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180 自由浮遊惑星編1 皇位継承順位改定

side:クロウニ―星系 工場惑星内居住区晶羅邸 アキラ視点


 無力化したニアヒュームの隔離作業のため、僕はまだクロウニー星系にいた。

()は工場惑星の格納庫に専用艦を収納して、内部の居住区画に建てた邸宅でまったりと生活している。

食料その他はロレンツォが有人惑星であるクロウニー4から生活物資を融通してくれて助かっている。

僕らの「ら」とは嫁メンバー3人+嫁ーず4人+(かえで)+護衛獣人4人の12人のことだ。


 菜穂(なほ)さんは僕が専用艦でエリュシオンの神澤男爵のもとへサクッと送り届けた。

彼女は名義上だけだが神澤男爵夫人なので、こちらに縛り付けておくわけにはいかないからね。

みんな送り届けるつもりだったんだけど、僕のことが心配で残ると言って聞かなかった。

そして菜穂(なほ)さんを送り届けたエリュシオン星系で、僕の帰還を聞きつけた嫁ーずに捕まり、彼女達までこっちに来てしまったということだ。

カイル(第1皇子)の実妹であるステファニーとは、初めての同居になる。


 現在菜穂(なほ)艦含めてブラッシュリップスの専用艦は工場惑星で整備調整をしている。

特に紗綾(さーや)艦と綾姫(あやめ)艦はオーバースペックの相転移フィールドとV-MAXを使ったせいでガタガタだった。

それでもスペックダウンした限定的な使用であって本物の1割にも満たない性能だったらしい。

彼女たちの専用艦のレベルアップは、どうやら僕の専用艦と戦術兵器統合制御システムで繋がっていたことで引き起こされた現象らしい。

僕の度重なる危機に、彼女たちを僕の援軍とするために、次元格納庫内にある専用艦本体の電脳が暗躍していたようだ。

そのために僕のDNAから引き出した特殊装備の設計図を工場惑星に渡したり、工場惑星に部品として確保されていた対消滅反応炉や追加装備を融合時に丸々転送するなんてことまでやらかしていた。

勝手なことをする専用艦の電脳というのもどうかと思うが、その自重しない電脳によりレベルアップさせられた彼女たちの専用艦の諸元を見るのが怖い。

まあ整備調整が終わったら、おいおい見て行こうと思う。


 ロレンツォ(第7皇子)は、現在主星系であるラスティ星系に戻り復興の指揮を取っている。

クロウニー星系には大破した要塞艦とニアヒュームの監視艦隊が残されている。

要塞艦は順次工場惑星に収納され修理中だ。

工場惑星によると新造より面倒くさいそうだ。

いっそ電脳と戦闘データだけ移植して新造艦を渡そうかと思ったのだが、配備先に渡された要塞艦はローカル文化や使い勝手により現地仕様にカスタマイズされているらしい。

特に司令室の内装などは力が入っているとのことだ。

確かにその星系の領主が鎮座するのだから力が入るのは当然だろう。

なので面倒くさいが修理が選択されることになった。

尤も、必要な部品を配置して融合で修理するだけなのだが……。

まあその必要な部品を調べるのが面倒くさいというはわかる。

工場惑星によると特殊ドックに入れると融合を加速させることが出来るらしい。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



