第十八話㋓ リウトガルド団長の所在(六日目前編)
「スカーレット様、起きてください」
体が揺さぶられる感覚がする。気絶していたのだろうか。
起き上がると、先ほどまでいた部屋じゃなく、アロガンシアの部屋だった。
すぐそばには、聖女フレイヤがこちらを伺っているのが見える。
確かフレイヤと話をしていて、そこから記憶がない。
「フレイヤ、俺はいったいどうしたんだ?」
「……もしかしてエカルラトゥ様なのですか?」
「ああ……フローラか、どうやら入れ替わったらしい」
「こんな時に……」
フローラが悲痛な顔をしながら床に崩れ落ちる。
どうやら勘違いしているようだ。
「いや逆にタイミングは良いのだが、俺なら城の内部に詳しいし、スカーレットの魔法も使える」
「そ、そうでしたね、すみません取り乱しまして……」
恥ずかしそうに立ち上がり、こちらにペコペコと頭を下げる。
「気にしなくていい、それよりナタリー……」
この場にナタリーがいない事に不思議に思い、部屋を探そうとすると、昨日起きた仮面舞踏会の記憶が頭に浮かぶ。
ギデオンがスカーレットに扮しているとはいえ、やってはいけない事をやったようだ。
「ギデオンか……」
許せない気持ちが心の底から湧き上がる、しかし現状あいつが王位に一番近い。
逆らえないが、隙があれば蹴落とそうと考えるくらいには不快な存在にはなった。
「……仮面舞踏会の事ですか?」
「そうだが、今は団長を探そう」
「……ありがとうございます」
完全には信用してくれていないだろうが、もし団長が窮地に立っているなら、俺の意志で団長を救いたい。
それも仕方が無い事だ、色々とやりすぎだ。
特に俺とスカーレットはアロガンシア王国を信用していない。
正直に言えば、すでに騎士職を辞めてモデスティア王国に行き、護衛の仕事でもした方が幸せになれそうな気がする。
だがここから逃げても戦争が始まれば、ただの護衛と、アロガンシアの騎士じゃ出来る事が違う。
「その前に、部屋に帰った方がいいんじゃないのか?」
「ここには来ていない事になっていますので、むしろ今出る方がまずいかと……」
「信者を介してここにきたわけか、それも絶対では無いだろうけど信用できるのか?」
「……」
どうやら今回の件で疑心暗鬼になっているようだ。
「わかった、取りあえず俺は探しに行くから、ナタリーについていてくれ」
「わかりました」
いつもはスカーレットが寝ているベッドにナタリーが横になって眠っている。
フローラが椅子を寄せて座る。
「窓から出るから明りは消すが、準備はいいか?」
「どうぞ」
明かりを消ししばらく待つと、窓をそっと開けて外へと出る。
服装は侍女服のままだが、黒いので丁度いい。
身体能力を上げ、音を消し、時には魔法を使いながら二つの塔の東側へと向かう。
なぜ東なのかはただの勘だ。
闇に乗じて自分が働いている王城に忍び込むのは、少し罪悪感がある。
だがそれ以上に、この体から得られる全能感がまさる。
俺の剣技や、身体能力をいかんなく発揮できるようになったスカーレットの体は、思った以上に具合が良い。
しかもスカーレットの知識から魔法が使い放題なのだ、きっと今の俺を止められるものはいないだろう。
最初の頃は貧弱な体だったが、今は筋肉が盛り上がらないよう気を付けてだが、体がかなり鍛えられている。
もしかしたらスカーレットも同じことを思っているかもしれない。
そんな事を考え、城を隠れながら動いていると、いつの間にか東の塔の前につく。
東の塔を見ると見張りがいる。城壁にもいるが少し遠い。
どうやって登るか考える。
この塔は一番上に監禁部屋があるのだ、中に入り階段を昇るか、外から登るしかない。
見張りを倒すと大騒ぎになるから中の階段から行くのは無しだ。
ならば見つからない様に外壁を登るくらいしかない。
どうやって登るか、と考えていると魔法封印魔法陣の知識が浮かぶ。
「強引に魔法が使えるのか……」
思わず声が漏れてしまったが、音遮断魔法も使っているので気づかれてはいない。
そもそも魔法を封印せずに魔力吸収だったとは、情報は大切だなと改めて思う。
ならば土魔法で壁の一部を掴めるように出っ張りを強引に作り、這い登るしかない。
ここは王城を囲んでいる城壁の角だ、塔はその角につくられている。
城の外側に行けば城壁にいる歩哨からは見えない。
周囲を伺いながら魔法を使い城壁を登る。
歩哨が見て無いタイミングをはかり城壁の外側にはりつく。
