177 帝国内乱編15 終結
side:クロウニ―星系 専用艦CIC アキラ視点
『みんな、ありがとう』
僕は皆の絆をしみじみと感じて、今までの人生で味わった事の無い暖かさを覚えていた。
思えば両親が亡くなってから、姉貴は生活のために稼ぎに出て不在で、ずっと僕はぼっちだった。
世間の目は冷たく、僕を化け物を見るような目で見て来た。
それがSFOに参加してブラッシュリップスに加入してから、なんだかんだ言ってぼっちの時間は少なくなっていた。
皇帝に呼ばれて単身赴任になっても、1人で戦うのが当たり前だと思っていた。
だけど、もう1人で戦わなくていいんだ。
僕には大切な仲間がいて、いつでも助けてくれる。
こんなうれしいことは無かった。
だが、ちょっと待て。
なんでRPでステージを踏もうとしている?
フォーメーションAは確かデビュー曲の踊り出しの位置決めだったはず。
僕が加入する前のまだメンバーが3人だった時のダンスがメンバーが5人に増えたために変更になった、その変更後の立ち位置がフォーメーションAだ。
『紗綾、フォーメーションAって?
僕と楓がツートップになったら使えないよね?
しかも実戦中だよ? どう攻めるつもり?』
『いや、そこは勢いだぞ?
格好良いかなと思っただけで意味は無いんだな』
紗綾がぶっちゃける。
だが位置的には前衛にアタッカーである戦艦と巡洋艦がツートップで出て、後衛に軽空母と防宙戦艦に電子戦兼狙撃艦が位置するという都合の良い結果となっている。
そして僕の専用艦は艦隊旗艦だ。
ここからは僕の指揮で最強艦隊を運用してやる!
『ま、偶然だけど配置は丁度良いかもしれない。
皆もまだ戦えるよね?』
その言葉に美優と紗綾が視線を逸らす。
『美優? 紗綾も?』
『……容量オーバー。艦載機ゼロ……』
『防宙警戒はできるけど、相転移フィールドはもう閉店かな?』
美優艦の次元格納庫は容量が小さいらしく、菜穂艦、紗綾艦、綾姫艦を格納するために艦載機を降ろしていて攻撃手段が無いそうだ。
紗綾艦は元々防衛専門だが、反応炉の性能が相転移フィールドを使うには低すぎて、使用は1回が限度らしい。
うん、これじゃレオナルド艦隊の相手をするわけにはいかないね。
レオナルドの艦隊はざっと見た感じニアヒュームを除けば9万艦ぐらい。
要塞艦5はニアヒュームのコアを破壊したので使い物にならないはずだが、要塞艦の要塞砲を強引に使用可能にした手段が不明な以上は、要塞砲が健在の残り4艦も侮れない。
ブラッシュリップス艦隊5艦で相手にするには明らかに無理がある。
1+1+1+1+1が例え100になったとしても9万の相手は出来ないよな……。
『つまり格好をつけただけで、この後戦力にはならないってことだね?』
『ん』『あはは』『うふふ』
美優、紗綾、菜穂さんが笑って誤魔化す。
楓はあちゃーという感じで顔を覆っている。
『わかりました。僕と楓で突っ込みます。
3人はこの場に待機していてください。
美優と紗綾は菜穂さんを守って。
菜穂さんは電子・量子・次元あらゆる通信と探知装置に妨害を。
ニアヒュームをこのまま無力化して欲しい。
それと接近する敵を狙撃で対応。敵を近づけさせないで。
あと綾姫が復活したら援軍に寄越して。
期待しないで待ってる』
『ん』『わかった』『了解』
『楓、僕は敵を反物質粒子砲で殲滅する。
敵艦隊の中を突っ切ることになる。
楓は僕を敵の攻撃から守って。
近づく敵を蹴散らして欲しい』
僕の要請に楓は首を横に振る。
『ボクも撃てるよ? 反物質粒子砲。
ただ、反物質カートリッジをレールガンで撃ち出す簡易型だけどね』
どうやら楓の強化は反物質粒子砲(簡易型)だったらしい。
『防御なら紗綾に任せて。
防宙戦艦は伊達じゃないんだからね?
