130 領主編24 嫁ーず動く1
SIDE:晶羅邸 キャロライナ視点
「旦那様がお困りのようです。私どもの出番です」
私、押しかけ嫁1号こと猫族のカプリース子爵令嬢キャロライナが嫁ーず会議の開催を宣言します。
そこには押しかけ嫁2号こと犬族のグラウル子爵令嬢マリアンナと、押しかけ嫁3号ことラーテル族のラーテル男爵令嬢ジェーンが集い、決意の籠った顔で頷いていますわ。
クローン襲撃事件以降、旦那様の地球人奪還事業が滞っていることを、私ども3人は危惧して集まったのです。
「このまま旦那様が忙しいと、私どもが構ってもらえませんわ!」
それは私どもにとって由々しき事態ですの。
親元からは早く御子をと矢の催促ですのよ。
「でもキャリー、私らだけで、どうすればいいのかしら?」
それを今から決めるのですわよマリーさん。
「父上の話では、クローンの専用艦がダロン4産なのかどうかの確証を得たいらしいぞ」
それは情報漏洩ですわよジェーンさん。
「研究所に突入したラーテルの情報なら間違いなさそうです~」
マリーさん、うんうんと頷いてる場合じゃなくってよ。
「いやいや、いいんですのそれ?」
お二人の弛さに頭が痛くなってきましたわ。
「それなら私らでちょちょっと調べてまいりましょう」
そんな簡単な話ではなくってよマリーさん。
「それしかないな。護衛はあたいと専属護衛4人に任せろ」
ちょっとジェーンさん勝手に話を進めないで下さる?
「そうと決まれば直ぐに出発するぞ!」
ああ、もう私が付いて行かなければ、どうにもなりそうにありませんわ。
「上手くいけば、旦那様に褒めてもらえますね~」
え? 旦那様が褒めてくれる?
「しかたありませんわね」
いけませんわ。妄想でニヤけてしまいましたわ。
私は正気に戻ると各所に根回しの連絡を入れました。
お二人も決意の表情を浮かべ行動に移りましたわ。
嫁ーずが動いた。自らの欲望のために。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:晶羅邸 キャロライナ視点
「駄目ね。第8皇子の主星系であるダロン星系に乗り込むのは無理ですわ」
私は頭を抱えてしまいました。
旦那様が慎重になっているのは、第8皇子と無闇に事を構えないため。
第8皇子が地球人クローン襲撃事件に関与しているかどうか確定的な証拠も無いというのに敵対行動は出来ないのです。
「ダロン星系産の宇宙艦が配備されているような別の星系を探すのも有りだ」
ジェーンさん、それがわかれば旦那様がもう調べてますわよ。
「となると第8皇子の直属の配下が治める星系が狙い目ですね~」
マリーさん、それも当然調べようとしているはずですわよ。
「ここ、ダロン星系ハブ下星系のウグリチ星系ウグリチ3。何か聞き覚えがあります~」
ん? マリーさん、ウグリチ3ですって?
わたしはつい叫んでしまいました。
「そこ! 有名なブランドショップがありますわ!」
マリーさん、ウグリチ3によく気づきました。それが突破口になり話が広がりますわ。
ブランドショップなら私たちなら訪問しても不自然じゃないわ。大手柄ですわ。
ウグリチ3は、各種繊維織物や衣料品生産の服飾産業が主産業で衣料品ブランドが工場を置き、最先端ファッションの発信地として栄えている惑星ですわ。
首都にはブランドショップが軒を連ね、女性客がショッピング目当てで押しかけていますわ。
「星系領主のブィコフスキー男爵は確かに第8皇子の配下ですわね」
私は、マリーとジェーンの顔を見つめ微笑みかけました。
「ここなら堂々と訪問できるぞ」
ジェーンさんもニヤリとしています。
「決まりね~」
マリーさんも緩ーく同意します。
「行きますわよ!」
でも、嫁ーずは気付いてなかった。
どうやって宇宙艦を調べればいいのか、全く検討もしていないことに。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
SIDE:ウグリチ3 キャロライナ視点
私達の専用艦3艦と熊族虎族獅子族ラーテル族の護衛4艦は仲良くハブ次元跳躍門に到着すると、ダロン星系に一瞬出てそのままUターンし、亜空間をハブ下のウグリチ星系に向かいます。
『星系進入許可を。
こちらはカプリース子爵令嬢、グラウル子爵令嬢、ラーテル男爵令嬢と護衛4艦を含めて計7艦です。
目的はショッピング。よろしくお願いしますわ』
『子爵に男爵令嬢? しばらくお待ちを』
私の申告にウグリチ星系の管制官が慌てていますわ。
貴族令嬢に失礼があってはいけないというところでしょうか。
まさか私達が旦那様の嫁だとはバレていないですわよね?
『ようこそウグリチ星系へ。歓迎いたします』
案ずるより生むが易し。すんなり通過出来ましたわ。
「それでは、みなさん、ブランド品が待つウグリチ3に向かいますわよ」
「いや、目的が違うと思う」
「やっぱりノープランだったのか!」
ラーテルと護衛が煩いですわね!
◇ ◇ ◇ ◆ ◆
SIDE:ウグリチ3 ジェーン視点
ダメだこの娘。早く何とかしないと。
私、いや面倒くさい。普段通りであたいでいいや。
あたいはジェーン。ラーテル男爵令嬢だ。旦那様の筆頭嫁だ。
今までキャリーことカプリース子爵令嬢に仕切らせていたけど、この娘、ブランド惑星に来たら舞い上がってすっかり目的を忘れている。
あたい達が、このウグリチ3に来たのは、第8皇子系の工業惑星がアノイ星系を襲撃したクローンの専用艦の生産地であるかを確認するためだ。
そのため第8皇子の直属の配下であるブィコフスキー男爵領の宇宙艦を調べようとして、この星系に来たんだ。
あたいが考えた作戦はこうだ。
あたい達の専用艦は貴族令嬢に相応しいように豪華な装飾がなされている。
旦那様に嫁ぐ前は実家も准男爵で貧乏だったから、こうはいかなかったんだけど、今は男爵令嬢いや第6皇子妃に相応しいように豪華な装飾がなされている。
この豪華専用艦にウグリチ星系の宇宙艦が衝突したらどうなるのか。
修理にかこつけて相手を調べられるんじゃないかという寸法だ。
あたいはウグリチ星系内の獲物を求め周囲に目を凝らし観察するのだった。
「駄目ですよ。キャリーさん。落ち着いて~」
マリー、そいつは任せた。




