056 アイドル編32 綾姫お披露目模擬戦3
続けて僕達は準決勝に挑む。
残弾数は僕の専用艦のレールガンが通常弾-26で残弾74発。侵食弾が-1で残弾19発。
『すてるす』用ミサイルが-2で残弾4発。
菜穂艦のレールガンが-6で残弾68発。
美優艦の艦載機用ミサイルが-4で残弾8発。防宙ミサイルが-20で残弾40発。
紗綾艦も防宙ミサイルが-20で残弾44発になっている。
ダメージのある艦はなし。だが綾姫がなぜか精神的ダメージを受けていた。
次の対戦相手はチームK艦隊。
菜穂さんが僕達のアイコンを掴んで参加艦艇選択画面に入れエントリーを済ます。
戦闘宙域は「ノーマル宙域」にランダム設定される。
ガチの殴り合いステージだ。
「作戦は第1回戦と同じね」
しばらく待つと目の前に数字が現れカウントダウンが始まる。
カウントゼロで目の前の風景が一変し、広大な宇宙空間に放り込まれた。
「よしレーダー起動、レールガン発『ちょっと待って!』」
急にオープン回戦で通信が入った。
『俺達は前の戦いで艦を3艦やられてしまった。そっちの残り艦数がこの後の試合の唯一の希望だったんだけど、残念ながらそっちは全艦揃ってるね。
俺達の残り2艦では戦いにならない。ここは降さ『ちょっと待った~~~!!』』
突然紗綾が回線介入に回線介入返しをした。
『降参するなら時間をちょ~だい』
『え?』
『私達は、アイドルなの。1曲歌わせてちょ~だい?』
『はあ……』
チームKの人は呆然としながらも許可してくれた。
菜穂さんが紗綾にサムズアップしている。
僕達はお決まりの挨拶から始めた。
「こんにちわ♡ リーダーやってます、菜穂です♡」
「笑顔担当、紗綾で~す」
「無口担当、美優……」
「音響担当、晶羅でーす♡」
「武芸担当の綾姫だ」
「「「「「せーの。5人揃ってブラッシュリップスです♡ よろしく♡(……)」」」」」
チームKの人がポカーンとしている。
僕は広域通信機で全回線をジャックする。
新曲のイントロが流れる。
僕達はアバターモードで曲に合わせて歌い踊る。
武装少女による編隊飛行。その位置が目まぐるしく変わる。
サビでビームやレーザーを発砲、光が舞う。
1曲歌い終わると全員で挨拶。
「「「「「ありがとうございました♡」」」」」
ステージが終わるとチームKの人が拍手してくれた。
『素晴らしいステージだったよ。ここまで来れて本望だ。じゃ俺達はこれで降参ね』
『チームK艦隊が降参しました。試合終了。ブラッシュリップス艦隊の勝利です』
システム音声が響き、目の前の映像がエントリー会場に戻る。
いい人達だった。僕達が歌ってる最中に攻撃してもルール上は構わなかったのに。
ありがとうチームK。
「やっと綾姫ちゃんを正式デビューさせられたね」
菜穂さんが感無量という感じで目頭を覆っている。
紗綾も普段はあんなに前に出ないのに積極的に交渉してくれた。
美優は……。うん。カワイイ。
みんな仲良しの良いグループだと思う。
さあ、次は決勝戦だ!
◇ ◇ ◇ ◆ ◆
決勝戦。これに勝てば僕達の艦隊ランクは2ランクアップでDランクになる。
優勝賞金もゲット出来る。16艦のト-ナメントだから副賞も付く。
決勝戦に向けて、艦の状況は準決勝と同じ。
前回は不戦勝に加えて1ステージ歌えるという有難い戦いだった。
そのため消耗品も減らずダメージも無い。
僕達の戦闘時間が正味1曲分だったため、しばしの休憩の後で決勝戦に挑んだ。
次の対戦相手は噴進弾至上主義艦隊。
艦隊名でネタバレしてます。ミサイル艦隊です。
菜穂さんが僕達のアイコンを掴んで参加艦艇選択画面に入れエントリーを済ます。
戦闘宙域は「重力異常と岩礁の複合宙域」にランダム設定される。
「相手はミサイル艦隊でほぼ間違いないだろう。今回の宙域は向こうに有利だ。
長距離射撃は重力異常と岩塊で封じられたと見ていい。
勝利のポイントはいかにミサイルを撃たせないかと、撃たれたらどれだけミサイルを撃ち落とせるかだ。
敵発見が最優先だ。それ以外は隠れてるよ。隠れて『すてるす』で偵察するつもりだ」
しばらく待つと目の前に数字が現れカウントダウンが始まる。
「よし、優勝するぞ!」
「「「「おー!」」」」
カウントゼロで目の前の風景が一変し、無数の岩塊が浮かぶ宙域に放り込まれた。
射撃補正装置で重力場を観測すると至る所に異常がある。
僕は『すてるす』を放出して偵察させる。
