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025 アイドル編2 1人ぼっちの艦隊

 アイドルオーディションの二次試験に合格した。

何かの間違いだろうから、辞退のメールを送っておいた。

僕はアイドルじゃなく艦隊の通信担当に応募したんだ。

だいたい僕は男なんだからね。


 腕輪でアイドルオーディションに関する情報を収集してみた。

ステーションからは直接地球のネットには繋げられないから、ステーション側の募集に関する情報のみだ。

地球のネットに簡単に繋がると、ステーション側の機密情報が駄々漏れする可能性があるから、利便性より安心を取ってクローズドネットワークにしているらしい。


 なので地球での記事は手に入らなかったけど、ステーションのネット記事でもアイドル艦隊の募集は大々的に行われていた。

SFOのプロゲーマーになってアバターを利用すれば、アイドルが宇宙で歌い踊るという事が可能だと神澤社長が思いついたらしい。

模擬戦(VP)映像でコンサートを開きプロモーション活動をしようという目論見のようだ。


 今の御時世、アイドル戦国時代と言われるほどアイドルグループが溢れている。

そこで目立つためには使えるものは何でも使おうという逞しい方針なんだろうね。

TVキー局番組に出れるのなんて、大手事務所出身アイドルか某国民的グループぐらいのもの。

必死に活動してもネット番組か、地元密着型アイドルがその地方局に出るのが良い所だろう。

大変なんだな。どこも。(ここでのアキラは神澤社長の事情は知りません)


 SFOと言えば世界的なオンデマンド放送局を持っているようなものだ。

ゲームリプレイの放送がアイドルのプロモーション映像化するのであれば美味しい。

神澤社長は元々SFOプロゲーマーらしいので、そんな手口を思いついたんだろう。

事務所のアイドル3人グループがSFCをプレイしていたので、なんとかSFOプロゲーマーにし、追加メンバーとして戦力になる2人を現地調達しようということらしい。

ほら、やっぱり女性アイドルグループだ。


 通信担当は、その芸能活動の音響スタッフということだ。

同時に募集していた通信担当ののエントリーシートが、どうしてアイドルオーディションに混ざったんだろう?

