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162 遠征編27 今後の方針

 帝国とニアヒュームの対話は決別した。

ニアヒュームには群体単位で過去の記憶が現実の物として残っているため、現帝国に連なる者――ニアヒュームは擬人(・・)と言っていた――に対する恨みを抱き続けるのだろう。

そこには過去の蟠りを忘れて水に流すということはないらしい。

群体単位で全ての個体が同じ記憶を共有しているということは、ニアヒュームの祖である個体の恨みの記憶を延々とバックアップして来たのと同じだ。


 ゲールの調査結果によると最初に8H星系に来たコアと、次に8B星系に来たコアは個体差があったという。

共通の祖先の記憶を持つものの、群体の王――蜂や蟻で言う女王にあたるらしい――が分離独立した時から別の群体としての記憶を持つらしい。

つまり一つの群体と和解したとしても、別の群体はその事実を把握せず過去に捕らわれて恨みを忘れないということだろう。

どうやらニアヒュームは旧帝国人を真人(・・)の群体と捉え、現帝国人を擬人(・・)の群体と捉えて明確に区別しているようだ。

擬人とは疑似人間ということだろうか?

現帝国人の成り立ちに何か秘密がありそうだ。

ここは真・帝国に事情を聞いておくべきかも知れない。


 ニアヒュームは世代を重ねる度に伝承が絶えて忘れるということもないのだろう。

強硬派と穏健派という考え方の違いが、群体の得た経験により存在するかもしれないが、過去の祖先からの伝承は消えない。

祖先の統一した意思によって全てのニアヒュームの方針が決定してしまっている。

そこで現帝国殲滅が決まってしまっているのなら、もう戦うしかないのだろう。

過去に現帝国人が決めた「相容れない存在。人類の天敵」という方針は至るべくして至った結論だったのかもしれない。

僕としては対話により違う生き方があるということに気付いて欲しかったんだけど、ニアヒューム全体をそう認識させるより過去の先祖による意思決定の方が遥かに強い行動原理となっているようだ。

だけどニアヒュームは旧帝国人と現帝国人は明確に分けて捉えているんだよな。

となると直径の末裔である真・帝国の人々にだけは危害を加えない可能性が高い。

僕が危害を加えた群体は僕を許さないだろう。

この情報が他の群体にまで共有されることはあるのだろうか?

ニアヒュームは精神波のようなものが次元通信で繋がっているという。

それが群体の王に対しての共有だろうとゲールは言っている。

しかし群体の王は他の王と情報を共有していないのだろうか?

そこは群体の王のコアを手に入れるしかないとのことだった。


 それと、地球人に対してはどう対応するかがわからない。

地球人は更なる別の群体と認識するだろうか?

それにより友好的な態度をとってくれるのだろうか?