あとは壁をよじ登るだけだ。もくもくと魔法で取っ掛かりをつくり塔へと近づくと、取っ掛かりが出なくなる。
どうやら魔力吸収魔法陣の効果範囲に入っているようだ、強引に取っ掛かりを作るが、安定せずに思い通りには出来ない。
それでもどうにか部屋のある窓まで登り、その窓から中を見るが既に寝ているのか、誰もいないのか暗くて良くわからない。
だが見張りがいたのだから、誰かしらいるだろうし、だからと言って中に入るわけにもいかず、また思案する。
そうだ光源魔法があったな、あれを部屋の中に一瞬でも使えれば誰かいるかは判断できるかもしれない。
精神を集中して魔法を使う。
部屋の中が一瞬強い光で満たされる。
ベッドの場所がわかったので、もう一度同じことをする。
そこにいたのは第三王子のトラビスだった。
「む、なんだ?」
どうやら二回も光を放ったせいで、目を覚ましたようだ。
「誰かいるのか?」
ベッドから起き上がる音が聞こえ、がちゃがちゃと音がすると、部屋の中に光が灯るのが見える。
急いで登って来たルートを戻る、どうやら東の塔にはいないようだ。
戻っているとトラビスが窓を開け、ランプを外にだし外を確認しようとしているのが見えた。
確かトラビスは下半身が動かないという話だったが、何故か元気に動いている。
これはまずいと思うと、体が勝手に魔法を使う。
「ぶばっ!」
トラビスが風の衝撃で部屋に戻るというか、吹っ飛んだ。
危機的状況になると、スカーレットの思考が漏れるのかもしれない。
この力押しは俺じゃないと思いながら、城壁を降りる。
王城は二枚の城壁に囲まれているが、今は内側と外側の間に降りた。
色々な施設や、城の中にはいらない建物がここにはある。訓練場などがそうだ。
そこを隠れながら西の塔へと向かう。
東の塔と同じように西の塔も外壁から登る。
設置してある窓に近づいてみると、西の塔の時とは違いかすかな光が漏れている。
覗いてみるとリウトガルド団長が机に座り、小さなランプを灯し何かを書き綴っているのが見える。
無事でよかったが、本当に王家の者に捕まっている事実に反吐が出る。
しかし勢いに任せて来てしまったが、今更どうやって話をするべきだろうか。
「誰かいるのか!」
部屋の中から団長の声が聞こえる。
そりゃ剣の達人なのだから、魔力操作に気を取られた俺じゃ気配を消しきれなかったようだ。
「聖女フレイヤの使いです」
もう答えるしか選択肢はないと思い、正直に話す。
「……そうか、入りたまえ」
どうやら許されたようだ、この反応から考えると聖女が娘だと知っているのかもしれない。
窓からするりと入ると、団長が驚愕の顔でこちらを見てくる。
「ま、まさか紅蓮の魔女?」
団長は会った事が無いはずだが、もしかして似顔絵とか出回っているかもしれない。
それが本当なら、マジでアロガンシアはスカーレットの事好きだな……。
自分の国だがちょっと気持ち悪い。
「あっ、はい」
「なぜ侍女服なんだ?」
「仮面舞踏会で侍女と入れ代わり参加しましたので」
確かにスカーレットが着てると疑問が浮かぶかもしれない。
顔を隠して髪を纏めていれば問題無いが、顔を見せていると侍女をやるには存在感がでかすぎる。
「そうか……今日がその日だったのか」
「何か知っているのですか?」
「……知っているから閉じ込められているんだよ、当然その件に対して反対したからだがね」
溜息を吐きながら、椅子に投げやりな感じで座る。
「何があったのですか?」
「それはアロガンシア王国の内部事情を話すことになる……言えないのだ」
「ではリウトガルド団長を人質に聖女が脅されている事を知っているのですか?」
「……そうか、本当にやってしまったんだな、もう戦争は避けられないのか……」
リウトガルドは机に向き直り頭を抱えて俯いてしまった。
「では私にお聞かせ願えませんか、一体何を起こそうとしているかを……」
しばらく無言のまま時が過ぎる。
リウトガルドがこちらに向き直り、目と目が合う。
「貴女は何故こんな事に加担しているのだろうか?」
「聖女フレイヤに貴方を救ってほしいと頼まれました」
「そうか……」
また机の方に向き直り、上を見上げる。
「救われるような人間じゃないのだがな……」
「それは周りが決める事では?」
「そうかもしれんな……」
改めて顔を見合わせてから、今日何を起こそうとしているのかを話始める。
