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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その十九

 一年生の間に広まる、恋が叶う白い桜。

 そんな話をデマだと一刀の元に斬って捨ててくれたのは、生徒会長の深雪だった。


「今年の一年生に広まっている恋が叶う白い桜という話は自分の耳にも届いているが……まあ、そんな話が過去に出たことはない。間違いなくデマだろう」

「デマ……ですか?」

「間違いない。問題は誰がそんなデマを広めているかということだが……」



 放課後、深雪がわざわざ教室まで来て、真央と優花を生徒会室に呼び出した。深雪以外のメンバーは今日はいないらしく、広い生徒会室の中には優花と真央、そして深雪の三人だけ。急に先生から頼まれた仕事があり、他のメンバーが既に帰宅済みで困っていたらしく、元々勉強を見る予定だった真央とたまたままだクラスに残っていた優花に白羽の矢が立ったわけだ。


「急にすまないな。二人共、礼はしよう」


 申し訳なさそうに頭を下げる深雪に、真央があわあわと慌てて立ち上がる。


「いえっ! 私は勉強見てもらってますし!」

「まあこれくらいなら三人もいればすぐ終わりますよ」


 恩に着せるつもりもなかったので、特に礼を要求することもせず、真央と一緒に深雪を手伝う。


 手伝っている最中に、ふと竜二に聞いた話を深雪に聞いてみたところ、深雪は難しい顔で眼鏡をくいっと上げながら答えてくれたのが、そもそも今の一年生に伝わっている恋が叶う白い桜の話はデマだという話だった。


「恋が叶う白い桜かあ……なんだかロマンチックだね」

「んーまあ、そうかも」


 たしかにロマンチックかもしれないなと、真央に同意すると、深雪は特に同意することなく窓の外の景色を見ていた。


「……ロマンチックだと思う、女生徒の心理を利用して、白い桜を見つけようとしているのかもしれないな」

「見つけようとしているかもしれないって……誰が? なんのためにです?」

「本当の白桜伝説を知る者が、自身の願いを叶えるため……と考えるべきだろうな」


 ……つまり、俺以外にも白い桜の叶えてくれる願いを狙っている人物がいるということか。


「ちなみに六道先輩は、本当の白桜伝説は知ってるんですか?」

「無論だ。あらゆる願いを叶える奇跡の白い桜だろう? この話を知る者はそう多くはないはずなのだがな……」

「へー、そうなんですね」


 たしかに、マジハイのゲーム中でも白い桜が出てくるのは、ゲームの終盤も終盤。すべての攻略キャラのルートを一度クリアしたうえで、全キャラ同時攻略した場合のみ、最後の最後に白桜伝説の話が出てきて、実際に白い桜が現れるという流れになる。


 白桜伝説を知っている人が少ないという話も納得だ。


 ただ、現時点で白桜伝説を知っていると確認できているのは、イケメン教師の昴とイケメン眼鏡生徒会長の深雪、そして凛香のメイドのめいと既に三人いる。偽の白い桜の話から本当の白桜伝説を知る人も出てくると思われるので、ライバルがどんどん増えていくまずい状況と言える。


 余計なライバルをこれ以上増やさないためにも、デマを広めている犯人を特定する必要があるかもしれない。

 優花が危機感を感じていると、真央が深雪に対して最も知りたかったことを質問してくれていた。


「六道生徒会長は、白い桜を探さないんですか?」


 ぴたりと動きを止めて、深雪の答えを聞くことに集中する。


「この学院の名前の元になった桜だ。卒業までに見てみたいとは思うが……難しいだろうな」


 見てみたいだけかと、優花は人知れずほっとしていると、真央は首を傾げていた。

 いまいち白桜がどれだけ珍しいかがわかっていないらしい。


「そうなんですか?」

「ああ。白い桜はごく短時間しか咲かないと言われているからな。よほどの幸運の持ち主でないと難しいだろう」

「幸運ですか……」


 仕事の手伝いも終わり、真央の勉強を見る約束はまた今度と言って、生徒会室に残って仕事を続ける深雪と別れ、優花は真央と共に図書館へとやってきた。


 綺麗に整頓された無数の本棚と、勉強用の机が並ぶ図書館。

 中間考査が近いということもあって多くの生徒がテスト勉強に来ているが、席はまだまだ空いていた。ひょっとしたら、学院の全生徒が座れるんじゃないだろうか……まあ無理か。


「一緒に勉強しようなんて珍しいね」

「ま、まあね……」


 一緒に勉強することよりも、重要なのは真央の勉強の仕上がり具合を確認すること。


 あまりに真央が凛香にぼろ負けしているようだと、凛香が「大したことありませんわね! おーほっほっほっ!」なんて感じで、失言をする可能性が高くなるからだ。


 真央が負けるにしても良い勝負をしてくれれば、凛香だって大きな口は叩けなくなるはずで、そうなれば、また余計な誤解で関係がこじれることもなくなる……と思っていたのだが、優花の心配は全くの杞憂だったらしい。


「……真央って勉強できたんだな」

「ええっ! それ、ゆうかくんは、私が勉強できないと思ってたってことだよね!」


 うん。ごめん。正直思ってた。


 この世界の真央は元々勉強ができたのか、それとも昴と深雪によるコーチングの賜物なのか。マジハイのゲームならこの時点ではありえないと言いきれるレベルで真央は勉強ができていた。

 どの問題もすらすらと解いてみせるし、暗記も完璧。優花が勉強を教えてもらいたいレベルだった。


 珍しくぷりぷり怒る真央に謝りつつ、優花は今度は逆の心配が湧いてきてしまった。凛香が真央にぼろ負けする可能性である。

 そうなったらどうなるか? 優花には容易に想像ができた。


 まずは見えない所で超悔しがるだろう。そして、期末考査では真央に勝つと決意し猛勉強をすることになる。別に問題無さそうに思えるかもしれないが、問題は大ありだ。


 凛香はたぶん真央と仲良くなるという第一目的を忘れて、真央を負かすことしか頭になくなってしまう。

そうなれば二人が仲良くなるという展開は望めなくなるだろう。


「ゲームだとたしか……」


 主人公が勉強しまくっても、中間考査の時点で凛香に勝つことは難しく。勝てても僅差。凛香に勝ったら「なかなかやりますわね……」と言われてそれで終わりだったはずだ。


 しかし、今確認した真央の勉強の仕上がり具合を見るに、明らかにどの教科も満点が狙えそうなレベルだった。これだと、今度は真央が圧勝してしまう可能性が高い。


「これは……凛香さんを応援した方が良さそうだな」

「ゆうかくん?」

「悪い! 勉強はこれで終わりにしよう! 俺は先に帰るな!」

「うん! それじゃあまた明日!」


 嫌な顔一つせず手を振ってくれる真央に、優花は少し罪悪感を覚えたがぐっと拳を握り込んでその気持ちを押しつぶした。


 凛香と真央が仲良くなるために、中間考査の結果は、僅差でなければならない。優花は覚悟を決めて、あらかじめ教えられていた番号に電話した。

お読み頂きありがとうございました。


昨夜、その十三の次におまけの一話を割り込み投稿で追加しましたので、読んでいない方はそちらも読んでいただけると嬉しいです。

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