ミサイルや対空砲は健在だよ!』
『マジか! なら防御は紗綾に任せて、僕と楓で目標を分けよう。
向かって右の要塞艦2艦は楓が撃ってくれ。残り3艦は僕が撃つ』
僕は目標を楓と分けることにした。
そして反物質カートリッジを使っての作戦を思いついたので楓に指示を与える。
『よし、僕も反物質カートリッジをレールガンで撃ち出すぞ。威力は最低の1粒子。
これなら先にカートリッジに反物質を入れておけば短距離次元跳躍するぐらいのクールタイムは直ぐに消化出来るだろう。
次元跳躍で目標要塞艦の中間位置直上に跳躍し、敵が対処する隙を与えずに目標の対消滅反応炉を撃て。
敵は艦を盾にしてくる。射線の途中で爆発しても巻き込まれないように位置を取るんだ』
反物質をカートリッジに入れてそのまま貯蔵するのは事故のリスクがあり、リスク管理の観点から僕は今まで使わないようにしていた。
対消滅反応炉は多重次元理論で反物質を閉じ込めているのだが、停滞フィールドで隔離するだけの反物質カートリッジは、薬室までの一時的な搬送手段でしかなく、反物質を長期保存する用途としてはいささか危険すぎた。
貯蔵している反物質カートリッジに何らかの不具合が発生したら、そのまま対消滅に巻き込まれて爆死しかねないのだ。
なので貯蔵するカートリッジには反物質を1粒子だけ入れる事にして、もしもの事故の時の威力を抑えた。
貯蔵しておく時間も最短にするつもりだ。
さらに今回はそのカートリッジ毎レールガンで発射する。
これは、ここが激しい戦いを行った宙域であるため、デブリの誤爆が怖かったのだ。
『よし、反物質カートリッジに反物質を移動しろ』
『うん』
反物質が減って出力の落ちた対消滅反応炉が、短いクールタイムで次元跳躍可能出力まで持ち直した。
『じゃあ、行くぞ! 次元跳躍!』
僕達は短距離次元跳躍で要塞艦の直上に跳躍した。
と同時に反物質カートリッジをレールガンで要塞艦に撃ち込んで行く。
目標は要塞艦心臓部、対消滅反応炉。
1発、2発、3発。楓も1発、2発と撃つ。
いきなり次元跳躍アウトして来た僕達の艦にレオナルドの艦隊は為す術も無かった。
それは菜穂さんが電子・量子・次元と全ての探知装置や通信にジャミングをかけていたせいだ。
要塞艦の停滞フィールドを突破し装甲に当たった反物質カートリッジが砕け、中の反物質粒子が装甲と対消滅を起こし膨大なエネルギーを放出する。
うちの工業惑星で製造した要塞艦を自分の手で葬ることになるとは、今後は乗っ取り対策を強化しなければいけないな。
そんなことをふと思っているうちに要塞艦は対消滅反応炉を破壊され誘爆を起こし消滅していた。
その爆発に護衛として展開していたレオナルドの親衛艦隊が巻き込まれていく。
未だレオナルドの専用艦は出撃していなかった。
つまり要塞艦の中で指揮をとっていたはずだ。
その要塞艦が爆発消滅したということはレオナルドも巻き込まれたということだろう。
要塞艦5艦はほぼ同時に爆散した。どの要塞艦にレオナルドがいたとしても運命を共にしたはずだ。
残りの艦の殲滅はロレンツォに任せよう。
あとはニアヒュームの処置だけ。
これはプリンスと姉貴にニアヒューム支配の秘密を聞いて対処すればいいだろう。
「ん? ところでプリンス艦とカレン艦は何処に?」
侵食弾の侵食で動けなくなっていたから放置していたんだけど、まさか!
僕は次元レーダーで直近の次元跳躍の形跡を調べる。
「ああ、菜穂さんのジャミングで何もわからない!」
味方の通信が正常化しているのは、菜穂さんのコントロールの元で味方のみが通信を使用できるようにジャミングを切り替えていたからだ。
ジャミングがかからない領域を味方艦全艦で同調してタイミングで切り替えていく。
その正しい領域とタイミングを知らなければ通信出来なくなるということだ。
だが、次元レーダーに関しては全てジャミングがかかっていた。
『菜穂さん、敵主力は殲滅した。次元レーダーのジャミングを切ってくれ』
『わかったわ』
次元レーダーが使用出来るようになる。
ここ直近で次元跳躍したのは?
これは僕と楓の航跡だな。
他には航跡が3つ。2つが同じ場所から連続次元跳躍していてトレース不能。
これがプリンスと姉貴か。逃げられたな。
プリンスと姉貴はいったいどうやって侵食から脱したんだ?
もう1つは要塞艦の中から次元跳躍している!
こっちはレオナルドだろう。奴はレオナルド星系に向かったようだ。
内戦はこれで終結だろう。
だが首魁のレオナルドに逃げられてしまった。
レオナルドの処遇はもうカイルに任せていいよね?
『楓、疲れた。
みんなの所へ帰ろう。
ロレンツォ、後のことはカイル共々任せた』
僕と楓は周囲を警戒しつつ仲間のもとへと帰還した。
僕には安心して帰れる場所が出来たんだ。
「僕には帰れるところがあるんだ。こんなに嬉しいことはない」
言ってみたかった台詞がここで消化できた。おい。
『ちょっと待った!』
僕がこのまま帰ろうとするとロレンツォから待ったがかかった。
『次元跳躍門は直して行ってくれるんだよな?』
そうだった。
次元跳躍門を直さないとカイルの本隊が到着出来ない。
ロレンツォ指揮下の要塞艦は悉く次元跳躍機関が壊れている。
要塞艦でピストン輸送する案は既に破綻している。
だからこそ次元跳躍門を直さなければならない。
『もしもし、工場惑星? 次元跳躍門を4つばかり送ってもらえる?
1つはハブ次元跳躍門にしてね。
え? 時間がかかる?』
やばい。
新たな次元跳躍門を設置するのに時間がかかってしまうと、長期間カイルが放置状態になってしまう。
『ニアヒュームも放置しないでくれよ。
私はもう動けないのだからな?』
ロレンツォの要塞艦を修理するのにも次元跳躍門が動いていないと何も出来ない。
やっちまった! 早く何とかしないと……。