僕には帝国人の嫁もいる。

ニアヒュームの凝り固まった復讐心は、僕の身近な人達を害する可能性が高い。

やはり襲ってくるなら排除するしかないのかもしれない。

真・帝国にとっては敵の敵は味方かもしれないが、人を部品にするあの映像を見てしまうと、もう既に相容れられない存在になってしまっている気がする。


 皇帝が医療カプセルの治療を終え意識を取り戻した。

皇帝は意識を失っていた間の事を皇帝代理だったカイル(第1皇子)から報告を受けると、直ぐにカイル(第1皇子)の政策を追認した。

それによってカイル(第1皇子)は皇帝代理を退いたが、その政策が追認されたことで帝国の対ニアヒューム防衛体制は滞りなく急速に整って行った。

隣の銀河腕から侵攻してくる母艦級は艦載型次元レーダーの配備により水際で探知可能となった。

それらニアヒュームに対しては要塞艦の次元跳躍(ワープ)能力により迎撃艦隊を運んで水際で殲滅する方針となった。

その際、ニアヒュームの感染能力により要塞艦が奪われることを懸念し、要塞艦にはマスターキーのロックシステムや自爆装置が取り付けられた。

これは要塞艦の高性能次元跳躍(ワープ)機関や要塞砲を奪われないようにしようという狙いだった。

まさに帝国の存亡を賭けた戦いと位置付けられたわけだ。


 既に星系に進入しているニアヒュームも識別装置を量産し炙り出し即殲滅という方針が徹底している。

第2皇子(ヘンリー)領は、除染担当者の1人が有機型ニアヒュームだったため検査がザルとなっていた。

だが、幸いな事にヘンリー(第2皇子)自身はニアヒュームに寄生されていなかった。

(ヘンリー)は陣頭指揮を取りニアヒューム殲滅に尽力。既に星系の掃除を完了しつつある。

第3皇子(イーサン)領は有機型を含めニアヒューム汚染がひどく住民の被害も甚大だった。

自分の恋人が子がニアヒュームだと言われて、簡単に処刑出来るものではない。

これは脳死だと言われた患者の親族が受け入れられない気持ちに通じるかもしれない。

そこには整然と同じ温かな身内がいる。

しかも有機型ニアヒュームは、生前の身内の行動を完璧にシミュレートする。

受け入れがたいのは当然だ。

そういった感情で庇われた有機型が暴動や破壊活動などを起こし、混乱に輪をかけることになった。

有機型を1人見逃せば、その1人がエネルギープラントを暴走させ自爆テロを行うなど最悪の事態を招いた。

ニアヒュームにとって有機型は自らの勢力拡大という方針から外れた対帝国のテロ要員だったわけだ。

皇帝は対ニアヒュームの方針としてニアヒュームを庇うものも敵として扱うと宣言した。

そしてその見せしめとしてニアヒュームと化したイーサン(第3皇子)を庇った宰相を処刑した。

イーサン(第3皇子)はニアヒュームの犠牲者とされ国葬になり、ニアヒュームの非道さを喧伝するプロパガンダに利用された。


 帝国は国を上げて対ニアヒューム殲滅作戦を実施することになった。

僕としては帝国の尖兵になることなく、自星系を守護し身内や配下の命を護ることを大前提にニアヒュームと戦うことにしたい。

もちろん要塞艦の量産などは自星系の経済に寄与することになるため、対ニアヒューム特需に協力出来る事は続けていく。

また皇帝から呼び出しを受けたら断り切れそうもないけど……。


 その裏で真・帝国においてニアヒュームのコアを保護するつもりだ。

ゲールの研究所からもコアを回収した。

あのマッドに自由にさせたらニアヒュームに違う意味での恨みを買いそうだからだ。

もし万が一ゲールのマッドな行動がニアヒュームに共有された場合、真・帝国の人まで敵認定されかねない。

幸いゲールは言語記憶解析に夢中でコアには直接メスを入れていなかった。

群体全てのコアが記憶を共有しているとなると、それが外部に漏れる可能性があった。

もし群体の間でも記憶の共有手段があるとしたら危ないところだった。


 そのコアを有機アンドロイドに封じて他には侵食拡散出来ないように対処した。

このニアヒュームには僕達人類と接し人類の心や文化というものを理解してもらおうと思う。

何年何百年かかるかわからないけど、それによりニアヒュームが変化することを期待したいと思う。

ニアヒュームを庇うものは敵として扱う。この皇帝の方針に反する行為をするからには、いつかは真・帝国のために現帝国と敵対することになるかもしれない。

カイル(第1皇子)や皇帝は、そんなに悪い人ではないように思える。出来れば平和裏に共存したいのだが……。

皇帝の姫でカイル(第1皇子)の実妹であるステファニーも幸せにしてあげたい。

僕が2つの帝国の架け橋になるというのは夢物語だろうか?


「強硬手段で子供作っちゃおうかな?」


 ほら、子は(かすがい)って言うからね。

真・帝国が奪い返したいという帝都の秘宝とは何なのだろう?

それを返してもらって手打ちに出来ないだろうか?

ニアヒュームのようにいつまでも恨み続けるのも不毛だろうに。

こう思うのは僕が真・帝国の歴史をきちんと理解していないからなのかな。

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