「旦那様、おめでとうございます」


 ステファニーが満面の笑みでお祝いの言葉を述べる。

僕は何のことか理解できずに首を傾げた。


「ステフ、何のことだ?」


 ステファニーは、僕がまだ知らせを受けていないのだと悟り口を開く。


「先日、皇位継承順位の改定がございました。

そこで旦那様が皇位継承権2位、つまり第2皇子に認定されました」


「え? なんで2位? 僕の上にはイーサンとレオナルドを外しても、カイル、ヘンリー、ルーカスの3人がいるよね?」


「旦那様の皇帝の因子の強さ、武力、経済力、品格の評価がヘンリー、ルーカスの2人を抜いたということです」


 僕は皇位継承権改定の仕組みを良くわかっていなかったようだ。

まず成人(帝国では15歳から)の新たな皇帝の因子持ち――所謂自然発生皇子――が確認されると、皇帝の姫が嫁ぐことが決定し皇位継承権が認められる。

そこで皇帝の因子の強さ、武力、経済力、品格の評価がなされ、継承順位が決まり入れ替えが発生するのだそうだ。

これが僕という自然発生皇子の存在が確認された時におきた改定だ。

僕は皇帝の因子が強く、武力と経済力が最低評価、そして品格がニュートラルだったため皇位継承権6位を得たわけだ。

どんだけ皇帝の因子が高評価だったのかという話だ。


 次に年に1度、その年の実績を加味した改定が行われる。

皇帝の因子の強さ、武力、経済力、品格が改めて評価され順位が入れ替わる。

この改定で最下位を5年連続で取った皇子は血筋・自然発生の区別なく無能として廃嫡となる。


 そして今回のように5人もの皇子が居なくなるという緊急事態でも、帝国存亡の危機ということで改定が行われる。

第3皇子イーサン、第5皇子レオナルド、第8皇子ライオット、第9皇子ベンジャミン、第13皇子ケイン(プリンス)

うん、全員僕絡みで死亡あるいは廃嫡だ。

これって僕が帝国存亡の危機を招いてるんじゃ……。

いや、ニアヒューム絡みとレオナルドの反乱は僕のせいじゃないからね!


