126 領主編20 研究所
本日3話目です。
124からお読みください。
帝国には脳にナノマシンを移植することで仮想スクリーンが見えるようになったり、自動翻訳がかかったりする便利技術がある。
ブレインハックはそのナノマシンの制御を奪い悪用することで、人を意のままに操ろうとする悪魔の技術だ。
僕は専用艦の電脳が高性能だったおかげで、ナノマシンを守られ、ブレインハックによる洗脳を免れた。
地球人誘拐が失敗したのも、僕がブレインハックから脱し、仲間を助け対策で神澤社長の専用艦のサブ電脳を強化したおかげだ。
SFOチャンピオンのクローン達がブレインハックで操られたクローン・ソルジャーだということが発覚した。
彼らのナノマシンを僕はナーブクラックで解放した。
それによって彼らは何でも話してくれる……はずだった。
だが、中身が4歳児だということが尋問を難しくしていた。
いま、尋問官は彼らが何処からやって来たのか黒幕は誰なのか、厳しい尋問を続けている。
1人1人が個別に入れられた取調室、ここではキース・オブライエンAが尋問を受けている。
「次はこれに耐えてみせろ。我慢できるかな?」
「ちくしょう! 我慢できない! 話す、話すからお願いだ!」
「お前たちは、何処から来た?」
「くっ。俺達はゲルン星系の研究所から……うっ、じゅる……来た」
「お前たちに命令したのは誰だ?」
「じゅるじゅる……所長のゲール……じゅる……だ」
「その上の奴は?」
「ダラダラ……わか……らん」
「よし、食っていいぞ」
「わーい、ケーキだ!」
見た目はおっさんでも中身は4歳児の逆コ◯ン君状態の彼には、さすがに目の前の美味しいスイーツは我慢が出来なかった。
よだれをダラダラ垂らしながらケーキに飛びついていく見た目おっさんの様子はシュールだった。
「全員が同じ証言でした。ゲルン星系の研究所、指示は所長のゲールからです」
「さすがに4歳児を拷問するわけにもいかないから、これが限界か」
僕、社長、愛さん、加えて獣人族のアノイ要塞軍事部門幹部達は尋問の報告を受けていた。
「ゲルン星系の星系領主はキャンベル伯爵。温和で人格者と言われています。
どの皇子とも強い繋がりは無く、逆にどの皇子とも分け隔てなく浅い付き合いがあります。
ただのビジネスで研究所の場所を貸しているだけかも知れません」
愛さんを連れて来たのは、こういった情報を得るためだ。
彼女には僕達に不足している帝国での派閥等の情報を補完してもらっている。
「となると研究所を直接押さえるにしても星系軍と事を構えない方がいいね」
これは慎重な対応が迫られる案件のようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
『こちらは第6皇子アキラの艦隊である。
貴殿の支配星系であるゲルン星系に誘拐された地球人が隠匿されているとの情報を得た。
調査のための寄港を要請する』
『こちらゲルン星系管制室です。
星系政府に問い合わせますので、しばらくお待ち下さい』
僕達の艦隊はゲルン星系の通常次元跳躍門の亜空間側に到着すると次元通信を送った。
ここのハブ次元跳躍門は帝国管理であったため、ハブを通ると何の妨害も無く直ぐに通常次元跳躍門へと転移することが出来た。
次元通信を受けたゲルン星系管制室の対応は通常通り。
敵対している様子は感じられなかった。
『ようこそ、ゲルン星系へ。
こちらは星系領主キャンベル伯爵です。殿下のご来訪を心より歓迎いたします。
ところで地球人誘拐の調査とのことですが、我々には心当たりがありません。
さすがに疑いだけで大艦隊を受け入れるわけにはまいりませません。
証拠の提示をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?』
まさかのキャンベル伯爵自らの対応だった。
キャンベル伯爵は一先ず良識的な提案をして来たと言える。
少数の艦隊で説明に来るように言うのではなく、説明すれば大艦隊の寄港を許すという提案内容なのだ。
これは騙し討ちをしないという配慮であり、誘拐が真実なら受け入れる用意があることを伝えるものだった。
『ご配慮感謝する。キャンベル伯への疑いではなく、そちらの星系にある研究所のゲール所長への疑いである。
そこには誘拐された地球人が隠匿されており、その地球人の違法クローンが製造され、我らの星系に攻撃を仕掛けて来た。
証拠のデータは現在転送中……終了……というわけだ』
データを確認中なのだろう。キャンベル伯爵がしばらく黙る。
『これはなんという恥知らずな行為か!
星系への進入並びに研究所への攻撃を許可します。
研究所は我が星系内の小惑星に造られています。
周囲に我々の施設もありませんので、存分にやってください』
キャンベル伯爵は、データの内容を見て怒りの表情を浮かべていた。
誘拐、クローン、中身4歳児の大人化、洗脳による兵士化、どれをとっても違法行為だからね。
『ありがとう伯爵』
『これは殿下、恐縮にございます』
キャンベル伯爵が通信画面の中で頭を下げる。
向こうにもこちらの映像が行っているので僕だと気付いたのだろう。
キャンベル伯爵は研究所のある小惑星の座標を教えてくれた。
僕はその宙域へ専用艦を次元跳躍アウトさせる。
と同時に次元格納庫から護衛艦隊1000艦を出撃させて研究所を奇襲する。
次元跳躍門前の待ち伏せも無し。
キャンベル伯爵は味方だと確定した。
『アノイ3領軍ならびに地球軍、ゲルン星系への進入を開始せよ』
僕は次元跳躍門の亜空間側で待機していたアノイ3領軍の艦隊9000と地球軍5000、無人遊撃艦隊2万にも突入を指示する。
合計3万4000の大艦隊がゲルン星系に進入して来て研究所小惑星を包囲する。
「外部兵装、長砲身40cmレールガン展開、跳躍弾準備」
『敵研究施設サーチ。情報を得ました。どこを狙いますか?』
僕の目の前に仮想スクリーンが開き、ターゲットリストが表示される。
リストをスクロールさせ、目当てのターゲットを握る。
「目標敵研究施設制御電脳。
40cm跳躍弾の弾体に5cm侵食弾を詰めろ。
準備完了次第発射する」
『準備完了しました。目標敵研究施設制御電脳』
「発射!」
僕は長砲身40cmレールガンの引き金――比喩――を引く。
弾体が消えると敵研究施設制御電脳の設置された部屋に出現、侵食弾による侵食を始める。
目の前の仮想スクリーンにメッセージが出る。
『侵食完了。データリンク開始。乗っ取りますか?』
僕は黙ってYESアイコンを掴んだ。
『ナーブクラック開始。5・4・3・2・1終了しました。
敵研究所を掌握、格納庫ハッチ閉鎖、ネットワークより敵艦の侵食を開始します』
『陸戦隊上陸! 研究所を制圧せよ』
僕の命令にラーテルの強襲揚陸艦が研究所の港へと進入し内部の制圧を開始した。
所長のゲールを拘束し背後関係を吐かせよう。
地球人をあのように扱った落とし前をつけてもらおう。




