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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その二百十三

「そうだな……コスプレイヤーに恋するのは変じゃないと俺様は思う」

「そうか……」


 それなら凛香さんを好きになったこの想いは変じゃないと……。


「でも話を聞いた感じコスプレをした時だけその人に恋してるんだろ?」

「あー……」


 なるほど。コスプレイヤーという設定だと、コスプレをしていない時が存在するから、それをそれぞれ分けて考えることになるか。


「それなら変だと俺様は思うぞ」

「そ、そうか……」


 翡翠の意見を今の優花の状況に落とし込むと、凛香さんのコスプレをした時だけ凛香さんに恋するのは変だけど、凛香さんに恋するのは変じゃないとなるわけか?


 凛香さんのコスプレをした凛香さんと言う謎のシチュエーションが生まれてしまい、結局翡翠の意見は変じゃない派なのか変だと思う派なのかはわからなくなってしまった。


 ただ、この今の翡翠の意見で一つ思いついたことがあった。


 ……今までマジハイの凛香さんとこの世界の凛香さんを完全に同一のものとして考えていたけれど、これを分けて考えてみるのはどうだろう?


 マジハイの凛香さん……いや、凛香はあくまでゲームの中の登場人物。そしてこの世界の凛香さんを普通に生きている女の子として分けて考えてみれば……。


「……何もおかしくないか」

「兄貴?」


 そう。何もおかしくはない。


「いや、むしろ当たり前か。一般的に容姿端麗、才色兼備なのはもちろん、ちょっと料理が苦手なんて弱点があるのもむしろ可愛らしいし」

「ど、同士?」


 どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。灯台もと暗しとはこのことか。男なら……いや、男女問わず、凛香さんの魅力に気が付いてしまえば恋してしまうのは仕方がないこと。


「……ふう」


 なんだろう、例えるならめちゃくちゃ難しいと思って必死にやっていた知恵の輪が、発想を変えたら案外あっさり解けてしまったかのような爽快感。


 凛香さんに恋するのが変かどうかなんてごちゃごちゃと悩む必要なんて初めから無かった。だって凛香さんに恋するのは当然のことなんだから。


 それに気が付かせてくれた翡翠と竜二、そして花恋には感謝しないといけない。


「あ、兄貴? 大丈夫っすか? なんかすっきりした顔してるっすけど……」

「ああ、大丈夫だ竜二。ありがとう」

「お、おっす……」

「ええと、同士。よくわからないんだが、悩みは解決したのか?」

「うん、綺麗さっぱり解決した。翡翠と竜二のおかげだ。本当にありがとう」

「お、おう……」


 晴れ晴れとした気持ちで笑顔を見せる優花に、竜二と翡翠が戸惑った様子を見せ顔を見合わせている中、優花は席を立ち悩みが解決したおかげで足取り軽くドリンクバーに向かった。


「兄貴は割と普通っすけど、たまに暴走するっすよね……」

「そうだな。同士はそういうところがあるよな……」


 席に残った二人が何か言っているけれど今は気にならない。


 次の問題があるとすれば、それは……。



 優花のこの想いは凛香さん本人に伝えるべきじゃないということぐらいか。



 マジハイの凛香とこの世界の凛香さんを分けて考えるのは良いけれど、関連があるのもまた事実。


 そもそもマジハイでの凛香が誰かと結ばれる話なんて無いが、それよりも問題なのは今の優花の立ち位置だ。


 マジハイの主人公が誰かと結ばれると凛香が悲惨な目に遭うわけだが、この世界では優花が竜二や翡翠の攻略イベントを終えて想いの欠片を入手した際、同様のことが起きている。


 ……つまり、今の優花の立ち位置は攻略されるキャラクターでありながら、他のキャラクターを攻略する主人公の属性を含むというかなり微妙な立ち位置に居る可能性が高い。この世界の元になっているマジハイからしたら、優花は完全にイレギュラーな存在。


 マジハイが乙女ゲームで、他のキャラクターの攻略がきっかけで何かが起こると言うのなら、優花がこの想いを凛香に告白した場合、予想もつかない事態に陥る可能性はかなり高いはずだ。


 だから、告白はしない。


 だけど凛香さんに恋してるのは変わらないし。凛香さんを幸せにするという決意にも何も変わりはない。


 ただ、今までよりももっと凛香さんを助けてみせるという覚悟が優花の中で更に大きなものになった。ただ、それだけ。……それだけの話だ。

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