018 修行編18 鉱物採取
昨日のフリー回収による艦の成長は無かった。
前回前々回の回収クエストでは、デブリ回収で手にした鉱石や装甲板屑で艦の全長が10mずつ伸びていたのだが……。
どうやら回収量やデブリの質によっては艦体伸長は起きないようだ。
今日は昨日みつけた小惑星を削って装甲板の原材料となる鉱石採取を行う予定だ。
小惑星は長径約500mのジャガイモ形で推定体積0.02立方km。
非破壊探査で得た小惑星内部の情報によると中心が純度の高い鉱物の塊らしい。
本当に中心まで鉱物の塊ならば埋蔵量は推定40万tもある。
重力の強さからも核が巨大な重金属の塊であることは間違いないだろう。
僕はてっきり鉱石から金属を抽出する必要があると思っていたのに丸々インゴットらしい。
破損した特殊鋼装甲板ならリサイクルで1tあたり1,000Gで売れる。
この鉱物は合金ではないだろうから原材料と考えて1/10の値段だとしても4千万Gか。
とらたぬで笑いが込み上げてくる。
良いものを見つけた。
◇◇◇◇◆
僕は意気揚々と昨日のフリー回収宙域でみつけた小惑星へ鉱物採取にやって来た。
この小惑星から鉱物を得るには外側に集まった岩石を剥がして核となっている鉱物を取り出す必要がある。
そこでドリルの出番ですよ。
小惑星の周囲に穴を開けまくって割り、アボカドの種ように核を取り出そう。
よし、地道な作業だががんばろう。
僕は作業腕の右腕にドリルを接続すると小惑星に穴を開け始めた。
周囲にはフリー回収で集まった回収屋さんの作業艇がいる。
デブリをバラ撒いたら怒られてしまう。
僕は専用艦の停滞フィールドを広げてドリルが出す削りカスを捕まえるように配慮した。
ドリルは順調に穴を開けていく。
だが、小惑星に比べて穴の深さが浅すぎる。
小惑星は横幅でも200mはある。
ドリルで開けられる穴の深さはたかだか5mぐらいだ。
拙い。腕が短すぎて核まで届かないぞ。
せっかくお宝が目の前にあるのに手に入れることが出来ない。
これは拙い。早く何とかしないと採取登録が解除されてしまう。
僕は慌ててネットショップを検索した。
採掘用で検索すると小惑星を割るための装備が表示された。
主流は爆薬らしい。
小惑星に穴を開け、そこに爆薬をセットし爆破。その爆発力で小惑星を割る。
これは小惑星を小さく割って鉱石を採取するための方法のようだ。
僕が使うなら小惑星をぐるっと一周する穴を開けて、そこへ爆薬をセット。
その爆薬を同時に起爆して小惑星を割るという感じだろうか。
だが、この手は使えない。
爆破の時に出るデブリが周囲の回収屋さんの迷惑になる。
安全な場所まで小惑星を動かそうにも、相手が巨大すぎて僕の専用艦じゃ動かせるわけもない。
それに爆薬はお金がかかりすぎる。これは無理だ。
次に表示されたのはミサイル。当然却下。
次は昔からある楔を打って割る方法。
これは小さな岩石には有効だが小惑星相手はどうかと思う。
そして最後に表示されたのが対艦刀。
これでぶった斬れということか。
もしかして一番現実的なのはこれか?
しかし昨日回収したデブリの売上では予算が足りないぞ。
15cm粒子ビーム砲を売って対艦刀を買うか……。
とりあえず他店の出物を検索してみるか。
◇◇◇◆◇
対艦刀を手に入れた。
また即日現地配達をしてくれるマッコイ商会にお世話になってしまった。
15cm粒子ビーム砲は担保になった。
小惑星から鉱物を採取して売り、現金を手に入れられれば手放さなくて良いが、ダメなら現物を差し出さなければならない。
期限は明日まで。一部でいいから、なんとしてでも鉱物を手に入れたい。
対艦刀の装備には艦にちょっとした改修が必要だった。
対艦刀の柄頭を艦体に接続する必要があるのだ。
そこを支点として対艦刀を展開し、腕で柄を支える形が対艦刀を持つ基本姿勢になる。
その時、対艦刀は刃を前方に向け艦から横に張り出す形となる。
このまま対象物の横を飛び抜ければ対艦刀でぶった斬ることが出来るというわけだ。
さすがマッコイ商会。簡単に改修をしてくれた。
だがエネルギースロットが足りないので15cm粒子ビーム砲へのエネルギーを切った。
とりあえず採取中は使わない装備だからね。
「よし、これで小惑星を斬り刻んで鉱物を採取するぞ!」
僕は対艦刀を展開した専用艦で小惑星を斬り刻み始めた。
対艦刀は刃渡り30m。
小惑星の周囲をぐるっと一周して切れ目を入れた。
いける。
とりあえず今日は鉱物の一部を持ち帰って15cm粒子ビーム砲の担保を外すことを目標にしよう。
一部を集中して削って、鉱物を持ち帰ろう。
僕はセンサーを使って岩板の薄そうな場所を選ぶと集中的に斬りまくった。
マンゴーの切り方のようにさいの目切りにした岩石を格納庫に入れていく。
切り離されたらデブリ化するのでその前に処分するためだ。
そしてついに目的の核の一部が見えた。
「よし。核だ。5m✕5m✕2mぐらい持って帰ろう。
これで採取登録が取り消されることは無くなる」
僕は鉱物採取を成功させるとステーションに帰投した。
ギルドの荷揚げ埠頭にコンテナを預けギルド受付に向かう。
「こんにちは。鉱物採取で預けた鉱物を買い取って欲しいんだけど」
「こんにちは」
受付嬢さんが挨拶を返すと共に目の前の端末で腕輪からデータを吸い上げ個人確認をする。
「アキラ様ですね。鉱物1,000tの荷受を確認しました。
鑑定結果は……特殊鋼装甲板ですね。サイズが規格外のため1tあたり2,000Gで買い取ります」
「え? 特殊鋼装甲板? 小惑星から採取したのに?」
「なんででしょうね……」
僕が疑問をぶつけると受付嬢さんも不思議がっていた。
まさか中身は敵艦の残骸だったのかな?
とりあえずマッコイ商会への担保を解消しないと。
僕は鉱物を売ることにした。
「とりあえず買い取りでお願いします」
「はい。1t2,000Gなので1,000tで2百万G。ギルド税1割を差し引いて180万Gの振込ですね」
受付嬢さんが端末を操作するとピロンと電子音がして僕の腕輪に入金があった。
まさかの180万Gゲットですよ。
さっそくマッコイ商会に支払いをして15cm粒子ビーム砲の担保を外した。
たしか推定埋蔵量40万tじゃなかった?
税引き前で8億Gですか?
これって他のクエストを熟すより実入りが良くないか?
僕は笑いが止まらなかった。
専用艦が非力でも関係なかったわ。
僕はすっかり調子に乗っていた。
特殊鋼の重さに金属の比重を入れるのを忘れてました。
10m✕10m✕10mで1000tじゃ水です。
特殊鋼はおおまかに金より重い比重20ぐらいとしました。




