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191 自由浮遊惑星編12 爺や

side:エリュシオン星系 アキラ視点


「さて、どうやって爺やを説得しようか」


 僕の目の前には(かえで)の大戦艦と、爺やの専用艦であるポケット戦艦が浮遊していた。

もう直ぐニビルがこちらに次元跳躍(ワープ)して来てしまう。

現在ニビルの制御電脳は僕の支配下にあるので、ニビルを現帝国との戦争に利用させないようには出来る。

しかし、それをしていまったら真・帝国の人達からの僕に対する信頼が崩れてしまいかねない。

爺やはタカ派なので直ぐに攻撃攻撃と言うけれど、(かえで)はそうでもない。

真・帝国の拠点にタカ派の人達が何人ぐらい存在するのかわからないけど、真・帝国の人達は、はたして何処まで現帝国と事を構える気があるのだろうか。

真・帝国の戦闘艦がステーションを攻撃して来ていた理由も、超ハブ次元跳躍門(ゲート)を使って地球へと赴き、僕を連れ戻すことが目的だったようだ。

まず皇帝の因子を持つ御子の成功例である僕を連れ戻し、皇帝の力を引き出す。

その後に戦力を整えて帝国を奪還する。

これはつまり現有戦力で帝都に攻め込むという選択肢は元々持っていなかったと思われる。


 現帝国は超ハブ次元跳躍門(ゲート)を有効活用出来ないようで、帝都にある超ハブ次元跳躍門(ゲート)も壊れていると認識しているようだ。

ステーションと地球とのやり取りが限定的な物資の輸送とデータ通信のみだったのも、超ハブ次元跳躍門(ゲート)を有効活用出来なかったからだ。

超ハブ次元跳躍門(ゲート)は、真・帝国側によるプロテクトが為されていて、武装のある艦の行き来が出来ないようになっていた。

これは地球から脱出した八重樫の養父母が行ったものらしく、養父母を追って超ハブ次元跳躍門(ゲート)を潜った追手ごと地球への戦闘艦の出入りを不可能にしていた。

このプロテクトを解除出来るのは真・帝国の技術者だけで、これによって地球が侵略されないように守っていたというわけだ。

そこで現帝国のケイン皇子(プリンス)(当時)は、地球人のDNAに着目し、資源として誘拐することを企んだ。

その誘拐の手段として使われたのがSFOだったわけだ。

更にSFOプレイヤーをステーションの防衛戦力としても利用するということまでケイン皇子(プリンス)はしていた。


 つまり、真・帝国の戦力はSFOプレイヤー擁するステーションを攻め落とせない程度のものだったということだ。

流石に全戦力を投入した総力戦をしたわけではないだろうけど、帝都を落とせる程の戦力は真・帝国には無いと見て良い。

僕が野良宇宙艦の巣――工場惑星――を手に入れたことで飛躍的に戦力は増強されたが、現帝国と一戦交えるという段階には至っていないと思っている。

旧帝国の生産設備のほとんどを手中にしている現帝国とは人口も戦闘艦の数も差が開くばかりだろう。

そこで爺やはニビルの戦力をあてにしたというわけだ。

あの要塞砲以上のエネルギー砲を連射出来、外殻に守られたニビルなら攻撃力も防御力も桁外れだ。

となると、ニビルが戦力にならないということにすれば、爺やも即時開戦を諦めてくれるかもしれない。

よし、それで行こう。


『爺や、ニビルは損傷を受けていて戦力にはならないぞ。

人工太陽が壊れていて、外殻のダイソン球に守られている中の惑星ニビルも生物の住めない死の惑星になっていた。

住人は疫病を抱えながらコールドスリープで眠っているらしい。

治療が終わるまでは起こせないし、ニビルの外殻全体も修理しないと戦力にならないだろう。

起きている星の守り人たちも技術を失っていて役に立たないぞ』


 よし、これで誤魔化せるかな?


『残念じゃ……。

自動防衛機構だけでも奴らを殲滅できようものをのう……』


 やはりあのエネルギー砲を知っていたか。

これで、諦めたか?


『ならば、真・帝国に残る科学力で疫病を治すのじゃ。

更にニビルの外殻や防衛機構も修理すれば良い。

工場惑星の全能力を注ぎ込むのじゃ!』


 藪蛇かー!

修理して戦う気満々だよ。

でも、時間稼ぎにはなる。

元々修理はしないとならないと思っていたからね。

修理が終わったら、ニビルの制御電脳に命令してまた銀河の旅に出てもらおう。

ニビルの電脳を支配下に置いていて良かったよ。


『わかりました。

戦力が整うまではくれぐれも現帝国と戦端を開かないでくださいよ?』


『そうと決まれば、修理スタッフを招集するのじゃ!』


 張り切った爺やは真・帝国の拠点に早速向かおうとしていた。


『ちょっと待って。訊きたいことがあるんだ!』


『なんじゃ。早くせい!

儂は忙しいのじゃ!』


 爺やは自らの専用艦を超ハブ次元跳躍門(ゲート)に向けて今にも飛び出させようとしていた。

通信スクリーンの中でイライラしている様子だ。


『昔のことを良く知っているのは爺やだけなんだから、僕に教えてくれ。

古の契約と約束の日、約束の地とは何なんだ?』


 僕のその言葉に爺やのイライラがピタリと止まった。


『ニビルの者がそう言ったのじゃな?』


 あれ、爺やの様子がおかしいぞ。

これは爺やに伝えては拙かったか?


『古の契約とは、ニビルが銀河探査と帝国の版図を広げるための任務に就いた時に、いつ何時ニビルの民が帰って来ても帝国に受け入れ助けの手を差し伸べるという契約じゃ。

その契約を口にしたということは、ニビルの民が帝国に助けを求めているということになる』


 ああ、確かにニビルの民は即時の食糧援助を求めていたな。


『それがニビルの破損ということじゃろうな。

良く戻って来れたものじゃ……』


『確かにコールドスリープから覚めた民に食糧を与えてくれとも言われたよ』


『さもあらん』


 爺やが納得している。

これで古の契約はわかった。

当然ニビルの民を助けるのに異存はない。


『それでは、約束の日と約束の地とは?』


『約束の地とは帝都のことじゃろう。

約束の日は知らんな』


『え?』


『おそらくじゃが、コールドスリープに入る前に帝都への到着予定日時でも設定したんじゃろ。

それが約束の日で、目的地が帝都だから約束に地じゃ』


 思ったより単純な話だった。

たぶん爺やの推測で合ってるんだろう。

これはニビルにも知らないと答えればいいかな?

重要な意味は無さそうだし、星の守り人も伝承を口にしただけかもしれない。


『なるほど、わかったよ、爺や。

爺やはニビルを修理するスタッフを招集しに行ってくれ。

僕はニビルの到着を受け入れる』


『任せるのじゃ』


 よし、爺やはしばらくこっちには来ない。

さて、ニビル側にはどう説明しようか。

ニビルの制御電脳には正直に話して協力を仰いだ方が良いな。

星の守り人たちは、食糧援助とニビル外殻の修理をすると伝えるだけでいいか。

制御電脳さえ掌握すれば、後はどうとでもなるだろう。

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