038 アイドル編15 新曲発表会2
アバターモードで配信映像を固定にして定位置につく。
中央右に僕。中央左に一歩下がって菜穂さん。
僕の右後方に紗綾、菜穂さんの左後方に美優。
広域通信機S型を起動し全チャンネルに新曲のカラオケを流す準備をする。
相手艦隊の通信にも介入する完全支配モードだ。
本来は通信をハッキングして偽情報を混ぜるといった用途で使うものだ。
その極悪機能を流用して曲を強制的に聴かせる。
これが使えなければ対戦相手の艦にスピーカー弾を撃ち込む予定だった。
「いくよ」
菜穂さんの合図で新曲のイントロを流す。
そのイントロ中に僕こと晶羅は加入の挨拶をしなければならない。
「はい。リーダーの菜穂で~す」
「笑顔担当、いつもにっこり紗綾だよー」
「ん。無口担当、美優」
「みなさーん。ボクが新メンバーの……え? 音響担当? 晶羅でーす。よろしくお願いしmガチ(噛んだ)」
「「「「4人揃ってブラッシュリップスで~す」」」」
そのまま菜穂さんが歌い出す。
慌てて僕も自分のパートを歌う。
紗綾と美優の二人が前に出てユニゾン。僕と菜穂さんが下がる。
戦闘には全く意味のない機動をしてあたかもダンスをしているように見せる。
端から見ればブルーインパルスのようなアクロバット飛行に見えるかもしれない。
僕達が見せようとしているのは所謂フォーメーションダンスだ。
ここまで対戦相手の艦隊が攻撃して来ないのには理由があった。
相手艦隊はブラッシュリップスのファンが組んでいるヲタ艦隊だったのだ。
神澤社長がブラッシュリップスのスペシャルグッズで釣った八百長と言われても仕方ない出来試合だった。
菜穂さんの歌がサビに入る。
サビのフレーズに合わせてレールガンがヲタ艦隊に放たれる。
ヲタ艦は先を争うようにその弾を奪い合い当たりに行く。
美優が自分のパートでミサイルを撃つ。
「ご褒美キタコレーーーーーーーーーーー!!!」
ヲタ艦が突っ込んで来て爆散する。
それを見たヲタ艦の1艦が俺にレスをくれと言うが如く小さな対艦ブレードを振る。
まるで青のキンブレでヲタ芸を打っているようだ。
次のパートを歌いながら紗綾がそのヲタ艦にビームのレスを雨あられと放つ。
「爆レス最高っすーーーーーーーーーーーーー!!!」
ヲタ艦が昇天する。
歌のパートが来る都度、僕もヲタ艦を撃つ。
豆鉄砲なので被害は無いがヲタ艦は喜んでいるようだ。
僕という新メンバーを受け入れてくれればありがたい。
ヲタの中には排他的な原理主義者もいるそうで、後から加入したメンバーを受け入れないことがあるという。
神澤社長はそこら辺を考慮して穏健なDDを選んでくれたらしい。
曲が終わった。
ヲタ艦は全艦幸せな顔で散った。
僕らも大きな失敗……僕が噛んだぐらいだが……もせずに歌い切ることが出来た。
「みなさーん、接待プレイありがとうございましたぁ♡」
菜穂さんがぶっちゃけた。
「いいのか、それで!」
これってヲタには好評かもしれないけど、SFOプレイヤーにはイメージ悪くない?
とりあえず、笑顔を作って媚だけは売っておこう。
「メンバーが2人卒業して、新人が1人入って4人になっちゃったけど、ここSFOの配信をメインでやっていきま~す。
これからも応援よろしくお願いします♡」
「今日は、ありがとうございましたー♡」
「「「ありがとうございましたー♡」」」
ネカマが板についていく……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「これから反省会ね~」
菜穂さんがメンバーを招集する。
「晶羅ちゃんが噛んだのは置いといて、フォーメーションダンス良かったよ」
菜穂さんが僕をからかいつつ反省会を始める。
そこは突っ込まないでください。
「個々に反省点はなかった?」
その言葉に促されて、紗綾が意見を出す。
「もっと、バーンとか、ドバーンってキラキラに出来ないかなー」
言っている意味がわかりません。
「そうね。もっと大口径砲の発射も入れたいわね。
ミサイルの一斉発射とか、ビーム砲の斉射なんて演出に入れられるかもね」
菜穂さん、わかるんですか!
意見が通って紗綾が満足している。
しかも合ってるんですか!
「ん」
美優もわかるらしい。
「次は接待プレイは見込めないわよ。本気で戦いながらのステージになるわ」
難易度高くて吐きそうです。
「無様な姿は見せられないわ。各自武装強化も含めてレベルアップを目指して」
「「「はい」」」
アイドルも楽じゃない。




