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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百十四

「にははっ、おかえりお兄ちゃん!」

「ただいま、花恋。これお土産な」


 ファミレスで竜二と翡翠の二人に相談をし終えた後はゲームセンターに本屋、あとは古着屋等近場にあるお店を三人で回り、家に帰る頃には既に空は夕暮れ。途中翡翠が逆ナンされたり、翡翠がヤンキーと喧嘩になりそうになったりはしたものの、とりあえず何事もなく無事に家に着き、ゲームセンターで取った景品を花恋に渡した。


「わーい! ……って、お兄ちゃん。何だかすっきりした顔してるね」

「ん? そうかな?」


 花恋に言われて鏡を見てみると、映っているのは自分自身あまり好きじゃない男らしさと無縁の女っぽい顔。一見いつも通りだけれど、たしかに言われてみれば少し顔色が良いかもしれない。


「えーっと、竜二先輩と王子と遊びに行ってたんだよね? そんなに楽しかったの?」

「んー……まあ楽しかったけど」


 けど、たぶんこの顔色の良さは二人と遊んで楽しかったからというだけじゃない。


 竜二達に相談した結果、凛香さんを異性として好きでいて良いという結論が出たぐらいから足取りは軽く、気持ちはどこまでも明るくなり、体の隅々まで活力がみなぎっている感じ。放っておけば知らないうちに空でも飛べてしまいそうだと思えるぐらいにはハイな気分になっていた。――――今なら何でもできそうだ。


「お兄ちゃん? どしたの?」

「何でもないよ、晩御飯にしようか」

「にははっ、わかった! 今日は何を作ろうか?」

「そうだなー……気分はカレーかなー?」

「にははっ! いいねえ! それで終わったらゲームしようお兄ちゃん!」

「んー……疲れてるからちょっとだけな?」

「にははっ! わかったー!」


 明るく笑って振り返る花恋の笑顔に優花は苦笑する。


 この顔は全然わかってない顔だなあ……。


 その日、家には兄妹の楽しそうな声が夜遅くまで響いていた。


*****


「兄貴、おはようっす。今日は体育祭っすね」

「おはよう、竜二。なんだか眠そうだな?」


 凛香さんのことが好きだと自覚してから、既に二週間近く経つ。あれから特に真央や楓、凛香さんに動きは無く平穏無事な日々を過ごし、今日は竜二が言ったように体育祭の日。


 二週間近くずっと心と体に活力がみなぎっている優花は本日も絶好調。今ならフルマラソンの往復でも走り切れそうだ。


「そうっすね、眠いというかだるいっす。一人の競技は良いんすけど、クラスの連中とやる競技はあんまり得意じゃないというか……」

「相変わらずクラスに友達居ないのか……こんなに良いやつなのになあ」


 自分で言った通りだるそうな顔をしている竜二を元気づけようとセットされた髪の毛をわしゃわしゃとしてやる。


「兄貴、やめ……いや、もう良いっす……」


 諦めたように抵抗しない竜二の頭を気が済むまで撫でていると、後ろからくいくいっと制服を引っ張られた。振り返るとそこに居たのは…………。


「えーっと……誰?」


 白桜学院の制服を着た女子で一年生。そこまではすぐにわかったものの、すぐに目に入った少し癖っ毛でくるくるした黒髪ショートの髪型に見覚えが無い。


「せんぱい……おはよう……ございます……」

「……って、ああ黒岩さんか、おはよう」


 ぼそぼそとした話し声を聞いて初めて淀だとわかった。今までのくねくねとした癖っ毛のロングヘアの印象が強すぎたせいで、声を聞くまでは全くわからなかった。


「……えっと、すごいイメチェンだけど、どうしたの?」


 髪の毛が長い女性が髪をばっさり切るのは失恋した時と相場が決まっている……というわけでもないけれど、やっぱり何らかの心境の変化が無いとやらないだろう。


 聞いても良いのか一瞬迷ったものの、とりあえず前と違ってはっきりと見えるようになった淀の表情に暗そうな感じは無かったので、聞いてみると、淀は首を傾げた。


「運動……しやすい方が……良いかなと思って」

「あー……」


 それだけか……。

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