022 エピローグ
1億Gの借金を抱え、行政府の命令でリアル・プレイ所謂実戦に参加しなければならなくなった。
どのような頻度で、どのような現場で、どのような敵と戦わなければいけないのかは全くわかってない。
だが借金を返済するまで僕は行政府の命令のまま命を賭けて戦わなければならないのだ。
生活のためお金を稼ぐ。そのためにSFOでプロゲーマーをする。
良い考えだと思ったのだが、その結果は命がけの宇宙戦争への参加だ。
どうしてこうなった……。
欲に目が眩んだ結果だというのが嘆かわしい。
未だ姉貴とは連絡が取れてない。
それに姉貴が1億Gも持っているわけがない。
連絡が取れてもこの借金じゃ助けてもらえないだろう。
1億Gも持っていたら姉貴も遠征になんか参加しないだろうからね。
自分の尻は自分で拭かなければならない。
命がけの戦場……僕にやっていけるのだろうか?
相談できる相手もいない。
安全なヴァーチャル・プレイで稼ごうにも一緒に艦隊を組んでくれる仲間もいない。
僕はここでもまだぼっちだった。
◇◇◇◇◆
『緊急招集! 空間異常警報発令!
ビギニ防衛艦隊及び防衛クエスト参加艦艇は防衛配置にて待機せよ!』
僕の腕輪から緊急招集のサイレンと共に放送が流れる。
行政府の事情聴取から開放されて数日後、あの契約に基づく緊急出動命令が早速発令された。
僕は否が応でもなく戦場へと引き摺り出されることになった。
「随分と早い招集だな……まだ心の準備が……」
自宅で寛いでいた僕は、慌てて自宅最奥部にあるエレベーターに乗ると階下の格納庫前室に降りた。
まるでスーパーロボットアニメの発進シーンみたいだ。
格納庫前室から待機所に入りパイロットスーツに着替えると専用艦のCICに入りコクピットに座る。
僕の脳がナノマシンを介して艦の電脳と直結する。
すると目の前に仮想スクリーンが開き、各種情報が表示される。
まず目につくのが艦の状態所謂諸元だ。
『AKIRA』
艦種 艦隊旗艦
艦体 全長230m 巡洋艦型 2腕 次元格納庫
主機 対消滅反応炉G型(15) 高速推進機D型
補機 熱核反応炉G型(6)
兵装 主砲 長砲身5cmレールガン単装1基1門 通常弾 100/100 特殊弾 20/20
***粒子ビーム砲単装1基1門 (ロック)
副砲 15cm粒子ビーム砲単装1基1門
対艦刀 30m対艦刀【**】
対宙砲 10cmレーザー単装4基4門
ミサイル発射管 D型標準2基2門 最大弾数4×2
防御 耐ビームコーティング特殊鋼装甲板(盾D型相当)
耐実体弾耐ビーム盾E型 1
停滞フィールド(バリヤー)D型
電子兵装 電脳S型 対艦レーダーS型 広域通信機S型 戦術兵器統合制御システムS型
空きエネルギースロット 3
状態 ***粒子ビーム砲使用不能
長砲身5cmレールガンの弾体はMAXまで補充されている。
それにしても特殊弾*バレットとは何なのだろう?
撃ってみていいかな? 撃っちゃおうかな?
