019 修行編19 遭遇
前話で特殊鋼の重さに金属の比重を入れるのを忘れてました。
10m✕10m✕10mで1000tじゃ水です。
特殊鋼はおおまかに金より重い比重20で5m✕5m✕2mで1000tと訂正しました。
小惑星から採取した鉱物は特殊鋼装甲板と同じ成分だった。
それが売れて1日で180万Gの収入を得た。
ギルドでも敵艦の残骸が集まって圧縮した核が重く高重力であったために、周囲に岩塊が集まって出来たのではないかという推測に至った。
その核の推定含有量が40万t。
昨日採取出来た鉱物はそのうちのたかだが1,000tにすぎない。
これは、このペースで採取し続けると400日かかるということだ。
ペースアップが必要だ。
まずは外側の岩塊を剥がしてしまおう。
そして露出した核を曳航可能な大きさに切断して、そのまま持ち帰ろうと思う。
だが、格納庫の容積的には楽に入る大きさでも、実際には重すぎて運べる量には限度がある。
重い金属のため5m✕5m✕2mぐらいなのに1,000tもあるのは誤算だった。
切り出した核を曳航するために人を雇うべきかもしれない。
◇◇◇◇◆
『目標宙域に接近します』
悩んでいるうちに自動操縦で小惑星のあるフリー回収宙域に到着した。
周辺の回収屋さんを把握するためにレーダー及びセンサーで広域探査を行う。
把握済みで放置しているデブリをリストアップするように電脳に指示する。
そのデブリを仮想スクリーン上から除外し、自らが出してしまったデブリをチェック出来るようにしておく。
鉱物採取時にデブリが出たとしてもレーザーで処分するためだ。
これで周囲の回収屋さんへ迷惑をかけないで済む。
ふと見ると仮想スクリーン上に赤い警告を纏ったデブリがあった。
「ん? なんだこれ?」
それは昨日は存在していなかったものだった。
「ケイ素化合物? ガラスの塊ってこと?」
僕はそれが気になって専用艦をデブリに接近させていった。
それはデブリではなく、僕が採取登録した小惑星に有線で繋がった探査プローブだった。
「まさか、あの特殊鋼装甲板は敵艦のもの?」
そのデブリのガラスの中に光点が灯り、こちらに向いた。
「やばい! 生きてるぞ!」
僕は専用艦を緊急回避させジグザグに機動させた。
僕は後悔した。特殊鋼装甲板があったからには敵艦の存在を疑うべきだったからだ。
ここはフリー回収宙域。つまり敵との交戦があった場所だ。
敵の存在はその残骸を回収しているんだから認識していた。
でも自分の仕事はデブリ回収や鉱石採取だからと、敵の危険性を失念していた。
まさか、ただの鉱石採取装備で敵と遭遇することになるとは思ってもいなかった。
「戦闘があった場所なんだから、まんま危険宙域なんだよなぁ」
僕は独白しつつ敵の動きを注意深く観察した。
探査プローブはこちらの動きを追って向きを細かく変えている。
だが、本体と思われる小惑星の中身は動く気配が無い。
小惑星の高重力は偽装のために敵艦が重力場を発生させ、岩塊を吸い付けていたためなのだろう。
敵艦は昨日、僕に自らの装甲板を切断されても動かず岩塊を纏ってじっと隠れていたのだ。
だが、さすがに今日も装甲板を切り取られるわけにはいかないと探査プローブを出したのだろう。
僕に対する警戒。今後の展開によっては敵艦も対応を変えてくるつもりか。
「でも、もしかして死にかけじゃないのか?」
昨日がっつり装甲板を切り取ったのに反撃を受けなかった。
レーダー波も出ていないし、どうやら受動的探査でしかこちらを把握していないようだ。
僕はいつでも動けるようにして専用艦を止めると、小惑星の核に精密探査をかけてみる。
「これで敵がアクションをおこしたら撤退するしかない。
せっかくのボロ儲けが!」
探査結果は核の内部にエネルギー反応あり。
つまり動力があるという結果だった。
精密探査のエネルギー波は感知しただろうに、敵からのアクションは未だ無い。
だが、探査プローブはこちらを常に視界に捉えているようで、隙を伺っているだけなのかもしれない。
角度や射程距離によっては敵の武器の攻撃圏内に入ってしまう可能性もある。
僕は専用艦の左腕に盾を装備すると右腕のドリルを前にしてレーダーを切る。
レーダーを切ることで受動的探査から逃れられ、敵の目は探査プローブの光学観測装置だけになるはずだ。
でも、こちらも敵が見えなくなるわけで、ドリルの先を映すカメラを頼りにして敵の岩塊に接近するしかなくなる。
条件は同じだが動けるだけこちらが有利だろう。
今の僕の専用艦は、岩石採取装備で武器は使用不能、せいぜいデブリ掃除用のレーザーしか持っていない。
懸架式ミサイル発射装置もミサイルそのものを搭載していない。
そんな僕の専用艦に出来るのは、これぐらいのものだ。
左腕の盾に隠れるようにして右腕のドリルを前に出して慎重に接近する。
やっぱり敵は動かない。
そうこうするうちに探査プローブの警戒ライン内側に入り込む。
敵の岩塊とは有線で繋がっているから、この線を切ってしまおうか?
ケーブルを摘んでレーザーで切れば最悪でも探査プローブを回収できる。
いくらになるかはわからないけど、敵艦発見の証拠にはなるだろう。
「相手の目を完全に潰すことが出来るし、一石二鳥かもしれないな」
僕は悩んだ。図らずも昨日、敵艦の艦体から特殊鋼装甲板を切り取った行為は立派な敵対行為だ。
昨日は敵艦も隠れることを優先し、こちらを見逃してくれていたのだろう。
なのに、再度こちらが手を出せば、敵艦も黙っていられなくなり攻撃されるということも有り得る。
「敵は動かないのか? 動けないのか? こんな所で命をかけるためにプロゲーマーになったんじゃないんだよなぁ」
だが、このおそらく敵艦を手に入れられれば報酬はとんでもないことになるだろう。
そもそもプロゲーマーになったのは、生活のための収入源を得るためだ。
身の危険を晒しても払って余りある報酬が目の前にある。
「プリンスには悪いが、これで契約満了まで遊んで暮らすのもいいんじゃないか?」
この時の僕は、あまりにも安易な考えに囚われてしまっていた。
まさか、この後あんなことになるなんて……。




