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第二十二話㋓ 覚悟

 親善交流から数か月が立った。

 帰国後は大変だった、モデスティア王国で見た事や、知った事を書類にまとめ、それを軸として、モデスティア王国の情報をまとめる会議が連日行われた。

 

 特に王城内の情報は間者では手に入れにくい情報だった為、かなり重要視された。

 魔法については、剣技に傾倒している貴族達は、苦虫をかみつぶしたような顔で聞いていた。

 ブラフだと言って信じない者すらいた。


 ギデオン関係者は洗い出され、クーデターの様な事を考えていた事が明るみになった。

 その後、関わった者はフェリクスとの面談が課せられた。

 一部は過激過ぎると言う事で処分されたが、多くはそのままフェリクス派へと組み込まれた。

 ニコルは処分対象に入ってしまった。ギデオンからの選民思想が強すぎたらしく、ミラボー家に軟禁するように言い渡された。

 

 ニコルをぶっ飛ばした俺は、処分無しで今まで通り近衛騎士のままだ。

 問題は、近衛騎士団団長にトリスタンが、代理からそのまま団長へと昇格した事だ。

 ギデオン派の武闘派を仕切っていたこともあり、取り巻きの武人が近衛騎士に配属され、トリスタンの周りを固めている。


 フィルはそのまま副団長に据え置きだったが、ジェレミーは命令違反を盾に降格処分を受けてしまった。

 色々と悩まなくて済むと笑っていたが、新しい副団長はトリスタンの様に横暴を着込んだような男だった。


 訓練の休憩中に色々と考え込んでいると、ぽろっと口からこぼれてしまう。

 

「このままじゃ動き辛くて困るな……」


「そうですね、特にエカルラトゥ様はトリスタン様から目の敵にされてますしね、なんででしょうか」


 隣で休憩中のアリアが俺の呟きに律義に返答してくれる。


「わからない……ニコル関係なのか、それとも解毒魔法陣が原因なのか……」


 解毒魔法陣は話し合いの結果、聖女からの提供と言う事にした。

 スカーレットとアリアとカーマインが作ったが、外面だけで見ると俺とアリアとカーマインが作ったと言える。

 そんな事を馬鹿正直に言えないので苦肉の策と言える。

 自国の騎士が、廃嫡したとはいえ、王子の行動を真っ向から否定する行動を取ったとあれば、それはそれで問題だからだ。

 

「俺なんてゴミでも見る様な目で見られるぞ」


 ジェレミーが溜息を吐きながら言う。


「それは仕方が無いです。傍から見ればスカーレット様を恐れて行動しなかったようにしか見えないと思いますし……」


「そうだな、聞く限りじゃびびったと言われても仕方が無いな」


「確かに少しびびっていたけど……お前らはあの魔法を見て無いからそんな事を言えるんだよ。というかそもそもスカーレットに攻撃できるわけないだろ?」 

 

 いじけながらジェレミーが答える。

 ジェレミーが言うには疑似太陽の魔法の存在感はそれはそれは凄いものだったらしい。

 スカーレットが手をかざすだけで、熱波が部屋中に広がり、酷い奴は火傷を負い戦闘所ではなかったみたいだ。

 しかも魔法封印魔法陣と謳っていた魔法陣が、実は魔力吸収魔法陣で、封印する訳では無かった事が知れ渡ってしまった。

 

 魔法院は、対紅蓮の魔女の魔法陣を作るのに躍起になっているらしい。

 虎の子の魔法陣が数日で打ち破られた事が、プライドを刺激したらしい。


「……私は出来ません、むしろ命令してきた人に斬りかかりたいです」


「俺も横に同じだな……後が怖いし……」


「ほらみろ、当たり前の対処しただけだぞ」


「俺達はスカーレットの事を知っているから、ジェレミーの対処に賛同するだけだぞ」


「……知ってる、ちょっとトリスタンの扱いに鬱憤が溜まっているだけだ」


 俯きながらそんな事を言う。

 以前の俺の様な扱いを受けているジェレミーは、どうやらストレスが溜まっているみたいだ。


「まあ俺もストレスが溜まっていないといえば嘘になるな。アンジェリカ姫とのお見合いが正式に決まってしまったからな」


「それはやっかみもあるだろ、なんだよ王領割譲して大公に据えるなんて、実質一国の城主じゃないか」


「その婿だぞ」


「いやいや、だとしても羨ましがる人の方が多いだろ」


「エカルラトゥ様は本当によろしいのですか、アンジェリカ様より先にお見合いする人がいるんじゃないですか?」


 ジト目でアリアが見てくる。

 ジェレミーはニヤニヤしている。

 きっとスカーレットの事を言っているのだと、鈍い俺でも分かるが……。


「この件は俺が判断するのを超えていたらしくて、受けろと命令されたんだ。断れば良くて左遷……悪ければそれ以上もあり得る。俺の事よりもアリアの方が問題だろ、一回りも年が離れているんだぞ?」


 ジェレミーが少し反応する。

 吹っ切れたはずだったが、面と向かってアリアがお見合いするのが堪えているのかもしれない。

 そりゃトリスタンにはいびられ、気に入っていた女性は他の男にご執心となれば色々と溜まるのも頷ける。


「私も色々と考えた末の行動です。両親にも最初は呆れられましたが、細かく丁寧に話していく内に賛同してくれました。それにもう一つ思惑がありますから」


「思惑って?」


「今は内緒です。きっとお見合いの時に分かります。多分……」


 何か考えがあっての事か、ならアリアを信じるか。

 色々と問題発言をぽろっと口に出すので、時々びっくりするが、考えた結果だと分かって来た。

 本人が考えなしに行動しているわけじゃないのなら、俺が口だす事は余計な事でしかない。


「俺はお見合いには参加しないが、国境会館で警護任務につく事になってるぞ」


「それって左遷じゃ……」


「言うな」


 ジェレミーが空を見ながら言う。

 

