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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その百三十三

 救急車を呼ぼうとする凛香を何とか説得し、トラブルは一応の解決をみたので川遊びは続行。


「それじゃあ仕切り直して……竜二、他に何か川遊びはあるか?」

「そうっすねえ……」


 田舎のおじいちゃんの家で習ったのだろうか、竜二の川遊びのバリエーションは豊富だった。珍しい石を探して皆で点数をつけあったり、石を何段積めるか競い合ったり、笹舟を浮かべてレースをしたり。竜二が持ってきた人数分の水鉄砲で遊んだり。


 竜二が用意してくれていた軽い食事を食べたりして休憩を挟みつつ、色々な川遊びをしている内に気が付けばそろそろ帰る時間。


「いやあ、遊んだなあ」

「遊んだっすね……」

「……疲れた」


 優花同様、遊びすぎて竜二も淀も疲労の色を見せてはいるが、その表情は満足そうだった。


「さすがのわたくしも疲れましたわ。……ここからの帰路を思うと憂鬱ですわね」

「あはは……そうですね」


 そして肝心の凛香と真央を仲良く作戦の進捗だが……今回も正直成果はあんまりと言ったところ。真央と凛香に二人きりで遊ばせるための何らかの作戦を考えておくべきだった。


 まあ……ちゃんと二人共楽しんではくれたとは思うので今回は良しとしておく。


 疲れた体を引きずって優花達が帰りの準備を始めようとすると、


「助けて! 誰か!」


 助けを呼ぶ声が聞こえてきた。


 声の方を振り向くと、優花達が遊んでいた浅瀬から遠く、岸から離れたところで中学生くらいの子供が手足を必死にばたつかせていた。足が付かなくてパニックになっているらしい。溺れている子供を見て、母親が助けを求めていた。


「ちっ、仕方ねえな!」


 状況を瞬時に把握した竜二が荷物を放り出し、溺れている子の方へと走っていく。その動きはいつもに比べれば遅い。疲れが体に溜まっている証拠だ。


「ばか! 待て竜二!」


 走っていく竜二を呼び止めるが、竜二は足を止めずに川に入っていってしまった。すぐに泳いで子供の所にたどり着いたまでは良かったが、


「ばかっ、おまっ、暴れんな!」


 パニックになっている子供は竜二の声が聞こえないらしい。必死に岸へと連れていこうとする竜二に抵抗し暴れていた。


「くそっ、ぐっ……」


 めちゃくちゃに暴れる子供の足や手が竜二に当たったかと思うと、今度は竜二に必死にしがみつく。


 子供とは言え、成長期で体も大きくなり始めている男の子、細身とはいえ竜二との体格差はそこまで大きくはない。竜二は帰り際でTシャツを着ていた状態で川に入ったので着衣水泳状態、疲労も相まって身動きが取れなくなっている。


「りゅう!」


 淀の悲痛な叫びが聞こえた。


*****


 竜二が止まらないとわかった時から、優花はまず竜二の荷物の一つであるクーラーボックスの中身を取り出し、しっかりとフタをしめた。そして今度は自分が持ってきていた長いロープをクーラーボックスに結び付ける。


 今回のイベント川遊びをするにあたって、基本的な準備は竜二に任せていたが、優花も一つしたことがあった。それは川で何かあった時にどうすれば良いのかを調べて頭に入れておくこと。


 溺れている人を助けに飛び込むのは実は危険で、助ける時は浮く物を持っていったり、ロープを投げたりした方が良いという知識を思い出し、目に付いたクーラーボックスを浮き輪代わりに利用することを思いついた。


「竜二! つかまれ!」


 ロープをつけたクーラーボックスを竜二にぶつけないように注意して投げる。


 優花の声が聞こえたのか、竜二が自由になっている方の手でクーラーボックスに繋がったロープをしっかりとつかんだのを確認し、引っ張る。


 クーラーボックスに繋がっているロープは外れないようにしっかりと左手に握っている。本当は木にくくりつけたかったのだが、その余裕は無かった。


 竜二と子供の二人分の体重は重く、むしろ優花の方が引っ張られそうだったが、


「わたくしも協力しますわ!」

「私もやるよ!」

「りゅう!」


 凛香と真央、淀が優花と竜二とを繋ぐロープを引くのを手伝ってくれた。四人で協力しロープを引っ張ると、竜二をちゃんと引き寄せることができた。


 足が付くようになった竜二がまだパニックになっている子供を無理やり担いで戻ってくると、安堵と共に全員その場にへたり込んでしまった。


「兄貴ーーーーー!」


 子供を母親の元へと無事に渡し何度もお礼を言われて戻ってきた竜二だったが……戻ってくるにつれて段々足が速くなっていき、最後にはダッシュしたうえで優花へと抱き着いてきた。


「ぐふっ……」


 竜二が勢いよく抱き着いてきたせいで受け止めきれず、押し倒される形になった。濡れたままの服で竜二が抱き着いてきたせいで、優花の服までじんわりと濡れていく。濡れた服が肌に張り付いていく感触が大変気持ち悪かった。


「ちょっと! 何をしているんですの!」

「……そういうのは良くない」


 いつまでも離れようとしない竜二を見かねたのか凛香と淀が竜二を引き剥がしてくれた。



「兄貴ありがとうございました! さすがは兄貴っすね!」

「いやまあ、無事で良かったよ……。念のためロープも持ってきておいて良かったよな」

「おれはもうだめかと……本当、さすが兄貴っす!」


 帰りの電車、まだ興奮さめやらない様子の竜二がしきりに優花を褒めてくるが、もう終わったことなので正直今は眠りたかった。無理やり寝ようにも微妙に濡れた服が優花を寝させてくれない。


 ため息をつきたい気分で向かいの席を見ると、真央達が、真央、淀、凛香の順で並んで座り皆すうすうと寝息を立てていた。


 一見三人とも仲が良さそうに見えるが、間に淀を挟んでいるあたり、やはり真央と凛香の間には溝がある。皆で一緒に遊んでいても、凛香と真央が二人で直接遊んでいた時間も無い。


 二人の間の壁は……どうやらまだまだ厚そうだった。

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