「これは第二王子ギデオンの暴走に近い、今の王は病で臥せっているのだ。最近はニクス教に縋っていたのだが……ギデオンを抑えられないと言う事は病が進行してしまったのかもしれない。
だが第一王子のフェリクスはどちらかといえば穏健派だ。六日目を潰せればなんとかなるかもしれない」
「では、この件が無事に終われば団長も元に戻れるのですね」
「ん? いや、無理だろうな、こうなってしまっては俺を人質にしてザインから情報を引き出す捨て駒になるだろう。潔く死のうかとも思ったが死ねなくてな……今までは迷いが消せなかったが……
いや、そんな事より六日目だが、その日のパーティーは穏健派とニクス教徒の領主が集められている。食事や飲み物に竜種の劇毒を盛るつもりなのだ」
竜種の劇毒、以前俺が盛られていた毒だな、後で調べたが致死量に満たなければ、体が弱りいつまでも毒が抜けない。
毒を盛られたというより、直せない病にかかった感じになる、実際に体験したのだから間違いない。
「それを自国の貴族に盛って何の意味が……」
「ギデオンは跡継ぎ達に声を掛けているのだ。当主が倒れれば、代理か当主になれるのだ。全員では無いが野心ある若者はギデオンについたのだろう、そうでないと実行する意味が無い」
「それでも常軌を逸してます」
もしザインから抗議がありニクス教徒が暴動を起こそうとしても、神輿であるニクス教の領主が倒れれば国内の混乱を最小限になるかもしれない。
だがあくまでも仮定だ、実際はニクス教徒が集まり暴動を起こすかもしれないし、何も起きないかもしれない。
「野心は人を獣にする。親さえも殺し、兄弟さえも殺す。己が王に立ちたいと……特にアロガンシアは権力に弱い。それは権力を持てば誰も逆らわないからだ」
そうかもしれない、だからこそ権力をないがしろにするスカーレットを恐れているのだ。
「その毒は親善大使達にも使われる。当然紅蓮の魔女である貴女にも……毒を盛られた貴女を解毒薬を使って脅す予定なのだ」
「脅すとはどういうことですか?」
「解毒薬を渡す代わりに、この国に残る事だ。自らの意志で親善大使達に残ると宣言させ、聖女がそれを認めれば、この国は安全に貴女を手に入れられる」
結構無茶苦茶だが、本人が残りたいと言っているのだから、何か問題でもあるのか、と言い訳するのか。
そんなこと納得できないだろうが、嫌なら戦って決着つけるのか、と言われれば一人の女性を巡って開戦なんてしないと思う……いや、思いたい。
「なぜそんなに執着するのですか?」
「元々、王が執着していたのだが、こんな事をやるほど執着はしていなかったはずだ。今はギデオンが貴女に執着している。理由は魔法の知識だと思っていたのだが……ここまで色々と画策するのだ、もしかしたら違う理由もあるのかもしれない」
「なるほど……なら安全に解決できるかもしれません。竜種の劇毒の解毒魔法を使えます」
「まさか! いや、貴女なら知っていてもおかしくはないか……」
今日の立食パーティーで何があるのか分かり、対処法も運よくある。
取りあえずはなんとかなりそうだが、団長を救うというフローラの頼みは現時点では難しい。
それに、先ほど不穏な事を言っていた。
「団長は死ぬ気なのですか?」
「……」
答えてくれない事が、結局答えになってしまっていると思う。
そうだとしても、俺に団長を止める言葉が思いつかない。
「もう早く帰りたまえ、娘……ではないな、聖女に忘れてくれと伝えてほしい」
そう言うと机に向き直り、一切こちらを見ない。
明け方になると、ここから逃げる事が出来なくなる。
後ろ髪を引かれるが、一度戻るしかない。
歯噛みしながら部屋の外にでて壁につかまる。
これからやる事は理解しているが、団長の事は棚に上げて置くしかない。
なんとか部屋に戻り窓から入る。中に入るとナタリーが寝ている、フローラはベッドに突っ伏して寝ていた。
俺も今日の事を考えると、一度睡眠をとった方が良いと思い、ソファーで横になる。
「お嬢様」
ナタリーの声が聞こえる。あまり眠れてはいないが、動くのに問題無い程度には眠れたようだ。
「あ~、おはよう……」
「エカルラトゥ様なのですね」
テーブルにいつものように紅茶を準備してくれる。
一昨日に色々とあった手前、ナタリーと会うのは少し気恥ずかしい。
そんな事よりも、ナタリーは大丈夫なのだろうか。
「昨日の仮面舞踏会は大丈夫だったのか?」
「少しだけ頭が痛いですが、きっとこれが二日酔いなのだと思います」
「なにか薬を嗅がされたんじゃないのか?」
