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087 放浪編6 犬族と猫族

 アノイ要塞に帰ると地球人の遠征参加者全員がアノイ要塞司令コマンダー・サンダースに多目的ホールへと呼ばれた。

惑星グラウルへの遠征参加の功績とお礼で表彰されることになったのだ。

僕が無双して指揮系統を破壊し、傭兵さんたちが残りの艦を殲滅、RPで実戦経験のある人達も手際が良く、グラウル領軍がその強さに驚愕したらしい。

なにしろ、援軍に向かったグラウル領軍全艦が通常次元跳躍門(グラウルゲート)を抜けきる前に、地球艦隊によって敵艦隊の殲滅が終了していたのだから。

戦果は地球軍がグラウル領軍を遥かに上回っていた。

艦の数が地球:グラウルで1:3だったことも多大な評価を得た理由だった。


「つまりグラウルの犬共が無能だったということだろ?」


 カプリース領軍のノア司令が嫌味を言う。


「ふん。カプリースの猫共はまともな戦況分析もできないのか。

ああ、怖気づいて戦場に来れなかった猫共にはわからないか」


 それに対しグラウル領軍のハンター司令が嫌味を返す。


「いいかげんにしろ。

ノア殿、あなたの言い方では地球の方々も貶していることになるぞ。

ハンター、遅れをとったのはお前たちの過信が原因だ。自重しろ」


 ノアとハンターの言い合いにコマンダー・サンダースが仲裁に入る。

ノアが謝るでもなくそっぽを向く。

地球人たちも嫌な気持ちになって一気に空気が悪くなる。

アノイ要塞司令が犬族だというのも猫族は気に喰わないんだろうな。


「それでは勲章授与式を行う。おい」


 サンダース司令が悪い空気を払うように話題を換えハンターに式典を進めるように促す。


「はっ。それでは表彰を始める。

敵艦撃墜の栄誉に対しこの勲章を贈る。

帝国5等戦功章、該当者は……」


 敵艦を1艦でも撃墜した者たちには帝国5等戦功章が与えられた。

これは艦隊による共同撃墜にも適用されて敵艦を撃墜した艦隊の所属者全員が勲章をもらった。

遠征参加者の半数はこの理由で帝国5等戦功章がもらえた。


「なお、戦果が無かった者もRP参加5回で同じ勲章を授与する。

この勲章を得れば帝国二級市民と同等の権利を得ることになる。

これから帝国で生活するには持っていて損はないので励んでくれ」


 サンダース司令が補足する。

どうやら勲章を貰うと帝国の市民権を得られるみたいだ。

二級市民というのがちょっと引っかかるけど、貴族が存在する帝国で市民でもない難民の立場というのは、それ以上に危ういものなのかもしれないな。

ブラッシュリップスのみんなもせめて帝国5級戦功章ぐらいは持っていた方が良いのかもしれない。


「次に3艦以上撃墜の者に対しこの勲章を贈る。

帝国4等戦功章、該当者はタカヲ、カミザワ、キリ、ナチの4名」


 おお、タカヲ氏と初心者講習で一緒だったキリさんだ。

タカヲ氏は傭兵団のトップとして個人でも活躍していたようだ。

神澤社長は個人撃破とアシスト――撃墜数1/2相当――を加えてこれ。

社長は自らの専用艦じゃなかったから、火力的な問題でランカーの実力はあまり発揮出来なかった。

僕と艦隊を組んでいればもっと上の勲章がもらえたのに。

キリさんは優秀な狙撃手(スナイパー)だから順当か。

ナチさんは個人傭兵さんでSFOランカーなのか。

彼らの帝国4等戦功章は一級市民扱いだとか。


「次に25艦以上を撃墜した撃墜王(エース)に対しこの勲章を贈る。

なお撃墜数は個人成績で戦艦を含む13、共同撃墜で15だ。

帝国特等戦功章、該当者はアキラ」


 僕の知り合いが一斉に僕に注目した。

ホール内がざわつく。


「28? 冗談だろ?」「ほう。あんな嬢ちゃんが」


 僕を知らない連中もなんか言ってる。

やばい。悪目立ちした。まさか撃墜数を全員の前で発表されるとは思わなかった。

つか僕は男だ。アイドルの時以外はね。


「帝国特等戦功章受賞者は騎士爵を与えられ一番下だが貴族として遇される。

今後はヤエガシ卿と呼ばれることになる」


 なにそれ美味しいの?

ちなみに帝国一等戦功章で貴族ではない騎士扱い。

帝国二等戦功章で騎士見習い。

帝国三等戦功章で上級市民だそうだ。

いつのまにか僕は帝国の階級制度にどっぷり組み込まれてしまったようだ。

僕には面倒事が増えたとしか思えなかった。

「ぐぬぬ」してる人がいると思ったら、オオイじゃんか。

まだ、僕に恨みを抱いているのか?

目立つと妬まれるから嫌なんだよな。

社長がニヤニヤしながら僕の肩をポンと叩いて言う。


「さあ、ヤエガシ卿、帰りましょうかw」


 社長、撃墜数は累計だぞ。どうせそのうち社長も叙爵されるんだから覚えてろよ。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 今日も事務所で愛さんに質問をする。

犬族に知り合いが増えるのと同時に、避けられてるのか逆に猫族との接触が一切ない。

僕らが犬族派閥だと思われたら、猫族にどんな恨みを買うかわからない。

そこを何とかする情報が欲しい。


「ねえ、犬族と猫族が揉めてるのは何が原因なの?」


「種族の成り立ちからライバル関係だからです」


 え? そんな根本的なことから仲が悪いの?