早速断っておいて良かった。



◇◇◇◇◆



 さて今日は行政府まで行ってミーナに相談をするつもりだ。

1人艦隊が成立するのか、拿捕した敵艦を僚艦として使えないのかというのが相談ポイントだ。

低武装の専用艦で多数の艦と戦うのは不本意だが、無人艦が利用できれば戦えないこともない。

そこで少しでも善戦して名を売れれば、他の艦隊に入れてもらえるかもしれない。

勝てなかったとしても仮想空間のシミュレーター上のことなら、例え轟沈されても艦に損傷は残らない。

負けて元々なら是非とも参加してみたい。


 僕は腕輪を使ってステーションの行政区に転移した。

行政塔に移動し受付でミーナを呼んでもらう。

ついでに談話ブースを借りておこう。


 ミーナがやって来た。


晶羅(あきら)様にゃ。(にゃに)か用かにゃ?」


 いつものようにミーナが聞いてくる。


「相談したいことがあるんだけど。談話ブースを取っておいたからそっちでいいか?」

「秘密の(はにゃし)か? いいにゃ」


 ミーナは何か察したような顔をすると談話ブースに向かう。

周りを警戒する素振りをしてミーナが談話ブースに座る。

そこまでしなくてもいいんだけど、微笑ましいから問題ない。

僕もちょっと乗って神妙な顔つきをする。


「実は」

「(ゴクリ)実は(にゃん)にゃ?」

「艦隊のことなんだけど……」

「艦隊がどうしたにゃ?」

「1艦でも艦隊名乗っていいのかな?」

「にゃ? それだけ?」

「いや、それだけじゃないんだけど……」

「やっぱり、(にゃに)かにゃ?」


 ちょっと勿体ぶってみる。


「無人で艦を動かす事はできるの?」

(にゃん)だその普通の質問はーーーーーーーーーーー!」


「からかってごめんなさい」


 ちょっとふざけ過ぎたようだ。

ミーナがちょっと怒った感じで説明してくれた。


「艦隊は1艦でも組めるにゃ。

ただし個別デュエルにゃら相手によっては1対多で戦うことを強要されても文句は言えにゃいにゃ。

模擬戦トーナメント(VP)にゃらば、艦の数合わせでNPC艦を利用できるにゃ。

このNPC艦が無人艦にゃ。艦の電脳が制御するからアバターも居るにゃ」


 電脳が制御していてアバターがいる艦なら使えるのか。

僕は拿捕された敵艦が使えることを期待してミーナに聞く。


「もしかして拿捕した敵艦をそのNPC艦として使うことが出来ないか?」


 ミーナは記憶を探るように思い出そうとしている。


「敵艦の電脳はこちらの言うことを聞かないにゃ。無人艦として利用するには電脳を屈服させてこちらの制御下に置く必要があるにゃ。

それが出来るのはステーションの技術工廠だけにゃ。それに拿捕した敵艦を無人化して制御下に置いても模擬戦トーナメント(VP)には使えにゃいにゃ」


 これは良いことを聞いた。

艦隊は1艦でも組める。

個別デュエルに於いては対戦相手によって1対多を強要される。

模擬戦トーナメント(VP)に於いては数合わせでNPC艦を利用できる。

たとえ無人艦を僚艦に出来ても模擬戦トーナメント(VP)では使用できない。


「ただし、それはシミュレーションの仮想空間(にゃい)のみにゃ。実戦なら制御下の無人艦は利用できるにゃ」

「いや、模擬戦トーナメント(VP)で出来ること出来ないことがわかって助かった。ありがとうな」

よし、これで1人ぼっちでも艦隊が組めるぞ。



◇◇◇◆◇



 僕は初心者向けの模擬戦トーナメント(VP)にエントリーすることにした。

目標は僕の専用艦にNPC艦2艦を加えた3対3のトーナメントだ。


 現在エントリー申請可能なのは任意クラスと初心者(ビギナー)クラスがいくつか。

任意クラスとは「俺達に勝てるつもりならかかってこい。誰の挑戦でも受ける」という自信の有り余っている艦隊への挑戦受付だ。

誰でもなのでビギナーでも挑戦可能だが、これは敗者が勝者に装備を譲渡する契約の賭け試合でありリスクが高すぎる。

しかもハンデ無しだから、こっちが1人なら単艦(ぼっち)で戦わなければならない。

弱いのにハンデ無しなんて無謀な挑戦としか言えない。却下だ。


 ビギナークラスは細かい条件付けがしてある。


「R18 野球拳ルール? なんだそれ?」


 IRアイコンをタッチして「野球拳ルール」の詳細を見る。


『野球拳ルールとはダメージ時にアバターの装甲が脱げていくことを使ったルールです。

男性も女性アバターになり全裸になるまで戦ってもらいます。

女性の参加も自由ですが、全裸にされても文句を言わないでください。

プレイ映像は無修正で配信されますので覚悟してください』


 エロ動画配信だった。

お互いにエロを晒すマッチポンプ。

しかもネカマだから恥ずかしくないんだからねという、ちょっと勘弁してほしい性癖のものらしい。

艦を強く育てることより配信で儲けようという方向で進化した徒花だろう。

不注意な被害者が若干名出ていそうだ。スルーで。


 だが、当然まともな模擬戦トーナメント(VP)も組まれている。

ビギナークラスでも出場艦隊のランク分けがされていて細分化されているようだ。

Gランクから始まり優勝で1ランク上がる。

それまでは同じランクの模擬戦トーナメント(VP)にしか出れない。

つまり優勝出来なければずっとGランクということだ。

ランクが高い模擬戦トーナメント(VP)ほど賞金が高い。

1勝で得られる賞金もあるが、優勝しなければ大金は稼げないってことだ。


 ちょっと待て、少なくとも優勝3回Dランクにならないと大きな大会には出られないみたいだぞ。

さすがにGランクの模擬戦トーナメント(VP)は開催回数が多いから次々に挑戦すればいいんだけどね。

1つの模擬戦トーナメント(VP)が8艦隊による勝ち上がりだから、3回勝たないとならない。

こちらの戦力はNPC艦だけだから、2戦目3戦目は厳しくなる。


 とりあえず、ぼっち艦隊で参加して感覚を掴もう。

全7試合が1日で行われるから、もしさっさと負けたなら余った時間でデブリ回収でもしよう。

負けて元々。デブリ回収と1試合勝ち賞金を積み上げていこう。

もし借金返済の督促が来てもプリンスに頼も(ゴネよ)う。

奴が借金返済の不公平契約を結ばせたんだからね。

艦数の少ない明日の試合にエントリーしておくか。

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