「麻酔系の薬品だと思います。意識を混濁させて別室に連れ込もうとしていました」
「何事も無くて良かったよ……」
ナタリーが笑いかけてくれる。
大事にならなくて良かった。
もし本気でスカーレットが助けようとして爆破でもしていたら、きっと親善交流は終わっていたかもしれない。
ナタリーに何かあるよりかはマシだけど、ここまで頑張って来たのだ、平和に終わりたい。
「そうだフローラはどこにいったんだ?」
「フローラ?」
「すまない、聖女フレイヤだったな」
「フレイヤ様でしたらまだ寝ておりますよ。何故いるのかわかりませんでしたが、私が起きた時に横で寝ていましたので、代わりにベッドに寝かせました」
「そうか……」
昨日から神経をすり減らしていたのだろう、ぐっすり眠っているならそのままにしておくか。
しかし何故俺だけ起こしたのだろうか……。
「朝一番にお嬢様にお茶会の招待状が来ております。ブリジット様からです」
第二王女ブリジットからのお茶会のお誘いか、かなり急だから昨日の事がらみかもしれない。
ギデオンの動きを探るのにも使えるし、断るという判断は無い。
ナタリーから招待状を貰う、昼過ぎに迎えに行くと書かれていた。
「昼過ぎに迎えに来るそうだ」
「わかりました、準備しておきます」
ナタリーと会話している声が原因なのかフローラが目を覚ます。
ベッドから体を起こし、自分の周囲を確認している所で目が合う。
「あれ……そういえばスカーレット様のお部屋に来たままでしたね、すみません、待っているつもりでしたが、寝てしまったようです」
「おはよう、良く眠れたかい?」
「あ、おはようございます」
こちらに軽く頭を下げると、ナタリーを見つめる。
どうやら人払いをして欲しいみたいなので、ナタリーに目配せすると、理解してくれたのか隣の部屋へと入っていく。
「それで、父……リウトガルド様は居たのでしょうか?」
「ああ、西の塔に幽閉されていた」
「……やはり捕らえられていたのですね」
「そうなんだが、今日起きる事を団長が知っていた」
「いったい何をしようとしているのですか?」
「立食パーティーの時に竜種の劇毒を参加者に盛り、解毒薬を盾にしてスカーレットを脅すのが目的みたいだ。ついでに自国の穏健派も世代交代させてギデオンの派閥を一気に増やそうとしているらしい」
「まさかそんな非道な事をこの国は考えているのですか!」
フローラは何とも言えない顔で叫んでしまう。
話している俺でさえギデオンの思考経路が異常すぎて不快感が沸いてくる。
「団長の話と、行動を加味するとギデオンのクーデーターと言って良いと思う」
「ああ、フィー様、この罪深い国にどうかお目こぼしを……」
フローラは神に祈りを捧げる。
よほどギデオンの行いに対して恐れを抱いたのだろう。
「スカーレットが解毒魔法が使える。どうにか立食パーティー時に参加者に使えれば、ギデオンの目論見を水面下で止める事が出来る」
「では、最悪な状況にはならないのですね……でもリウトガルド様はどうされるのでしょうか?」
「言葉にはしなかったが、そのまま幽閉されるのを受け入れているようだ」
正直に命を絶つ可能性があると言えば、フローラは耐えられないかもしれない。
今はまだ何もかも推測の域をでない。
「そうですか……もうどうしようもないですね」
フローラが俯きながら呟く。
「明日で親善交流も終わりだ。その後アロガンシアと交渉して団長を引き取る事も出来るかもしれない、あまり悲観しなように」
「はい……」
安心させるために出た言葉だが、きっと団長はザインへはいかないだろう。
一体何を要求され引き取られるのかと考えると、その後平穏に生きていける訳が無い。
「一度部屋に帰ります。従者達が心配していると思いますので……」
フローラは一礼すると部屋から出ていく。
どうしたものかと頭を抱えていると、ナタリーが隣の部屋から出てくる。
「浮かない顔ですね」
「色々とままならなくてね……」
「お嬢様の様に思うように生きれば良いのでは?」
「あそこまで行くと才能だと思う」
こんな時スカーレットならどうするだろう。
きっと強引に魔法で解決するんだろうな、全てを吹き飛ばし、邪魔するものは燃やす。
シンプルだが、それでいいのかもしれない。
全ての人を満足させる回答などないのだし、自身の心に従って動けば後悔も少ない。
「わかった、やりたいようにやってみるか」