「おい! いつまで喋っている! 訓練の時間を無駄にするな!」


 休憩していただけだったが、トリスタンにはお気に召さなかったらしい。

 しぶしぶ鍛錬に戻る。もう少し休憩していたかったが許されないみたいだ。

 



 モデスティア王国との国境にある平原に、今回のお見合いパーティー用の屋敷を立てた。

 俺達の国は親善交流時に色々と事件を起こしたので、若干信用が無い。

 国としては親交を深めたいという意思はあるが、反対派を抑えられていないと判断されても仕方が無い。

 屋敷は今後の交流の拠点にすると言っているが、争いになった場合には拠点にする気が両国にはあるのかもしれない。

 だからなのか、無駄に豪華な三つの屋敷が見える。


「やっと着いたな」


「参加者なのに、護衛しながらなのは納得いきません」


 アリアがむくれながら愚痴る。


「気持ちは少しわかるが、それが俺達の仕事だろ」


 一緒に護衛していたジェレミーが答える。

 ブリジットとフェリクスを護衛しながら、国境まで来た。

 さすがに完全武装しているわけではないが、やはり馬での移動は少なからず堪える。


 俺は侍女を雇っていないので、荷馬車に載せている荷物を受け取りアロガンシア王国側にある屋敷に入る。

 当然モデスティア王国側の屋敷もあり、中央に合同会館がある。

 その中央にある合同会館でパーティーをやる予定らしい。


 ブリジットとフェリクスが屋敷に入り、部屋へと案内されてから俺とアリアがロビーに入る。

 ジェレミーはそのまま屋敷の警護に回された。

 若干こちらを恨めしそうに見てきたが、そこはどうしようもない。

 ロビーに入ると、ある人物と侍女が待っていた。

 

「この国境会館と管理しています、ティム・シーモアです。何かあればお声をおかけください」


「よろしく」


「よろしくお願いします」


 アリアと共に軽く挨拶をしてから、屋敷にいる侍女が二人こちらに近づいてくる。


「お二人は従者を雇っていないとの事でしたので、こちらで用意しました」


 二人の侍女がこちらに会釈をする。

 侍女と言うと、ナタリーとアリアを思い出してしまう。

 そんなどうでも良い事を考えながら、宛がわられた部屋へと案内される。


 内装はいつものアロガンシア王国にある過剰装飾された部屋だ。

 以前は気にしていなかったが、モデスティア王国の適度な装飾の方がこのみだ。


 部屋の中でまったりしていると、アリアが訪ねてくる。

 侍女が紅茶を用意してくれる、もちろんヴァーミリオン家の紅茶だ。

 親善交流で貰った分は直ぐ無くなったが、普通の紅茶は少し高いがこの国でも流通するようになった。

 紅茶を二人で堪能して、侍女が居なくなってからアリアが口を開く。


「エカルラトゥ様、今回はどんなことが起こると思います?」


「アリアの中では事件が起こる事は確定なのか?」


「スカーレット様が、好きでもない殿方とお見合いを強制されているのですから、ほぼ確定だと思っています」


 アリアが無駄に自信ありげに語る。

 確かにフェリクスがスカーレットに何かしようものなら、何かしら起きそうだが……。

 

「この話題はやめよう」


「え~、でも精神の入れ替わりが明日起きたらって考えると、何か起きそうって思いません?」

 

「怖いこと言うなよ……それは俺がフェリクス兄上とダンスしたり、食事したり、会話しないといけないんだぞ? しかも情念のある目を向けられながら」


 歳が離れすぎて、フェリクスとの親交はほぼ無い。

 昔とは違い、表にでるようになったようだが、遠くで見ている程度でしかかかわりは無い。

 だが、噂だけは伝わってくる。かなりスカーレットにご執心だという噂がだ。


「噂ではかなりスカーレット様の事に好意を持っているみたいですから、きっとあの手この手と攻めると思います。第二、第三王子も手に入れたい女性に対して、色々裏工作していたって噂ありますし」


「そう言われると、本当に何か起こりそうで怖いな」


「だからこそ覚悟がいるんです」


「誰を助けるか、か……」


「そうです!」


 やっとわかってくれた、という顔でアリアが詰め寄ってくる。

 

「当然スカーレット様ですよね?」


「……まあそうだな」


 スカーレットとナタリーには恩があるし好意もある。

 だが改めて考えると凄い覚悟がいる。

 ほとんど母国を捨てる事と同位だ。

 俺もアリアと同じように色々な事に対して覚悟を決めないと、即動く事が出来ないかもしれない。

 その判断の遅れが命取りになる可能性も無くはない。

 

 やがてアリアが自分の部屋に戻り、侍女も帰らせて一人になる。

 部屋は中央側にあるため、合同会館が窓から良く見える。

 その館を見ながら、アリアの言葉を噛みしめる。

タイミング良く精神が入れ替わる俺~近衛騎士エカルラトゥ編~


第二十二話㋓ 覚悟 終了です

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