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155 遠征編20 宰相

SIDE:仮想空間皇室専用会議室 アキラ 一人称


『ふん。儂が謝罪してやるんだから感謝するんだな』


 宰相は開口一番、わけのわからないことを言って来た。


『『『それのどこが謝罪だ!』』』


 立会人のカイル(第1皇子)に、当事者の僕、神澤男爵が呆れ返って突っ込みを入れる。


『謝罪するならまず(アキラ)に対するデマを公の場で正式に撤回し名誉挽回をすること。

今回のテロの責任がイーサン(第3皇子)にあると表明すること。

宰相の立場を悪用したからには宰相を辞任すること。

これぐらいはしないと謝罪にならないよ?』


『そんなことが出来るわけがないだろ!!』


 宰相が自分の立場もわきまえず吠えたてる。


『なら戦争だ。

地位を失うか命を失うかの二択だと思ってもらってかまわない』


アキラ(第6皇子)側には他の皇子も帝国正規軍もついた。

近衛も陛下を護るためなら宰相を討つと言っている。

どちらにしろ、陛下の意識が戻ったらどうなるか考えることだ』


 僕の通告にカイル(第1皇子)が追い打ちをかける。


『ぐぬぬ』


 宰相は一言唸ると挨拶も何もせず突然通信を切った。


『だめかね?』


『だめだな』


『でしょうね』


 どうやら宰相は戦争による死を選択したようだ。

だが戦争にはならない。なぜなら……。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



SIDE:帝都宰相執務室 宰相 三人称


『ぐぬぬ』


 宰相が通信を切る。

彼はまだ自分の危うい立場がわかっていなかった。

アキラ(第6皇子)を排除しカイル(第1皇子)にまで責任を被せれば孫のイーサン(第3皇子)を皇帝にすることが出来る。

彼は皇帝が重症を負ったと聞き、皇太子指名が未だ為されていなかったこともあり、今が最大のチャンスだと思ったのだ。

皇帝が助かるなどとは少しも思っていない。

医療カプセルに細工して処分すればいいと思っていたからだ。

いっそ医療カプセルへの細工はカイル(第1皇子)に罪を擦り付けよう。

証拠など捏造すればいい。アキラ(第6皇子)を追求し世論を扇動すれば簡単なことだと思っていた。

宰相はこの時点で完全に謀反人であった。


 だが、アキラ(第6皇子)側は理路整然と証拠を連ねた映像を持ち出してきた。

その映像は視覚から直接訴えて来て、ただの噂話など掻き消すほどの効果を持っていた。

帝国ネットワークに視聴制限なしでアップされた映像により世論は一気に宰相とイーサン(第3皇子)のバッシングに変わった。


「どうしてこうなった?」


 捏造による扇動がブーメランのように宰相とイーサン(第3皇子)に突き刺さった。

自ら煽った民衆が自分達を叩く側に180度立場をひっくり返したのだ、


 それでもまだ宰相は戦争でアキラ(第6皇子)を討てば挽回出来ると思っていた。

今後の跡目争いで宰相側につけば美味しい汁が吸えると思っている貴族などいくらでもいる。

その全戦力をもってアキラ(第6皇子)を討てば逆転の芽はある。

公に謝罪すれば宰相の立場も失う。その選択肢など最初から持ってはいなかった。


『戦争だ! イーサン(第3皇子)、戦力はどのぐらい集まった? おい、返事をしろ!』


 宰相は秘匿回線を使って孫のイーサン(第3皇子)に連絡をしたのだが、イーサン(第3皇子)からは応答が無かった。

その時、宰相執務室の扉が蹴破られ、憲兵隊が雪崩れ込んで来た。

憲兵隊は宰相を取り囲み告げる。


()宰相閣下、皇子会議の総意により第1皇子カイル殿下が皇帝代理を襲名しました。

カイル(第1皇子)殿下の命によりあなたは解任されました。

また国家転覆容疑、皇帝陛下殺害未遂容疑、謀反の疑いにより国家反逆罪で逮捕します」


「そんなバカな。何が国家反逆罪だ!」


「ご存じない? 第3皇子領はニアヒュームに汚染されて壊滅しましたぞ。

ニアヒュームを帝国内に引き入れ、剰え対ニアヒュームの英雄アキラ(第6皇子)殿下を貶めようとした罪。

また皇帝陛下の医療カプセルに細工しようとした皇帝陛下殺害未遂罪。

これらは国家を危うくする企み以外の何ものでもない。

これを国家反逆罪と言わずになんと言うか!」


「儂は宰相だぞ!

国家を思うが故にアキラ(第6皇子)などという自然発生皇子を排除しなければならんのだ!」


「それで皇帝陛下を亡き者にしようとするなど本末転倒だろうが!」


「ぐぬぬ」


 宰相は項垂れると連行されて行った。



◇  ◇  ◇  ◆  ◇


SIDE:皇子会議会議室 アキラ 一人称


『終わったな』


『ああ』


 僕達は一部始終を見ていた。

宰相は国家反逆罪で終わりだ。

まさか宰相の命令により、皇帝の医療カプセルに細工をして殺害しようとまでしているとは思っていなかった。

これにより皇子会議が緊急招集され、イーサン(第3皇子)を除く全ての皇子からの賛同を得てカイル(第1皇子)が皇帝代理に選ばれた。

その後は皇帝代理の強権により宰相は解任、逮捕となった。


 この後、第3皇子(イーサン)領を閉鎖しニアヒュームを殲滅するのは大仕事だった。

なぜかイーサン(第3皇子)はニアヒュームに寄生されることなく生きていた。

今回のアキラ(第6皇子)中傷事件は宰相の独断ということでイーサン(第3皇子)の罪は問えなかった。

ただニアヒュームを帝国領に引き入れた罪だけは残ったが、星系を失う被害を受けたのがイーサン(第3皇子)本人だったため、加害者が被害者という面倒な立場となり不問となった。

そして皇帝陛下殺害未遂の容疑もイーサン(第3皇子)の預かり知らないところでの宰相の暴走であり罪に問うことは出来なかった。

これが中世の世ならば謀反人の家族は皆殺しだろうが、中途半端に近代化されている帝国ではそこまでのことは出来なかった。

皇帝代理のカイル(第1皇子)であっても、同格の皇子人事にまでは口出しは出来ないということだった。

まあ、今後皇帝が意識を取り戻せば、最低でもイーサン(第3皇子)は廃嫡されるだろう。

気性の激しい皇帝ならば死刑もあるとカイル(第1皇子)は言っていた。

宰相が余計なことをしなければそこまでは行かなかっただろうに……。

身内運の無い奴だ。

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