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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その百十八

 やっぱり一人で残したのは失敗だったかと今更ながら後悔しながら、全力で駆け出す。


「優花君! 危ないですよ!」


 めいの注意も今は耳に入らない。


 ゲームセンターの中を全力で走ること数秒、すぐに凛香の元にたどり着き――――優花は思わず走った勢いのままずっこけそうになった。


「可愛いですわ! やりましたわ!」


 優花が見たのは、女性の店員さんに景品を出してもらったぬいぐるみを手に喜んでいる凛香の姿。別に誰かに襲われたわけではなかったらしい。


「あら、優花さん? 遅かったですわね。もう景品をいただきましたわよ?」

「そう……みたいですね」


 まあ無事だったならそれでいいか……。 


 一先ず安堵した優花が振り返ると、少しだけ顔を出してこちらの様子をうかがっていためいと目が合った。


 どうやらめいは合流するつもりはないらしく、このまま見守っていてくれるらしい。なんで優花達に合流しないのかはよくわからないが、何かあった時にめいがいてくれるのは心強い。


「どうかしましたの?」

「いや、なんでもないです……。それよりあっちにもゲームがあるんで行ってみませんか?」

「ええ、良いですわ!」


 景品を自分の手で一発でゲットしたことですっかり上機嫌になっている凛香は両手にぬいぐるみを持ったままだったので、とりあえずゲームセンターの袋をもらいぬいぐるみを入れて、場所を移動する。


 クレーンゲームはこれ以上やらない方が良いだろうと、向かった先は格闘ゲームや音楽ゲームが置いてあるアーケードゲームコーナー。


 アーケードゲームコーナーに足を踏み入れた凛香は、さっそく初めてUFOキャッチャーを見た時のように、興味津々で格闘ゲームの筐体をまじまじと見出した。


「これは……テレビゲームとどう違いますの?」


 家にゲーム機が無い凛香だが、さすがにテレビゲームのことは知っていたらしい。


「そうですね。プレイする度にお金がかかるのと、後はコントローラーが違いますかね」

「なるほど……それで? これは何をするゲームなんですの?」

「これは格闘ゲームですね。選んだキャラで戦う感じです」


 これもUFOキャッチャーの時と同じように、説明するよりも実際にプレイして見せた方が早い。ざっくりとした説明をしてから席に座り、百円を入れてゲームをスタートする。


 お金が入ったことで、デモ映像が終了しキャラ選択画面になった。


「まずは使いたいキャラを選んで……」

「わたくしこの子が良いですわ!」


 凛香が指さしたのは犬のキグルミを着たキャラクター『イヌ・ワーン』。他のキャラよりも無駄に体が大きく、動きも鈍そうだった。


 とりあえず凛香が選んだイヌ・ワーンを選択し、ゲームスタート。


「押したボタンに応じて技が出るんですけど……」


 とりあえず適当にボタンを押して技を出してみるとイヌ・ワーンはゆっくりとした動作で腕を振り上げ

またゆっくりとした動作で振り下ろした。


「あー……これは弱そう……」


 相手はプレイヤーではなくコンピューターだったので、攻撃は当たったが、たぶん対人戦ではまともに当たらないだろう。体が大きく攻撃も受けやすいので、たぶんこのゲームの最弱キャラとかじゃないだろうか。


 とりあえず適当に技を出し続けると、あっさりと敵を倒すことができた。


「……とまあこんな感じですね。基本的には負けるまで続けられますよ」

「なるほど……わかりましたわ!」


 やってみたそうだったので、凛香とプレイを交代し凛香の背後に回る。相手はコンピューターとは言え、徐々に強くなる。ゲーム自体初めてプレイする凛香はたぶんすぐ負けてしまうだろう……という優花の予想はあっさり外れた。


「ゲームは初めてプレイしましたけれど、なかなか面白いですわね!」


 大きい体でどんどん前に出て相手を壁に追い詰め、逃げ場をなくしてから攻撃を繰り出すという戦い方を自力で編み出した凛香は連勝を重ね続け、コンピューター相手に九連勝。


 戦っていくうちに段々ゲームの操作にも慣れてきた凛香は、複雑な操作を必要とする技まで簡単にだせるようになっていた。


 時々忘れるけど、凛香さんは俺と違って基本万能なんだよなあ……。


 次勝てばゲームクリアで終了というところで『挑戦者現る』の文字が画面に表示された。


「挑戦者? これは何ですの?」


 急に止まった画面に凛香が不思議そうに首を傾げ振り向いた。


「ああ、これは別のプレイヤーが凛香さんに挑戦しに来たってことですよ。他の人とも遊べるんです」

「なるほど……この虚空院凛香に挑むとは命知らずな方もいるようですわね! 良いでしょう! 返り討ちにしてあげますわ!」


 コンピューターに勝ち続けたことで凛香は調子に乗っているようだが、さすがにプレイヤーには勝てないだろう。たぶんすぐにやられて終わりだ……と思ったらまた予想が外れた。


「うわあ……」


 ひたすら壁に追い詰めて逃げ場をなくしてから攻撃していく方法で、凛香はあっさりとプレイヤーが操るキャラも倒してしまった。


「動きは遅いけど、攻撃範囲が広くて、スーパーアーマー持ちなのか……」


 弱いと思ったイヌ・ワーンも強い人が使えば強くなるらしい。


「おーほっほっほっ! 勝ちましたわ!」

「ははは……」


 高笑いをする凛香に苦笑いを返しながら、相手が逆上しないと良いなと思い、こっそり凛香にやられた向かいの席のプレイヤーを確認しに顔をのぞかせてみると……。


「くっ、俺様が負けるとは……」

「あっ、じゃあ次楓が行きますよ!」

「楓ちゃんってゲームするの?」


 そこに居たのは翡翠と楓と真央、そして呆れたような顔で三人を見ている深雪だった。


「お前達……あまり声を出すと灰島達にばれるぞ……。そもそも、こっそり見守ると言っていたのに、どうしてゲームで対戦しているんだ……」

「あっ、そうだった!」

「ほらほら! 早く場所変わってくださいよ! テーブルゲーム部の実力を見せてあげますよ!」

「まっ、待て! 俺様がもう一戦……」


 深雪の注意に、真央が慌てて口を押さえ、楓は気にせず翡翠から席を奪い取っていた。全員優花がのぞいていることには気が付かなかったらしい。


 いや……もうばれてるんだけど……。


 どうやらめい同様、真央達も優花達をこっそり遠くから見ていたようだ。どうして四人がここに居るのかは謎だが……もしかしたら優花達が遊んでいるのを邪魔しないように気をつかってくれているのかもしれない。


 ……ということは、あの時見た人影は真央達か。


 結局凛香が危ない目に遭うことは無さそうだと安堵しつつ、めいの時と同じように、真央達には気が付かなかったふりをしておくことにした。


 昨日凛香の捜索を手伝ってくれたお礼を改めて直接言いたかったが、それはまた今度にする。


「優花さん! また勝ちましたわ!」

22日に更新したつもりでしたが……ちゃんとあげてませんでした! 待っててくれた方すみません!

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