「それにお嬢様が関わっているのですから、あまり気になされない方が良いと思いますよ」
「そうか……いくら俺がここで気を揉んでも、明日全てをひっくり返されるわけか……悩むだけ損だな」
「……はい」
少しだけ不承不承という感じで答える。
色々とナタリーも溜まっているのかもしれない。
計算して準備したり、根回ししたり、不測の事態に備えたり、下準備をして、さあどうぞと蓋を開けると何もかも吹き飛ばすが結局綺麗に着地されると、やはり不満が少しくらい出るというものだ。
「じゃあお茶会の準備でもするか」
「そうですね、ゆっくり服などを選びましょう」
そういいながらナタリーがにっこりと笑う。
やがて時間になりお茶会へと呼ばれる。
どうやら庭園で開催するようだ、他の令嬢はいなくブリジットとの差しでのお茶会だ。
ブリジットとは血が繋がってはいるが、あまり会話していない。
それにブリジットが物心つくころには、騎士学校の宿舎に入っていた。
他の兄達とは違い、やわらかい雰囲気の良い子だ。
アリアと仲も良く、時々話を聞いていた。
「スカーレット様、急なお呼び出しをしてしまい、申し訳ございません」
「こちらこそお茶会にお誘い下さりありがとうございます」
互いに挨拶しながらお茶会のテーブルに着く。
侍女が紅茶を用意し、一口サイズのサンドイッチやスコーンなのどスイーツも準備されている。
この急なお茶会の目的は一体何なのだろうと固唾を飲みながら待つ。
するとブリジットがもじもじしながら話し始める。
「スカーレット様は、リオン様の妹様とご親交があるとお聞きしましたが、本当なのでしょうか?」
どうやら昨日の件とはまったく違う方向だったみたいだ。
クローディアがどうしたのだろうか。
「妹のクローディアとはいい友人です」
「そうですか、ではリオン様についてもお詳しいのですよね?」
どうやら今回のお茶会の目当てはリオンのようだ。
ブリジットもお年頃になったという事か。
「そこまで見知っている訳ではありませんよ」
「ですが、お二人が親密そうに会話をなさっているのを何度か目にしましたが……」
「あれは、リオン様が今回のまとめ役ですから、その……私の行動についてお叱りを……」
少しだけ言ってて悲しくなる。なぜ叱られているのかと突っ込まないで欲しい。
それに叱られていたのは俺ではなく、スカーレットなのだ。
「それでも羨ましいのです、わたくしもリオン様ともっとお会いしたかったのですが、それもかないませんでした。せめてリオン様の事をスカーレット様からお聞きできればと……」
「でしたら私が知っている事をお話ししましょう」
「是非お願いしますわ!」
そうしてスカーレットの記憶からキャンベル家の事を引き出しブリジットに伝える。
キャンベル家が水や木魔法に拘り、街すらもそれに則り整備している事などを話す。
クローディアから聞いた、リオンの子供の頃の話などをすると、目をキラキラさせて聞いていた。
「本日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ楽しいお茶会でした」
お互いに謝辞を言いあいながらお茶会は終わる。
王はブリジットの事を気に入っている。きっと第一王女と同じように本人の意思を尊重して嫁ぎ先を選ぶことが出来ると思う。だがギデオンが力を付けすぎると、ブリジットも道具にされかねない。
あんな事を平然と考え、実行するのだ、体裁さえ繕えばなんだってやりそうだ。
しかし昨日のギデオンの件で何かされるかもと思っていたが、どうやら杞憂のようだ。
フェリクスが抑え込んでいるのかもしれない。
だが今のフェリクスにそんな気概が無かったはずだが、もしかしたらフェリクスに昔のような強い意思が戻ったのかもしれない。
部屋に戻り、もうすぐ始まる問題の立食パーティーの事を考える。
今更どうやって解毒魔法をかけていくのか、という部分に気付くが良い案が浮かばない。
一人ずつかけていくのは効率も悪いし目立つ、帰りにかけないと、また飲み食いして意味が無くなってしまう。
それでもスカーレットなら強引にやるんじゃないだろうか。
気にしても仕方が無い、やれることをやろう。
「エカルラトゥ様、お化粧のお時間です」
今日も恐怖の時間がやってくる。自分が自分でない事を強く認識される時間でもある。
タイミング良く精神が入れ替わる俺~近衛騎士エカルラトゥ編~
第十八話㋓ リウトガルド団長の所在(六日目前編) 終了です




