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078 アイドル編54 RPでライブ2

 ステーションから、あらゆる艦が出撃していく。

僕も管制に従い担当宙域――0-0-M9――に向かう。

ただし緊急発進していく艦のコースを横切るわけにはいかないので、ステーションの下から迂回するように中央付近まで進む。


『社長、そっちは大丈夫?』


 コクピットから外部を表示している全天の仮想スクリーンの正面上部に小窓が開いて社長と通信が繋がる。

この小窓はその通信相手の位置を大まかにAR表示している。

敵艦の情報などと重なる場合は邪魔にならないように半透明化するので安心だ。

今表示されているのはステーションから次元跳躍門(ゲート)を結んだ直線の丁度真ん中、つまり僕たちの担当宙域に位置する場所だった。

艦隊内通信網が確立され通常の会話のように通信が行えるようになる。



「おう、晶羅(きらら)、こちらは全員出撃した。

ライブの時間だ。早く合流するんだ」


 やっぱり社長の様子がおかしい。

慎重さのかけらもない。

大規模攻勢だぞ? ライブなんてやってる暇があるのか?

僕は敵艦隊の規模によってはライブを即時中止にする腹心算で合流を急ぐ。

管制が他の艦を優先して待たされるのが煩わしく、更なる焦りを生む。


「社長! 沙也加さんもいるんだろ? 命大事にだからね!」


 重なっていた小窓に艦隊通信を共有している沙也加さんの顔も表示されている。

彼女はゲームは得意でも実際の戦闘(RP)が苦手で艦を失った経験がある。

なんでこんな時に彼女まで出撃しているんだ?


 次元跳躍門(ゲート)から敵艦隊が侵入して来ている。

次元跳躍門(ゲート)の境界面が夥しい数の波紋で揺れる。

大規模攻勢だ。

ライブだなんて言ってる場合じゃない。


「社長、ライブ中止! いいね?」


「バカな。こんなにお客さん(大艦隊)が来てくれたのに。やるぞ!」


 小窓に映る社長の目が光を失っていた。

なんだこれ? 操られてる? 誰に? どうして?


「そうよ。ミン〇イアタックで敵艦隊をデカルチャーさせるわよ!」


 菜穂(なほ)さんまで目に光が無い。

僕が音響を担当してカラオケを流さなければライブなんて言ってられないはず。


「沙也加、音楽開始」


「はい」


 まさかの沙也加さんが僕に代わって音響を担当しだした。

確かにバックアップは出来る体制だったけど、僕が加入してからは今までそんなことをしたことがなかった。

いや、沙也加さんはVPに出ることもなかったから、出来るという意識が欠落していた。

僕の到着を待たずにカラオケが流れ始める。

なのにメンバーの誰もが僕がいないことを気にせずにライブを開始する。

通信の小窓に映る顔は全員目から光が失われている。


『管制塔、発進許可を! 早く!』


 何か嫌なことが起きる。

そんな予感がひしひしとする。

その時、社長のポケット戦艦が味方(・・)に向けて発砲した。

全周に向けて射出された物体が味方艦の艦体に着弾する。

と同時に物体が着弾した艦の通信網にカラオケが流れる。

それが通信に乗って全使用周波数に拡散されていく。


「社長、何やってんの!」


 僕は社長の暴挙に声を荒らげる。

SFO運営に通信チャンネルは1つと言われたじゃないか!


「わはは。通信ポッドだ。皆、俺の歌を聞け!」


 社長の目が逝っちゃってる。


「いや、あんたの歌じゃないでしょ!」


 思わす突っ込んだが、早くやめさせないと味方にも損害が出る。


『管制塔、緊急事態を宣言する。

LC0079402、キララ、緊急発進する。

全ての艦はコースそのままで維持。動くと当たるぞ!』


 僕は管制官に緊急事態を宣言し緊急発進することにした。

社長たちがもっとやらかす前に止めなければ、この緊急発進のお咎めより拙いことになる。


 僕は対艦レーダーS型で戦場の情報を全て把握、電脳S型で全ての艦のコースと速度情報で未来位置を計算し、それを仮想スクリーンにAR表示する。

電脳に制御を委ね、最大戦速で緊急発進する。

僕の専用艦は光の矢となった。


 目の前の戦艦をニアミス気味で追い抜くと、その先で横切ろうとしていた単縦陣の巡洋艦隊の間をすり抜ける。

高速機動で右に左に上に下に味方艦を避けながら0-0-M9を目指す。

と僕の専用艦の前にイレギュラーな動きをする戦艦が飛び出してくる。

管制塔が指示したコースを取っていない。

目の前に広がる戦艦の後部。

ギリギリコースを変えるが、目の前には戦艦の後部フィンが迫る。

当たる前にビーム砲で撃つか?

その思ったものの一瞬の躊躇が徒となった。


 当たる!


 僕は衝撃を覚悟した。

が、何も起こらなかった。


 ???


 何がどうなったのか一瞬、わからなかった。

今、戦艦のフィンを素通りした?

後方に遠ざかる戦艦の映像がジジジとぶれた気がした。


 僕の後頭部にチリっと電気が走ったような感覚がする。

何かがおかしい。


「ナーブクラック発動、逆ハックをかけろ!」


 その瞬間、全周モニターの映像が切り替わった。

僕が避けて来た味方艦の数々も、大規模攻勢の敵艦隊も何もなかった。

0-0-M9には社長、沙也加さんとブラッシュリップスのみんなの艦がいる。

援軍として来てくれたシューティングドリームもいる。


 そして、社長たちを囲むように謎の艦隊が襲撃体制を整えていた。

僕は仲間を救うために謎の艦隊に対してGバレットを撃ち込んだ。

僕たちを襲撃するなら敵認定でいいよね?

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