053 アイドル編29 撃墜者特別回収
昨日の緊急招集では、綾姫共々戦闘後の回収が出来なかった。
今日は撃墜者だけの権利である撃墜者特別回収の時間を利用して、一般公開前に回収をさせてもらう。
綾姫が回収をしたがっていたからね。
事務所の打ち合わせとダンスレッスンはキャンセルした。
新メンバー――綾姫――お披露目前の大事な時期だが、綾姫にとっては借金返済はもっと重要だからね。
なのに今回の緊急招集、死の危険を伴う余裕の無い戦いだったため、直接収入が少なすぎて撃墜者特別回収をやっておくべきだと判断したのだ。
昨日の担当宙域にアヤメ艦と到着する。
普通は回収専用の艦をレンタルするところらしいが、僕はあえて専用艦で来た。
回収物を次元格納庫に入れられるからだ。
綾姫は昨日の獲物を探しに行く。
綾姫自身が長距離射撃で狙撃して中破させた突撃艦だ。
撃墜した艦はステーション管制が軌道を把握し、残骸のデブリも含めて撃墜権のマーキングがなされる。
撃墜権が10日に設定されているのは、10日以降はデブリが拡散し他のデブリと軌道が交差して、権利の所在が曖昧になっていくからだ。
その期間も最大10日という意味であって、権利が絡み曖昧になってしまうと日数が残っていても、ステーション行政府から無効宣言されてしまう。
いちいちステーションの能力を割いて細かいデブリを監視するぐらいなら、誰かにさっさとデブリ回収をしてもらった方がコストがかからない。
だから権利がはっきりしているうちに、権利者が特別に回収する機会が撃墜翌日の正午までに限り設けられているというわけだ。
綾姫が突撃艦を見つけ左腕で掴み曳航を始めた。
システムが完全にダウンしていて武装解除の必要はない状態だった。
デブリはさほど重要な部品でもないので放置するようだ。
他のデブリはいま回収する手間をかけるより、撃墜権付きで回収屋さん達に回収してもらった方が利益になるという判断だ。
綾姫とはここで別れる。
さて、僕の方はビームで撃墜した突撃艦と巡洋艦を回収だ。
1艦目。突撃艦。
中央を大口径ビームで撃ちぬかれて爆発していた。うん。大破だね。
反応炉が誘爆したんだろう。ジャンク確定。
次元格納庫の干渉域内に残骸が入るように接近し、さくっと次元格納庫に入れる。
一体となった残骸が一部でも干渉域に入れば回収が可能なようだ。
容量の上限はまだ不明だが、これなら回収物の大きさは気にしなくていいだろう。
細かいデブリは諦めた。爆発で四方に飛び散っていたからね。
2艦目。巡洋艦。
突撃艦と同じ方向に一緒に流れていた。
右舷をごっそり焼き抜かれていて完全に沈黙していた。
これは左舷側に限っては状態が良いかもしれない。
さくっと次元格納庫に入れる。
細かいデブリは諦めた。ビームで焼けているし。
今後の回収を考えると大口径砲を使うのは考え直さないといけないかもしれない。
続けて回収するのは、外部兵装として使った戦艦の大口径レールガンで撃墜した7艦。
突撃艦3艦に巡洋艦4艦だった。
3艦目。突撃艦。最初に撃ったあの先頭の艦だ。
40cmレールガンの2発中1発目は迎撃に成功し、2発目が前面から当たったようだ。
この突撃艦は上面の武装がごっそり抉られている。
艦体は形が残っていて、高額な反応炉や推進機、主電脳が無事かもしれない。
さくっと次元格納庫へ入れる。
4艦目。巡洋艦。
斜めに機動していたようで、40cmレールガン2発が左舷に並んで当たったようだ。
巡洋艦は3つに分断されて漂っていた。部分的には意外に状態が良い。
さくっと次元格納庫へ入れる。
5艦目。巡洋艦。
左前方から40cmレールガンが立て続けに3発当たったようだ。
2発ずつしか撃っていないのに、どういうこと?
艦橋より前の艦体が3ヶ所も抉られて、まるで後部しか無いように見える。
後部は完品っぽい。
さくっと次元格納庫へ入れる。
6艦目。突撃艦。
40cmレールガンの1発目が右舷側から中央に命中し折れていた。
その折れた後部側に2発目が掠った痕跡があった。
まさか、この2発目が巡洋艦に当たった3発目か?
この突撃艦も部分的にだが状態が良い。
さくっと次元格納庫へ入れる。
7艦目。巡洋艦。
前面中央から40cmレールガンが2発命中。後部まで貫いていた。
反応炉含め主要な機関が全滅のスクラップ状態だ。ジャンク確定。
上面の武装が無傷なのが救いか。
さくっと次元格納庫へ入れる。
8艦目。巡洋艦。
右舷側をこちらに見せて回避行動を取ったようで、艦後部を40cmレールガンが貫いていた。
推進機とエネルギー伝送路が破壊されたのみならば、かなり状態が良い。
反応炉まで損傷していたら金銭的に辛い。
さくっと次元格納庫へ入れる。
9艦目。突撃艦。
40cmレールガンが前面から艦体中央に直撃して後部まで抜けている。
その際、反応炉が損傷し誘爆したようだ。
ほぼ全損のスクラップ。武装の部品がジャンクとして取れるかもしれない。
さくっと次元格納庫へ入れる。
デブリはあらゆる方向に散ってしまっているので諦めた。
空域的にはまだ撃墜権が有効だろうから回収屋さんに任せることにする。
身の危険を感じたため、確かに自重はしなかったが、まさかの計9艦も撃墜していた。
綾姫には、守る自信がないという僕の都合で撤退命令を出していたので、この収益から分配金を出すつもりだ。
それと、ブラッシュリップス艦隊の強化に使うと言っていたステルス艦を個人使用してしまっているので、その代品も検討しなければならない。
今までSFO任せだった査定と売却を自分でやらないといけないな。
とりあえず、次元格納庫に入れた艦を査定するべきだろう。
合計9艦……気が遠くなりそうだ。
ステーションの専用格納庫に戻り、専用艦を格納庫の壁ギリギリまで寄せる。
これで専用格納庫に巡洋艦1艦分のスペースが出来る。
そこへ次元格納庫に入っている今日回収した艦を1艦ずつ出して査定をしようということだ。
早速次元格納庫内のリストを表示する。
「なんだこれ?」
僕は目を疑った。
そこには自動仕分けされた部品の詳細がリスト化されていたからだ。
完品からジャンクまで完璧に仕分けされたリストだった。
しかも『融合修復中』の文字付きで巡洋艦2艦と突撃艦1艦が完品としてリストアップされている。
まさかと思うが、次元格納庫の中で部品を持ち寄り修復しているということだろうか?
そういや前方が無事な艦と後方が無事な艦があったな……。
まさかのニコイチ融合か?
回収した艦の電脳は敵味方識別を変更済みですか。そうですか。
ナーブクラックのような服従状態ではないと。
これなら、そのまま売ることも出来る。至れり尽くせりというやつだな。
まさか次元格納庫までもが自重をしてなかった。
それにしても戦艦と融合してからの専用艦がチート化して来た気がするのは気のせいだろうか?
戦艦のリソースを巡洋艦の大きさで使えるんだから、そりゃそうか……。