光学観測を素早くするも敵艦隊は全く見えなかった。
アクティブ探知は行わない。パッシブ探知のみを行いこちらの居場所を秘匿する。
光学探知されては堪らないので入り組んだ岩塊の影に全艦で隠れる。
時間が経過していく。敵艦隊もこちらを探しあぐねているのだろう。
僕は『すてるす』を目として敵艦隊を探す。
「いた。敵のミサイル艦を視認した。数は2艦。護衛艦もなく2艦で隠れている」
「ミサイル艦自身が囮じゃないの?」
菜穂さんが警戒を訴える。
たぶん当たりだ。
「よし、僕達はこのままで、『すてるす』で奇襲攻撃だ」
『すてるす』を敵ミサイル艦に接近させる。
その時、ミサイル艦から大量のミサイルが『すてるす』へ向けて発射された。
『すてるす』がいくら高機動でも避けられる数じゃなかった。所謂飽和攻撃だ。
『すてるす』が撃墜されてしまった。
「これは射撃補正装置で遮蔽フィールドを見破れることを知っているぞ!」
「「まさか!」」
菜穂さんと綾姫も気付く。
「うん。ミサイル艦といい、射撃補正装置といい、相手はオオイだ!」
偶然か故意か、相手は初心者講習で一緒だったミサイル至上主義のオオイだった。
彼には恨みを買っていた。
「そうか、綾姫を勧誘した戦闘で僕と菜穂さんに気付いたな」
「それで後からエントリーして追いかけて来たってことね」
「そうだと思う。綾姫に気付かせるヒントは、初心者講習の他のメンバーにもヒントとなるのは当然か」
「そうなると私達のことを研究して来ているだろうね」
菜穂さんも綾姫も、敵にオオイがいる危険性に気付いたようだ。
「よし。動かれる前にミサイル艦2艦を攻撃しよう。残り3艦が気になるけど、おそらくミサイル艦を囮にして待ち構えているはずだ」
さてどうする。こちらの手の内を知られているなら、向こうの知らない戦い方をしなければならない。
向こうが知らないというと次元格納庫か。
「よし、1艦出撃させよう」
「「え?」」「何?」「……」
「後でのお楽しみ」
僕は手頃な岩塊を捕まえて次元格納庫に入れた。
僕達の艦隊は敵ミサイル艦が隠れている岩塊の側まで進出した。
僕は次元格納庫からこっそり1艦出して先行させ、単縦陣で後ろに付いた。
艦首に盾を4枚装備した護衛艦だ。その後ろに僕含めて全艦付いていく。
護衛艦、僕の専用艦、綾姫艦、紗綾艦、美優艦、菜穂艦の順番だ。
護衛艦が盾に隠れて進む。それに僕達も隠れる。
敵ミサイル艦が気付いて大量のミサイルを撃って来る。
飽和攻撃だ。
「「任せて」……」
紗綾艦、美優艦がありったけの防宙ミサイルを発射し迎撃する。
突破して来るミサイルは僕が長砲身5cmレールガンで狙い撃つ。
紗綾艦、美優艦もレーザーで迎撃する。
その間に先頭の護衛艦が加速、敵ミサイル艦に突っ込んで行く。
実はこの護衛艦、装甲を貼って艦に見せかけたただの岩塊だ。
岩塊に巡洋艦の装甲板と盾を取り付け、後方にミサイルの推進機を取り付けただけのものである。
それをミサイル艦との衝突コースで突っ込ませただけだ。
敵艦は岩塊を艦と誤認し撃墜可能だと思って攻撃する。
だが、それはただの岩塊だ。
敵艦のミサイルが岩塊を直撃する。隠れていた敵艦もレールガンを岩塊に撃ち込む。
しかし、岩塊は壊れること無く敵ミサイル艦に突っ込んで行く。
「敵狙撃艦は任せて!」
菜穂さんが叫ぶ。
綾姫も対艦刀を展開して敵狙撃艦へ向けて高速機動で突撃していく。
「当たる!」
紗綾が叫ぶ。岩塊が敵ミサイル艦に直撃するところだった。
敵ミサイル艦は岩塊が直撃しミサイルが誘爆、大爆発した。
その爆発に隣のミサイル艦も巻き込まれ爆発する。
残るは敵狙撃艦3艦。
菜穂艦の撃ったレールガンが姿を表した敵狙撃艦に当たる。
僕の30cm粒子ビームと36cmブラスターも敵狙撃艦に突き刺さる。
突撃した綾姫が長砲身20cmレールガンを撃ち込みながら敵狙撃艦に肉薄。
ついに対艦刀で真っ二つにした。
『全艦撃破。試合終了。ブラッシュリップス艦隊の優勝です』
システム音声が響く。僕達は優勝することが出来たのだ。
配信番組のレポーターが優勝インタビューをしようと回線に割り込んで来る。
『ブラッシュリップス艦隊のみなさん、優勝おめでとうございま『優勝記念ライブだ!』』
突然通信にオブザーバー参加の神澤社長の叫びが割り込む。
僕達は頷き合い、アバターモード強制で新曲を歌い踊りだす。
ラストは綾姫が対艦刀で決めて綾姫デビューに相応しい結末となった。