またMAP兵器だと僚艦を巻き込みかねないので時と場所を選ぼう。
ミサイルも8発搭載済みだ。ミサイル発射管は2門しかないが、次発装填で各4発続けて撃てる。
状態を見ると相変わらず謎粒子が不明なため、***粒子ビーム砲が使用不能だ。
このMAP兵器が使えれば楽に戦えるだろうに。
僕は溜息をつくと格納庫の空気を抜いて格納庫前の扉を開く。
目の前には満天の星。宇宙空間だ。
『LC0079402、アキラ。発進準備完了!』
僕が発進準備完了を宣言すると、管制室から配置情報と航路が送られてくる。
僕の配置は最終防衛ラインの一画のようだ。
ここまで行政府からもらったマニュアル通りだ。
LCは軽巡洋艦、その後の番号は専用艦固有の登録番号。
加えてゲーマー名で艦を識別し管制登録する。
『敵艦隊の次元跳躍門システムへのアクセスを確認。介入警報!』
『LC0079402、アキラ。発進せよ!』
管制官の指示の元、僕は専用艦を発進させる。
管制室の指示による速度で、指示された航路を正確にとれば他の艦と衝突する危険はない。
というものの目の前を戦艦が横切って行くのには肝を冷やす。
数千の艦をぶつからないように、しかも最速で配置するために管制している管制官には脱帽だ。
しかも個々の艦の発進準備が完了し次第リアルタイムで管制しているのだから恐れ入る。
その神業的な管制に従って、僕の専用艦は最終防衛ラインの持ち場に着いた。
『LC0079402、アキラ。持ち場に着いた』
『こちらHC0003559、タカヲだ。このエリア指揮官を任されている。
アキラ、お前は俺の指揮に従え。
ようこそ。ここはエリア51。地獄の一丁目だ』
僕の報告と同時に持ち場のエリア指揮官から通信が入り、仮想スクリーンの小窓にタカヲ氏の上半身が映し出される。
何やら不穏な言動もあったけど、とりあえずスルーしておこう。
そして次々と僚艦となるメンバーの小窓が開き顔が映される。
総勢16名の艦隊だ。
『ここは最終防衛ラインの一画だ。まあ滅多に敵はやって来ない。
だが、ここまで敵艦に侵入されたら何としてでも撃沈しなければ、後ろの惑星ビギニに被害が出る。
それを命がけで防ぐのが俺達の仕事だ。手段は選ぶなという上の命令だ』
それって体当りしてでも撃沈しろってことですか?
ここを任されているのは、どうやらSFO参加者でも曰くつきの連中のようだ。
僕は1億Gの借金持ちだし、タカヲ氏は戦傷で右腕が無い。
何人かは今もアルコールを摂取している様子だ。
脳波コントロールだから腕の有無ぐらいは操縦に関係ないが、アルコールは脳波に影響あるよね?
ここに集められた艦の持ち主はそんな連中ばかりだ。
彼らは自らを”傭兵”と呼んでいた。
地獄の一丁目とはよく言ったもんだ。
『おい、坊や。お前は刀で戦うつもりか?』
『ゲラゲラ。最終防衛ライン向きだなw』
『一応15cm粒子ビーム砲もあります』
『ケッ。そんなのここまで来るような頑丈な敵艦には通用しねーよ』
『次はミサイルを大量に抱えてこい。まあ次があればなw』
なんて戦場なんだ……。
ここには荒くれ者しかいないようだ。
『こら。新人をいじめるな。侵入警報だ。次元跳躍門で始まったようだぞ』
タカヲ氏の指摘で次元跳躍門方向を見ると、次元跳躍門から敵艦が次々と侵入して来ていた。
次元跳躍門の次元境界面が波打ち、そこから敵艦が侵入して来る。
その波紋が丸い次元境界面のそこかしこで起こっている。
前衛打撃艦隊が侵入して来た敵艦に向けてレールガンを撃ち込み撃墜していく。
前衛打撃艦隊は次元跳躍門の次元境界面から出てくる敵艦を、側面から狙う位置取りをしているため一方的に狙撃していく。
強行突破した敵艦が、僚艦の侵入支援で前衛打撃艦隊に向かっていく。
その敵艦へ向けて前衛打撃艦隊の護衛艦群がビーム砲を撃ち込み撃破する。
前衛打撃艦隊は常に前方の敵艦を相手にし、撃ち漏らした敵艦はスルーしている。
前衛打撃艦隊の位置取りにより、次元跳躍門直前の空間には味方の防衛艦隊はいない。
そこは前衛打撃艦隊の狩場だからだ。味方艦がそこにいては攻撃の邪魔になってしまう。
その狩場を突破した先に中衛迎撃艦隊が待ち構えている。
