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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい  作者: 雪ノ


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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その百六十四

 一仕事終えた気分で優花が四五郎の元へと戻ると、また四五郎は腕を組んでぶつぶつとつぶやいていた。


「まさか、これほどとは……。これで自分は平凡だなんて心から言っているんだから、たちが悪いな……。自信をつけさせてあげようと思ったけれど、これならこのまま色々と教えた方が育ちそうだ。となると……」


 どうやら優花のことを何か言っているみたいだが、よく聞き取れない。


「あのー……四五郎さん?」

「邪魔しちゃだめよ」


 とにかく四五郎にはさっさと戻ってきてもらおうと声をかけようとすると、いつの間にか背後に迫っていた真潮に耳元で囁かれ、優花はいきなり心臓を握りつぶされたような気がした。


 ダメだ、この人だけは無理だ。


 単純に『嫌い』とも違うこの感覚は、たぶん生理的に無理という感じなのだろう。


 心臓に悪い真潮から距離を取り、四五郎のぶつぶつタイムが終わるのを待つこと数分。ようやく考え事を終えた四五郎が開口一番口にしたのは……とても意外な言葉だった。


「同士くん。どうだろう? 今日は僕達の家に泊まらないかい?」

「へ? いやいや、俺は……」


 何をどう考えたらそんな結論に至るのか。考える前に否定をしようとして、優花はぴたりと動きを止めた。


 四五郎が言った『僕達の家』とは、翡翠の家でもある。つまり今……優花は翡翠の家に招待されていることになる。


 うーん……翡翠の家か……。見てみたい気持ちも正直あるけど……。


 翡翠の家ということは、更に言うならば真潮の家でもあるわけだ。それだけで行きたくなくなるぐらいには優花は真潮が苦手になっているらしい。もはや色々な意味で行きたくはないが、少なくともさっき抱いた疑問の一つは解消できることに気が付いた。


 『翡翠の家はお金持ちなのか、否か』


 現状では四五郎の少し古い車と、真潮のやっているこのお客さんがほぼいない喫茶店を見るに、翡翠の家はお金持ちではないという結論に達しつつあるが、本当にそうかどうかはまだわからない。


 割とどうでも良さそうな疑問にも思えるが、この疑問には重要なポイントがある。翡翠の家がお金持ちなのかどうかは、マジハイでの翡翠の設定の根幹に関わるのだ。


 もし、翡翠の家が普通の家だったら、翡翠のお金持ち設定は消える。これまでもマジハイという原作では無かった展開、設定が判明したことはあるが、原作で明確に描かれていた設定が変わることはほとんど無かった。


 この世界がゲームであるという結論を出した今、翡翠の設定が原作であるマジハイと違うということが判明した場合、想定される最悪の事態は一つ。


 優花が凛香を救うために持っている唯一の武器と言っても良い『マジハイの攻略情報』が役に立たなくなること。言い換えるならば、これから起こることがわからなくなるということでもある。


 その変化が凛香を救うことに繋がってくれるのならば良い。しかし、その変化によって生まれた新しい流れとでも言うべきものが、凛香に致命的なダメージを負わせることに繋がる可能性もある。


「……それじゃあ、お願いしても良いですか?」


 もはや恐怖の対象になりつつある真潮のこともあり、四五郎の誘いを断りたい気持ちも依然強かったが、何よりも優先すべきは凛香さんを救うこと。


 そのためには……何でもする必要がある。翡翠の家に行く……いや、一日泊まるだけでこの重要な疑問が解消できるのならば安いもの。


 強い覚悟を胸に、優花は四五郎に案内されるまま奥間家へと向かった。


*****



 結果的に、優花の心配は杞憂に過ぎなかった。


 あのお客さんのほとんど来ない喫茶店は、あくまで真潮が趣味でやっているだけらしく。奥間家の自宅は凛香の家には少し劣るものの、かなりの豪邸。翡翠のお金持ちの息子設定はしっかりと守られていたわけだ。


 それだけ確認した時点で帰れたのならば良かったのだが、そうもいかず……。


 覚悟していたことではあるものの、翡翠の家に泊まったことを後悔しながら優花の夏休み最終日は終わったのだった。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


……新年一本目でいきなり短めですが、週一本のペースはせめて守れるように頑張りますので、読んでいただけると嬉しいです。

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