136 遠征編1 帝都進入
帝国ネットワークによる公式文書で帝都への招集命令の出た僕は準備に入った。
今回開示された情報には帝都のグローバル座標が示されていた。
この座標により、どの次元跳躍門を経由して行けば帝都まで辿り着くのかがわかった。
今まで皇子なのに帝都の場所さえ知らなかったというのもどうかと思うが……。
まあ、ケイン元皇子による妨害で、皇子としてのイロハを伝えてもらっていないことと、自然発生皇子であまり信用されていなかったせいだろう。
命令では期限厳守での上洛なので、招集期限からしてハブ次元跳躍門を駆使した上での直接次元跳躍しかない。
ハブ次元跳躍門経由だけでは、どう知恵を絞っても招集期限に間に合わない。
まあ、僕の領地が辺境だからというのが主な原因だろう。
おそらく上位皇子たちの領地ならば、ハブ次元跳躍門を経由すれば期限内で充分上洛出来るのだろう。
となると僕のような辺境領地の皇子は次元跳躍機関を持つ艦による参集しか考えられない。
うちで唯一次元跳躍機関を持っている楓を連れて行くのは無理。
一応あれでも真・帝国の姫だから帝国に存在がバレたら拙い。
なので僕は単艦での上洛という選択となった。
そのため次元格納庫に無人艦を9000追加して合計10000艦に増強した。
もしも壮大な罠だったとしても次元跳躍で逃げ帰る隙は作れるだろう。
次元跳躍には、次に次元跳躍出来るまでのクールタイムがあるので、その時間稼ぎが出来ればいいのだ。
後は補給を受けられない場合に備えて食料を1年分ぐらい持って行こう。
次元跳躍機関標準装備の要塞艦なら大量の人員や艦を搭載したまま次元跳躍出来るが、要塞艦は星系防衛の要だ。
第8皇子、第9皇子の元主星系の要塞艦は大破して機能していない状態。
帝都まで要塞艦を持ち出せる余裕なんて、今の僕の領地には無い。
工業惑星で建造するにしても時間がかかる。
まあ、危ない所に誰を連れて行くのかという人選も面倒なので、これで良かったのかもしれない。
領地の防衛は獣人族の3軍に、内政は神澤男爵に丸投げしよう。
地方領主が家来を連れて――僕は単身赴任だが――帝都に参集するって、参勤交代みたいなものか?
「じゃあ、行ってくるわ」
僕はアノイ要塞から帝都に向け専用艦を発進させた。
まずはハブ次元跳躍門を使って大跳躍しエリュシオン門へ向かう。
エリュシオンの次元跳躍門は超ハブ次元跳躍門という銀河間跳躍能力を持っている次元跳躍門だ。
これら旧帝国の遺産である古代次元跳躍門はロストテクノロジーだ。
現帝国の製造している次元跳躍門よりも高性能であり再現不能だ。
本来なら帝都である帝国本星にも存在していたはずだが、それは一部の機能が失われてハブ次元跳躍門と同じ能力にダウングレードされているようだ。
なので僕は帝都に物理的に最も近い古代次元跳躍門を選び大跳躍、そこからは帝都へ向け次元跳躍を使う。
古代次元跳躍門を使ったのは、いちいちハブ次元跳躍門の領主に許可を取る時間が無かったからだ。
皇子が強制的に次元跳躍門を使ったとしても怒られはしないだろうが、そこで時間を取るのは面倒だったのだ。
なので誰も知らない古代次元跳躍門をエリュシオン門のデータにより探し出して使用したということだ。
この経由地に使った古代次元跳躍は、現帝国には未発見のもので、星系も資源豊か。しかも防衛艦隊――電脳制圧済み――付きだったので美味しかった。
ここも星系探査を行い所有登録をしておいた。とりあえずAKR14(仮)で。
『こちら第6皇子アキラ。帝都管制に告げる。帝都進入許可を願う。進入は5分後の予定』
僕は帝都進入即撃沈なんてことにならないように進入許可を次元通信で申請した。
これは召集の際に開示された正式な通信チャンネルなのできちんと伝わるはずだ。
物理距離は1000光年ぐらい。銀河碗の厚みぐらいの距離がある。
次元跳躍で5分かかる距離なら次元通信でも5分かかると思うだろうが、そこは巨大艦と光子単位での情報という扱う質量の違いによりエネルギー効率が違う。
なので次元通信の方が圧倒的に速度が早く、ほぼリアルタイム通信が実現している。
『こちら帝都管制。進入を許可します』
許可も出た。僕は帝都に向けて次元跳躍した。
5分後。僕の専用艦は帝都の安全宙域に次元跳躍アウトした。
なぜか慌てて突っ込んで来る帝都防衛艦隊。
僕は次元跳躍での離脱を準備し身構える。
『こちら第6皇子アキラ。次元跳躍アウトした』
『こちら帝都管制。
申し訳ありません。手続きミスです。
こちらは次元跳躍門からの進入だと思っていました』
『え? 皆さん次元跳躍じゃないの?
遠い領地の皇子は間に合わないでしょ?』
『間に合わない皆さんは、それを理由に辞退するんですよ』
帝都管制の管制官が困ったように言う。
と同時に臨戦態勢で突っ込んで来ていた帝都防衛艦隊が艦首を翻し戻っていく。
「しまった。こんな奇手を使わないと間に合わない招集なんて、来なくて良いってことだったのか!」
要塞艦に戦闘艦満載で来たならまだしも、僕は単艦だし、何しに来たんだと思われていそうだ。
『第1皇子殿下の艦隊が到着します。そこを動かないで下さい』
帝都管制が警告すると同時に第1皇子遠征艦隊が次元跳躍門を通って進入して来た。
その数4万艦。勇壮なる大艦隊だ。
一方僕は身一つの単艦行動。
どうやら僕はやってしまったらしい。
無人艦展開しとく? いや奥の手は隠しておこう。
どうせ傷つくのは僕のちっぽけ矜持だけだ。(泣)