 今回、皇子が5人減ったことで、新たな血筋皇子が継承権を得ることになったらしい。

今までは現皇帝の子の成人男子という区切りがあった。

そこに現皇帝の孫の成人男子が加わることとなった。

廃嫡された子の子孫は除外。皇帝の因子の弱い者も除外。

ただし皇帝の子で皇子になれなかった者でも孫が強い因子を持っていれば対象となる。

もちろん皇帝の姫の子も因子が強ければ対象だ。

自然発生皇子は皇帝の姫との婚姻をもって皇子と認定されるため、皇帝の血を引く孫が存在しているわけだ。

僕の時も僕の知らない所でどうやら勝手に嫁が内定していたらしい。

その嫁がカイル(第1皇子)(ステフ)になったのは、その後の僕の活躍により予定外のことだったとか……。


 その孫の中から皇帝の因子が強い上位5名が例外的に加わることとなった。

あまりにも血筋皇子が減ったことへの危機感が皇室関係者の間で沸き上がったための結果らしい。

だが、子を飛ばして孫を後継者にするというのも問題があるらしく、孫には継承順位にハンデが設けられているそうだ。

つまり血の繋がっていない自然発生皇子の僕を皇帝にする気なんか元々無いんだろうな。

だから皇帝の姫と婚姻させる制度なのか。孫は確実に血筋だ。


 そして改定された皇位継承順位がこれだ。


第1皇子:カイル 元第1皇子。血筋皇子。順当に地位を守る。

第2皇子:アキラ 元第6皇子。自然発生皇子。現皇帝の娘婿。武力、経済力、品格でポイントを上げ昇格。

第3皇子:ルーカス 元第4皇子。血筋皇子。第2皇子ヘンリーがニアヒュームにより大被害を受けたことにより繰り上がり昇格。

第4皇子:ヘンリー 元第2皇子。血筋皇子。ニアヒュームにより武力、経済力に大被害を受け降格。

第5皇子:ロレンツォ 元第7皇子。血筋皇子。第5皇子レオナルドとの戦いに勝ち領地を併合。そのため経済力が上がるが武力に大被害を受ける。上位の空席により繰り上げ。

第6皇子:ジェラルド 元第10皇子。血筋皇子。アキラへの賠償で経済力を下げるも、上位の空席により繰り上げ。

第7皇子:ランドルフ 元第11皇子。血筋皇子。上位空席により繰り上げ。

第8皇子:氏名不詳 元第12皇子。血筋皇子。皇帝の成人の子の中では末弟。上位空席により繰り上げ。

第9皇子:氏名不詳 孫1位。血筋皇子。娘と自然発生皇子の子。ハンデにより子の順位より下になっている。

第10皇子:氏名不詳 孫2位。血筋皇子。娘と自然発生皇子の子。ハンデにより子の順位より下になっている。

第11皇子:氏名不詳 孫3位。血筋皇子。ジェラルドの子。ハンデにより子の順位より下になっている。

第12皇子:氏名不詳 孫4位。血筋皇子。皇子になれなかった息子の子。ハンデにより子の順位より下になっている。

第13皇子:氏名不詳 孫5位。血筋皇子。カイルの子。ハンデにより子の順位より下になっている。

第14皇子:氏名不詳 順位変わらず。自然発生皇子。現皇帝の娘婿。

第15皇子:氏名不詳 順位変わらず。自然発生皇子。現皇帝の娘婿。

第16皇子:氏名不詳 順位変わらず。自然発生皇子。現皇帝の娘婿。


 氏名不詳が多いのは、弱い立場の者を寄って集って叩き、自らの継承権の安寧を謀ろうとする皇子が出るかららしい。

確かにレオナルドやルーカスあたりがやりそうな事だ。

まあおいおい判ってしまうんだろうけど、名簿に載った瞬間に攻め滅ぼされたんじゃたまらないからね。


 僕の昇格は置いておいて、驚くところはカイルの子が第13皇子になっていることだ。

カイルって若く見えるのに成人の父だったんだ。

そういや帝国人は延命措置により若い姿でも100歳超えということもあるらしい。

見た目お爺さんだったライオットとベンジャミンがプリンスの弟だって話だし、その兄であるカイルって何歳なんだろう?

あれ? もしかしてステフって……。ロリババア?

女性に年齢を聞くのがこんなに恐ろしい事だとは思わなかった。


「新しい第13皇子ってステフの甥っ子なんだね」


(わたくし)は17歳ですよ?」


 じっと見つめる僕の目に何かを察したステフがジト目で自ら年齢を言って来た。

疑ってごめんなさい。

延命措置により見た目も身体も若いということは子を作る期間も長いということ。

ステフの母親がそうならば、年上の甥が存在していても不思議ではないのか。

どうやら皇帝はお盛んでまだ子が生まれているようだ。

その子たちが成人――帝国では15歳で成人――したら、また順位改訂があるんだろうな。

まあカイルの年齢を知るのが怖いのは置いておこう。


 そういえば、レオナルドも自然発生皇子だったらしい。

他の自然発生皇子のように皇帝の姫と結婚していたのは確定か。

子はいたんだろうか?

もしかするとその子を助けるために皇帝はレオナルドを大罪人にしなかったのかもしれない。


 あれ? この制度って皇帝が亡くならない限り、すっと子供たちは皇子のまんまじゃね?

その皇帝も延命措置で長生きだし……。

ああ、そういや皇帝もニアヒュームとの戦いで死にかけてたな。

過去の皇位継承は皇帝が戦死したってことなんだろうな。

そして、それだけ長く生きて子を生しているならば、子の人数は膨大なはず。

なのに、成人している子が7人だけ? そこまで皇子で殺しあってるの?

ああ、皇帝の因子が弱い子は除外されてるのか。

つまり皇帝の因子は引き継がれにくいってことだな。

だから自然発生皇子を身内に取り込んで皇帝の因子を強くしようとしているのか。

そんな古いやり方が蔓延してるということは、皇帝の因子を強くする遺伝子操作は出来ないってことだな。

延命措置や肉体強化といった遺伝子操作は旧帝国の技術者頼みらしいし、皇帝の因子は弄れないと見ていいんだろうな。

皇子同士で決闘なんてさせているのも、皇帝の因子を強くする試みの一つなのかもしれない。

いったいその先に何があるのだろうか?

真・帝国で言う奪われた宝に何か関係があるのだろうか……。

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