181 自由浮遊惑星編2 文化侵略?
side:クロウニ―星系 工場惑星内居住区晶羅邸 アキラ視点
僕は工場惑星内に構えた邸宅で工場惑星と打ち合わせをしつつ寛いでいた。
クロウニー星系でのニアヒューム艦隔離作業と、ラスティ星系に残された小母艦級の隔離専用母艦への改造の話を詰めていたのだ。
あとはクロウニ―星系で鹵獲した小母艦級を改造した隔離専用母艦の竣工を待ってラスティ星系のニアヒュームを片付けるのみだ。
隔離専用母艦の完成まではほぼ待ち時間なので、僕は邸宅のリビングのソファで寛ぎながら仕事をしていた。
僕の周囲には嫁たちもいるのだが、そのポジションを争って不穏な空気が漂っている。
皇帝の姫つまり皇女であるステファニーは僕の左横の正妻位置をキープ。
右横には紗綾が居たのだが、彼女がトイレに立った隙にラーテル族のジェーンがその場所を腕力で確保した。
僕の股の間に入り床に座る形で美優が定位置をキープしている。
綾姫はその一歩引く性格が災いして壁の花になっている。
そして僕の後ろを確保しようと猫族のキャリーと犬族のマリーが、僕の仕事が邪魔にならない絶妙な距離を取りながら牽制しあっていた。
あ、楓は長い待ち時間に飽きて、真帝国の拠点まで帰ってしまって不在だ。
そのせいで楓の目に遠慮していた嫁ーずが、形振り構わないエロモードに入っていて、僕は生命の危機を感じているところだ。
楓の専用艦は簡易型の反物質粒子砲と次元跳躍加速装置(デチューン版)を追加装備し、熱核反応炉を対消滅反応炉に換装しただけだったので整備調整が一番早く終わっていた。
なので一早く離脱できたのだ。
諸元は以下。
『KAEDE』
艦種 大戦艦
艦体 全長2km 戦艦型 4腕
主機 対消滅反応炉D型(18) 高速推進機C型 次元跳躍機関+加速装置(デチューン版)
補機 対消滅反応炉G型(15)
兵装 主砲 反物質粒子砲(カートリッジ式簡易型)
長砲身40cmレールガン単装1基1門 通常弾 80/80
副砲 40cm粒子ビーム砲連装3基6門
対宙砲 10cmレーザー単装8基8門
ミサイル発射管 なし
防御 耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲板
ビームキャンセラー(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)B型
次元フィールド発生装置
電子兵装 電脳C型 対艦レーダーA型 通信機A型 サブ電脳D型
空きエネルギースロット 5
状態 良好
反物質粒子砲を主砲として装備しているが、粒子加速器による反物質粒子の加速という危険極まりない方式から、カートリッジに閉じ込めた反物質をレールガンで撃ち出すという簡易型が採用されている。
元々持っていた次元跳躍機関と次元フィールド発生装置は大量のエネルギースロットを使う装備だが、使用中は全武装のエネルギーをカットして流用しているので使用が可能となっていた。
そこに加速装置(デチューン版)を搭載したため、必要スロット数が全武装のエネルギーカットでも足りなくなり、反応炉の能力を大幅に向上させている。
空きエネルギースロットの数値は武装に使える分であり、次元跳躍機関使用中の空きスロットではない。
僕の専用艦が対消滅反応炉G型という次元装備対応としても低スペックだったのに、次元跳躍や次元格納庫、反物質粒子砲を使えたのは、次元格納庫内の本体に装備された反応炉からエネルギーを流用していたおかげらしい。
一時期空きエネルギースロット数がマイナス表記になっていたのは、この見えない反応炉からエネルギー供給していたことによるバグだそうだ。
『ダーリン、隔離専用母艦が出来たよ』
工場惑星から通信が入る。
ついにニアヒューム隔離用の次元隔離施設搭載の隔離専用母艦が竣工したのだ。
対消滅反応炉F型を5基持ちそのうち4基を次元格納庫専用とし、大容量の次元格納庫を8つ構築出来るという。
クロウニー星系で無力化中のニアヒューム艦は19万艦弱にものぼる。
その全てを隔離出来るように設計されているのだ。
その8基の次元格納庫にそれぞれ2万5千艦ずつ収納し、無力化信号を浴びせ続ける。
これでやっとクロウニー星系に安全宣言が出せそうだ。
「ニアヒュームに平和の概念を教えることは出来ないかしら?」
僕の仕事を隣で見守っていたステファニーが唐突に疑問を投げかける。
確かに、ニアヒュームが群の王を中心に群毎に共通意識を持っているのなら、平和の概念を植え付ければニアヒュームにも戦いに対する忌避感が生まれるかもしれない。
「それはやってみる価値があるかもしれないね。
どうせ無力化信号を浴びせるんだから、そこに情報を乗せるということも可能だろう」
「それなら、私達の曲を聞かせよーよ」
紗綾が僕の後頭部に抱きついて来て言う。
僕の後ろのポジション争いはトイレから帰って来た紗綾に奪われたようだ。
だが、柔らかいのが頭に当たってるよ。紗綾。
「それもいいかもね。
隔離区画は8つあるから、それぞれ違うアプローチをしてもいいだろう」
僕の提案に、みんながアイデアを絞りだす。
「勧善懲悪の時代劇なんてどう?」
「なるほど。悪を憎む意識を植え付けるんだね」
綾姫は実家が剣術道場をやっている関係で時代劇を推してくる。
ニアヒュームの行いが人間にとって悪であるという認識を植え付けるのは有りかもしれない。
「時代劇だと悪即成敗とか変な価値観を植え付けられそーじゃない?
