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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その十八

 ゴールデンウィーク明けの授業は、連休明けだというのに、大して苦にはならなかった。


 ずっと忙しかったし、勉強も見てもらってたからなあ……。


 いつもなら、だらだらと休みを消化していたはずだが、朝と昼は執事の仕事をして、夜は凛香やめいに勉強を見てもらうという生活を送っていたせいで、明らかに学力が上がり、生活リズムも乱れていないので、だるさもない。


 なんだかんだで、凛香の家にずっと泊まって正解だったかもしれない。これならもうすぐある中間考査は良い結果が出そうだった。

 ゲームを元にした世界に転生してまで成績を気にすることになるとは思わなかったけど……。


 中間考査……中間考査か……あっ!


 中間考査のことを考えていると、凛香が真央相手に宣戦布告していたことを今更ながら思い出した。


 せめて良い勝負をしてくれればいいんだけど……。


 ちらりと振り返ると、真央と凛香二人と目が合った。

 真央はにこっと笑い、凛香はふんとすぐに顔を背けた。


 二人共こっちを見てた? ……そんなわけないか。

 まあ優花の席は二人よりも前の席なので、目が合っても別におかしくはない。


 昼休み早々にどこかに行ってしまった凛香は置いておいて、自分の席でお弁当を広げようとしていた真央の元へ向かう。


「ゆうかくん? どうしたの?」

「いやーまあー……そのー」


 しまった、なんて言うか考えてなかった。勉強してるか? なんてそのまんますぎるし……。


「あー……そういえば真央、凛香さんに勝負挑まれてなかったっけ?」

「勝負? ……あー……中間考査の?」

「そうそう。それで、調子はどうかなって?」

「うん! 実は六道先輩と、あと三日月先生に勉強を見てもらう機会があってね! 今回はすごく良い点とれそうだよ!」


 メガネイケメン生徒会長と、イケメン教師もちゃんと攻略してたのか……。


 二人を攻略するには最初の時期に勉強を頑張って学力を上げるしかないので、攻略としては正解だ。翡翠とも仲良くしているみたいだし、あとは竜二とも普通に仲良さそうに話していたのも見たこともあった。

 現状真央は優花を除く全員を攻略できていることになるんじゃないだろうか。


 ただ、優花に関しては全く攻略が進んでいないと言える。ゲーム内にあった灰島ゆうかイベントは今のところ何一つ消化できていない。

 避けているわけでも、避けられているわけでもないが、ゲーム内だったらCGがもらえるようなイベントが起きないのは、優花が真央の主人公補正に抗っているせいなのか、あるいは優花が転生したせいで攻略対象から外れたのか。それはわからない。


「そっか……まあ凛香さんは成績上位だろうからな。頑張れよ」

「うん。ありがとう」


 真央にエールを送り教室を出て学食に行くと、ちょうどそこに竜二がいた。


「お! 兄貴! 今から飯っすか!」

「そうだけど? 竜二は弁当だろ?」


 料理上手の竜二はたしか基本的には自分で作ったお弁当をお昼に食べるはずだ。


「いや、今日はおれも学食っす。せっかくなんで一緒に食いましょう兄貴!」

「いいけど、おごらないからな。結局バイト代はほとんど花恋に持ってかれちゃったし……」

「バイト? 兄貴バイトしてたんすか?」


 そう言えば、竜二には特に説明していなかったか……。


 学食で昼飯を食べながら、ゴールデンウィーク中のことを説明してやると、竜二は急にがくっと膝をついた。


「ど、どうした?」


 竜二の奇行に周囲の目が集まる。


「兄貴のメイド姿……見たかった……っす……」

「ばかかお前! そんなもんは見なくて良いんだよ!」


 思わず頭をばしっと叩いて強めのツッコミを入れると、周囲から悲鳴が上がった。


「あっ、あいつあんなことして大丈夫なのか? あれって一年の獅道だろ?」

「たしか、中学時代に近所の不良グループ全部潰したとか……」

「暴れるんじゃない? 逃げた方が良くない?」


 うーん……相変わらず竜二はびびられてるなあ。


「ほら、注目集めちゃってるから立て竜二」


 手を貸してやると、竜二はようやく立ってくれた。


「うっす……ちなみに兄貴。写真が残ってたりは?」


 ただ、別にあきらめたわけではなかったらしい。


「誰が残すか! このバカ!」

 

 もう一度ツッコミを入れてやると、また悲鳴が上がった。


 め、めんどくさい……。

 一々悲鳴が上がるのも面倒くさいので、さっさと残りを食べて場所を移す。


「そろそろ中間考査だけど、竜二は大丈夫か?」

「そっすねえ……」


 どう答えるべきか迷っている様子の竜二を見ながら、優花は別に聞く必要はなかったことを思い出した。


「まあ、大丈夫だろうけどな。成績上位だもんな、一年で一番なんだろ?」


 不良っぽいのに、竜二は意外と優等生なのだ。作中では結局一年を通して、一年生一位の座を守り抜いていたはずだ。


「……兄貴? なんで知ってるんです?」

「え? ……あ!」


 竜二に言われて気が付く。たしかに、まだ考査が行われてもいないのに順位を知っているのはおかしい。ただ、竜二の反応から、竜二が驚いているのは、未来の結果を知っているからじゃなさそうだった。


「……いや、たまたま先生に聞いたんだよ」


 言い訳としては苦しいかと思いながら、焦りを顔に出すことなくそう言うと、竜二は納得したようで、がりがりと頭を掻いた。


「あー……それならあり得るか……。入試一位だからって挨拶してくれなんて頼まれたんすけど、柄じゃないんで断ったんすよね」


 ……なんとか誤魔化せたか。


 竜二が驚いていたのは、竜二が入試で一位だったことを優花が知っていると思ったからだったようだ。


「まあ俺もあんまり前に出て目立つのは嫌だな」

「そっすよね。兄貴は何かそんな感じっす。虚空院の姉御が兄貴を執事にしてたってのもなんかわかる気がするっつうか」

「は? どういう意味だ?」

「兄貴! すいません! 謝りますから凄まないでください! 怖いっす!」


 まじびびりだった。

 かわいそうなので、睨むのはやめてやる。


「ところで竜二は白桜伝説って聞いたことあるか?」


 特に期待はしていなかったが、話のタネぐらいにはなるかと、竜二に白桜伝説のことを聞いてみると、竜二はすぐに腕を組んで眉間に皺を作り記憶を探っていた。


「……白桜伝説? ……あーあれっすか」


 何か心当たりがあったらしい。


「何か知ってるのか?」

「そりゃあ知ってますよ。有名っすから。あれでしょう? 思いが成就すると、桜が白く染まるっつう」

「は? なんだそれ?」

「へ? 兄貴知らないんすか? 入学したばっかりの頃は女子共がよく話してたっすよ? 恋が叶う桜だのなんだのと……」

「恋が叶う桜?」


 どういうことだ?


 優花が知っているのは、願いを叶える白い桜であって、恋が叶う桜ではない……というか、そもそも思いが成就した後に桜が白く染まるのなら、恋が叶う桜じゃなくて、恋が叶った桜なんじゃないのか?


 また新たな疑問が生まれてしまったところで、昼休みも終わり、竜二と別れた。

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