そこへ至った敵艦は高速回避運動を行い中衛迎撃艦隊と格闘戦になる。
ビーム砲の光条やミサイルの爆発がそこかしこで散見される。
「あれが突破されたら僕達の出番というわけか……」
◇◇◇◆◇
『野郎ども! 俺達の出番のようだぞ』
僕達の持ち場エリア51に敵艦が侵入して来た。
強靭な盾艦の背後に隠れて数艦で突入して来る。
『よし。野郎ども! 殺っちまえ!』
「はい?」
先ほどタカヲ氏には指揮に従えと言われたはずだが、タカヲ氏による作戦指揮は無かった。
気心の知れた仲間なら阿吽の呼吸で戦えるんだろうけど、僕にはそれは無理だ。
僕は邪魔にならない位置で傍観するしかなかった。
僚艦からミサイルが敵艦隊に撃ち込まれる。
慌てて僕もミサイルを撃つ。
全16艦からそれそれ複数発射されたミサイルが飽和攻撃となり敵艦隊に向かう。
敵艦はレーザーで迎撃、ミサイルが撃墜され火球となる。
だが、そのミサイルの爆発を煙幕にして僚艦が突撃していく。
敵防宙用小型艦がミサイルの直撃を受け爆散する。
僕もビーム砲を撃つが最前列にいる盾艦に阻まれ有効弾を出せない。
僚艦が爆煙に隠れ盾艦の側面にまわりビーム砲を撃ち込む。
一方、タカヲ氏の重巡洋艦が盾艦の正面にまわり大口径ビーム砲を撃ち込む。
盾艦に肉薄した僚艦も一斉にビームを撃ち込み、ついに盾艦が撃沈された。
「僕は何も出来てないじゃないか……」
僕が歯噛みしていると盾艦の後ろから敵巡洋艦3艦が飛び出して来た。
四方に向けてビームを撃ちまくっている。
盾艦を排除したことで、単純なビームの撃ち合いとなっていた。
しかし味方16艦に対して敵は3艦。圧倒的に有利だった。
敵艦は高速機動でビームをやり過ごしながら突破を図る。
反航していた僚艦が反転するも一瞬置いて行かれる。
正面に位置しているのはタカヲ氏の重巡洋艦のみ。
タカヲ氏の重巡洋艦が大口径ビーム砲を撃ちまくり敵艦の足を止める。
そこへ反転した僚艦が追いついてビーム砲を撃ち込んでいく。
敵艦は停滞フィールドが強力なタイプのようで軽巡洋艦クラスのビーム砲を弾いてしまっている。
有効なのはタカヲ氏の重巡洋艦の主砲ぐらいのもので、軽巡洋艦クラスのビーム砲では近接して撃つ以外に方法が無い。
すると後方から大口径レールガンが最後尾の敵艦に撃ち込まれた。
片目にアイマスクをした傭兵さんの艦だ。
この一撃により敵艦の連携に穴が出来た。
敵艦の砲塔が向いていない死角から僚艦達が接近しビーム砲を撃ち込む。
とうとう2艦目の敵艦が撃沈された。
そうなると残り1艦は悲惨だった。
周囲からなぶり殺しのようにビームが降り注ぎ、最後にタカヲ氏の重巡洋艦の主砲によりトドメを刺されて敵艦は轟沈した。
『よし。各自好きに回収しろ!』
タカヲ氏が言うが早いか僚艦達が獲物に群がった。
共同撃墜なので報酬も共同というか早い者勝ちのようだ。
僕は何も出来なかった自覚があったので回収には参加せず、遠巻きに見ているだけだった。
僕のリアル・プレイ初戦は武器の貧弱さで役立たずで終わった……。
と思ったところ、敵盾艦の残骸から何かが飛び出して来た。
大きな残骸は後で曳航し山分けするつもりだったので、僚艦達は盾艦にはノータッチだったのだ。
これに気付いたのは僕だけ。なんとかしないと。
僕は咄嗟に対艦刀を展開すると飛び出して来た物体とすれ違う。
すれ違いざまの対艦刀は物体の航路上を遮っている。
ガツンという衝撃と共に対艦刀は物体の中半まで切り裂き折れていた。
そのまま沈黙した物体は全長100mほどの敵小型戦闘艦だった。
「うわー! 対艦刀が!!」
『危ねー。アキラよくやったな。
そいつに突っ込まれていたらビギニの地上に大穴が空くところだったぜ。
そいつはお前の手柄だ。全部お前が回収しろ』
『ちくしょう! 坊や、上手くやりやがったな』
傭兵さん達の嫉妬の目が突き刺さる。
偶然とはいえ僕は最後に敵艦1撃墜拿捕という戦果を上げた。
対艦刀全損という犠牲のおかげで……。
対艦刀、高かったのに……。買い直しは絶望かな……。
この艦はいくらだろう。借金が消えるかな?
僕の異世界借金生活が続く。
戦闘シーン他をちょっと加筆しました。