アニメがいーよ。魔法少女モノとかー」
「いいね。枠はあるから両方やってみよう」
紗綾がアニメを推す。身を乗り出すことで柔らかいものが後頭部にグイグイ押し付けられている。
女児向けのアニメなら勧善懲悪は元より友情なんかも描かれるから良いかもしれない。
「……クラシック……」
美優がクラシック音楽を推す。
「ああ、情緒安定にいいよね。言葉が通じないニアヒュームには良いかもしれない。
ん? 言葉が通じない……。
そうか! 時代劇やアニメはニアヒュームが理解できる言語に翻訳しないとならないのか!」
ここはゲールの出番だな。
ニアヒュームとのコミニュケーションをテーマに予算をつけて研究させていたんだから、今度こそ役に立ってもらおう。
時代劇やアニメの映像は神澤社長経由で地球からの配信枠で送信してもらおう。
ちゃんと放映権は買うように。海賊版ダメ絶対!
クラッシック音楽は著作権が切れているから問題ない。
「ニアヒューム言語翻訳はゲールに任せよう。映像は神澤社長経由で地球から取り寄せだな」
そう言いながら僕はふと横にいるステファニーが気になった。
俯いて何か悲しそうな顔をしている。
そういえば、獣人嫁も同じように落ち込んでいる。
「どうした。ステフ」
ステファニーが俯いたままポツリポツリと話し出す。
「私達帝国人は、娯楽といった文化で地球人より遅れているのです。
せっかく旦那様のお役に立てる機会なのに、何も出来ない自分が悔しいのです……」
「そうか。なら取り寄せた映像の上映会をやろう。地球の文化に触れて帝国に還元すればいい。
そうだ。領地でアニメを放送しよう。その吹き替えはステフ、キャリー、マリー、ジェーンに任せる。
ナノマシンの翻訳機能を使えば地球の言語もわかるだろう」
「「「「やります!」」」」
僕の提案に嫁ーずは明るさを取り戻して協力を約束してくれた。
元々彼女達も独自のファッション文化は持っている。
興味を持てば自ら発展させることも可能だろう。
『もー! ラスティ星系のニアヒューム隔離の話はどうすんのよ!』
「そうだった! すまない」
工場惑星がしびれを切らしていた。
僕にはまだ打ち合わせが残っていたんだった。
「一度ラスティ星系に次元跳躍して小母艦級を回収しよう。
おそらくあれは群の王の違う群体のはずだ。
これも早急に隔離しておきたい」
後日。
魔法少女アニメにどっぷりハマった嫁ーずと護衛達がいた。
いま見ているのは魔法少女が次から次へと死んでいくアニメだ。
誰だこれを混ぜたのは?
いや名作なんだけどね。でもこれは彼女達にはまだ早いと思うんだ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
side:帝国帝都次元レーダー観測室 三人称視点
その頃、帝国主星系に一つの天体が向かって来ている事が観測されていた。
「次元レーダー、量子レーダーに反応。時空振、重力異常検知。
惑星サイズです。惑星が亜光速で近づいて来ています!」
「恒星なし。伴星なし。自由浮遊惑星か」
「ニアヒュームの大型母艦じゃないのか?」
「それより我が帝国の主星に衝突したら大惨事だ!」
「コースは?」
「まだ詳細なコースはわからん。
衝突確率は37%だ」
「まずいな。
精密観測をする艦隊を派遣するべきだ」
「皇帝陛下に第一報を入れろ!」
晶羅の知らないところで帝国主星に危機が迫っていた。