「種族の成り立ち?」


「はい。製造された時から、どちらが採用されるかという競争相手でした」


 え? なんですと? 製造!? 人工生命体とか?


「彼らは製造されたの?」


「彼らは文明が高度化して肉体的精神的に弱っていった帝国人に、強靭な肉体を取り戻すための実験体でした。

いくつかの実験体が作られ、その成功例が犬族と猫族で、彼らはその末裔です」


 え? 実験体? なんだそれは! 遺伝子操作でもしてるのか?


「その採用争いのライバル関係が今も残っているのです」


「そうなんだ」


 根が深い問題なんだな。

それにしても、こんなに情報が解禁されたのは初めてだな。

僕らに教えてはいけない事項もかなり含まれているみたいだけど……。

これが貴族特権ってやつか?



「彼ら犬族猫族の帝国における地位ってどうなってるの?」


 彼らが実験体の子孫なら、あまり優遇されていないような気がするんだよね。

それなのに犬族と猫族がいがみ合ってる。

もしかすると、対立は帝国への不平不満を逸らすための道具なのかもしれないと思ったんだ。


「彼らは民族代表である惑星を所持している星系領主が男爵位を得ているものの、普通の領民は二級市民に留まります。

もちろん戦功を得れば昇格しますが自らの星系と任務地の防衛では昇格できません」


 領主は貴族だけど、獣人の市民階級は下に見られるのか。

昇格差別はないけど、機会がないということか。


「良かった。昇格差別はないんだね。

すると他の身分が気になるな。

二級がいれば一級がいるわけだし、他はどうなんだろう?」


 RPに出た地球人がもらった二級市民の地位はどのぐらいなんだろうね?

それに僕の騎士爵って男爵より下だったよね。


「はい。おおまかに皇族、貴族、騎士、市民の階級があります。

市民は上級市民、一級市民、二級市民に分かれます。

貴族は公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵・准男爵・騎士爵に分かれます。

騎士爵は貴族とはいえ所謂準貴族であり、どちらかというと騎士階級のトップとみなされています。

騎士は上級騎士(騎士爵)一級騎士(一般的にいう騎士)二級騎士(騎士見習い)に分かれます」


「それからあぶれた人は?」


 二級市民も持ってない地球人はどんな扱いになるんだ?


「敵か貧民になります」


「じゃあ、僕達地球人で市民権もない人は?」


「難民です」


 上手く逃げられた。

その難民の扱いがどこなのかわからないんだよ。


「僕ら地球人難民の帝国における地位はどこ相当か聞きたいんだけど?」


「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」


 あれ? 二級市民ぐらいに答えるかと思ってたのに。

ああ、勲章をもらってやっと二級市民なんだから、その下ってことだよね。


「貧民扱いではないよね?」


「今のところそうです」


「ふーん」


 今のところって将来的にはわからないってことか。

このまま難民でいるのは危険かも。

いつまでも難民でいられないとしたら、帝国での階級を上げた方がいいのかもしれない。

そのためには戦功を重ねていけば良いのか。


「そういえば、僕は帝国特等戦功章もらって騎士爵だって聞いたんだけど、ちなみに僕ってどのぐらい力がある貴族なの?」


「それは禁則事項になっており、お答え出来ません」


 あれれ? 一番下の貴族の力がどの程度かって質問が禁則事項?

よくわからないものだな。


「神澤社長は?」


「一級市民相当です」


 相当(・・)か。また含みのある言い方を。

でもこれは答えられるんだ。


「なんで僕のは答えられないの?」


帝室機密(・・・・)に関わる内容のため、お答え出来ません」


「騎士爵叙爵って、そんな大騒(たいそう)なことなのか……」


 禁則事項以外の機密指定って初めて聞いたな。



「誰か()らぬか!」


 僕がまったりと愛さんに質問していると、突然外が騒がしくなった。


「カプリース男爵がニ女、キャロライナ=ナル=カプリース様の御成ぞ!」


 何事かと出て行く社長、僕、菜穂(なほ)さんに、いかにも執事然とした服装の老猫人が名乗りを上げる。

執事の後ろには、あえてアンティークを模した馬車風の車が止まっていた。

その車の扉が開く。

車を降りてきたのは純白のドレスに身を包んだいかにも貴族っぽい仕草の少女だった。

少女の頭には髪の毛と同じ白い毛の三角耳があった。

少女が全身真っ白の中で一際目立っている赤い口紅(ルージュ)の口を開く。


晶羅(あきら)様、初めまして。(わたくし)、キャロライナ=ナル=カプリースと申します。

あなた様の妻として嫁いで参りました。キャリーとお呼びください。末永くよろしくお願いします♡」


「はいぃ?」


 そこにもう一台、馬車風の車が猛スピードでやって来る。

車が急制動で止まる。

御者台から老犬人の執事が慌てて降りてくる。


「しまった。遅れを取ったか! 姫様! (はよ)う!」


 車の扉が開き純白のドレスに身を包んだ犬族の少女が降り立つ。


晶羅(あきら)様、初めまして。(わたし)はマリー、マリアンナ=ガル=グラウルと申します。

あなた様の妻として嫁いで参りました。末永くよろしくお願いします♡」


「えーー!」


「マリアンナ様はグラウル男爵家の長女であらせられる」


 老犬人の執事が補足する。

いきなり押しかけ妻が二人もやって来た。

どうしてこうなった!

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