三角の頭巾をつけたら、髪の長い女の幽霊にしか見えないんじゃないかと失礼なことを考えてしまった。


「兄貴、こいつは黒岩淀くろいわよどみ一応俺の幼馴染っす」

「よろしく……せんぱい……」

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