119 領主編13 ドキッ! アイドルだらけの海洋リゾート 中編
コテージに偽装されたリゾートホテルのスイートにはいくつかの寝室があった。
その中の一際豪華な部屋が僕の寝室にあてがわれた。
中にはキングサイズのベッド。この部屋はどう見ても新婚さん仕様だ。
遊び疲れた僕は、そんなことを感じつつも、その意味することを頭から放り出して眠りについてしまった。
深夜、僕は身体に重みを感じて目が覚めた。
どうやら僕の上に誰かが乗っているようだ。
「あん♡動かないでください♡」
誰? ど、ど、どうして僕の上に?
僕の頭にはあの単語しか浮かんで来なかった。
「夜這い」誰かがついに実力行使に出たのか?
「だ、誰かな? な、何をするつもり?」
ついつい声が上ずってしまう。
「静かに。虎族護衛のルーデリアです。
只今、このコテージは襲撃を受けています」
「はいぃ?」
ルーデリアによるとコテージの外に肉食獣――獣人族のことではない――がうろついているらしい。
しかも、その肉食獣は、この星にはいない生物ではないかとのこと。
つまり、外部からの襲撃が疑われるという事態だという。
なので、護衛である虎族のルーデリアが僕の寝室にやって来たということだ。
彼女はシューティングドリームのメンバーと同室だったが、獣人族護衛たち4人は僕らのコテージをずっと警戒し守ってくれていたのだそうだ。
しかし、疑問が一つある。
なぜ、僕の上にいる?
推定Eカップの大きな胸ががっつり押し付けられているんですが?
「安心してください。若のことはこの身を盾にしてでも守って見せます!」
つまり人間の盾ってことかな?
「履いてますよ」でなくて良かったと思ったが、脱がれていたらもっと拙いことに気付いた。
太ももが僕の腰に巻き付いて来ているが、これで護衛になるのだろうか?
どう見ても僕が押さえ込まれているんじゃないかと。
若い女性の香りと柔らかい身体の刺激に思わず僕の息子がハッスルしだす。
それに気づいたルーデリアが舌なめずりをする。
むしろ肉食獣はここにいた!
僕のパジャマのズボンを引きずり降ろそうとする彼女の右手をなんとか押さえる。
その僕の手をすり抜けて右手が逆に僕の手を押さえる。
今度は彼女の左手がズボンをずり下げてくる。
それを防ごうと……。
まるで格闘技の組み手争いのようだった。
虎族に組み手争いで叶うわけもなく、僕の息子は彼女の手に蹂躙された。
そして彼女が僕の腰の上にまたがり、いよいよという時に、僕の個室のドアが開け放たれた。
どうやらいつのまにか中から鍵がかけられていたようだ。
それをマスターキーで開けたのは猫族の姫であるキャリーだった。
「何をなさっているのかしら?」
キャリーが詰問する。目が怖い。
だが、その怒りはルーデリアに向けられているものだった。
「嫁でもないあなたが若様を独り占めとは、立場を弁えなさい!」
その怒りに半裸――いつのまに脱いだ!――のルーデリアはすごすごと退いて行った。
虎族は猫族の氏族扱いで立場が違い過ぎたのだ。
こっそりどうにかなればいいが、見つかってしまったからには、一族のためにも直系の主君にあたる猫族の姫の不興を買うわけにはいかず退くしかなかったのだ。
危なかった。もう少しキャリーの突入が遅ければ一線を越えるところだった。
いや、ほとんどの人にとっては確実にアウトのパターンだろう。
僕は恐る恐るキャリーの様子を伺うしかなかった。
「怖かったのですね?」
その様子にキャリーは僕が恐怖を味わっていたと思ったらしく、そのままキングサイズのベッドに上がると僕を優しく抱きしめ慰めてくれた。
いや、エッチなこと大好きな僕は、あのまま放置されたら確実にルーデリアを抱いていた。
据え膳食わねば男の恥というが、あそこまで行ったら歯止めが利かなかった可能性が高い。
嫁同伴の旅行で、嫁以外を先に抱くなどあってはならないシチュエーションだ。
危なかった。その恐怖で僕は震えていたらしい。
「彼女たちは一族の命令であわよくば若様の種をと虎視眈々と狙っております。
お気を付けください」
なんですと。それじゃあ、肉食獣の襲撃というのは?
ルーデリア自身の襲撃ということなのか?
キャリーの抱擁に安心しきった僕は、いつしか眠りについていた。
翌日、ベッドには裸の僕の横にキャリーが全裸で寝ていた。
どうやら初夜が終わったらしい。
いつ脱いだのか? 何をしたのか?
ぜんぜん覚えていない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
今日は各自自由行動になった。
どうやら昨夜の肉植獣襲撃はルーデリアの狂言で、僕にとっての肉食獣は彼女自身だったようだ。
もう少しで襲われて食べられてしまうところだった。
それにしても、キャリーとはあれからどうなったのだろうか?
全く記憶が無い。
今日はメンバーを誘って釣りに行くことにした。
社長と菜穂さん、沙也加さん、シューティングドリームのメンバーはBBQの準備だそうだ。
魚を釣って一緒に焼いてもらおう。
釣りの参加者は紗綾と美優。
綾姫も誘ったが、なぜか断られた。
もしかして、朝に部屋からキャリーが出ていくのを見られたのかもしれない。
朝まで一緒とは、そういうことだと判断されたと思われる。
本当に初夜を迎えていたなら覚えていないとは勿体ないことをした。
覚えていないという事は、むしろ潔白なんじゃないだろうか?
いや、そうに違いない。
だが、既成事実というものはこうやって作られていくのだ。
なので、釣り場に向かう間の紗綾と美優の接触が激しい。
「僕たちって偽装結婚だったよね?」
「まだそんなこと言ってるー。紗綾は本気だって言ったろー」
「美優も」
紗綾どころか美優も嫁になると言う。
本気じゃなかったのは綾姫だけだな。
「地球に帰ったらどうするのさ。重婚になっちゃうぞ。
それにアイドルも出来なくなるぞ」
「いいもーん。晶羅っちとこっちに住むからー」
「ん。美優も」
どうして彼女たちが僕を選んでくれたのかわからないが、ぼっちが長かった僕には家族が増えるのは嬉しい限りだ。
「本気にしちゃうぞ?」
「「いいよ♡♡」」
僕は二人を両腕に抱きしめた。
二人も僕を両側から抱きしめてくれた。
「今夜待ってるからね♡♡♡」
紗綾がとんでもないことを言い出した。
アイドルとしてそれだけは拙い。
引退するまでは我慢して欲しい。
「お、着いたぞ」
ちょうど釣り場の磯についたので僕は聞こえなかった振りをして誤魔化した。
僕たちは背負っていたリュックから早速釣り竿を出すと釣りを開始した。
魚影が濃く、入れ食い状態で釣れる。
「しまった。こんなに釣れるのにクーラーボックスを持って来なかった」
僕が釣り竿をリュックにいれて来て。紗綾がバケツを一つ持って来ていた。
そのバケツでは持ち帰れないほど魚が釣れてしまった。
すると僕の背後に人影が!
「どうぞ」
「「「うわ!(きゃっ!)(!)」」」
思わず三人で飛び跳ねてしまった。
そこに居たのはラーテル族の護衛、ミリアンナさんだった。
どうやら、ずっと影で護衛してくれていたようだ。
つまり僕たちのイチャつきも見られていたということ。
紗綾と美優の顔が赤くなる。
「これをどうぞ」
そんなことは全く気にせずミリアンナさんが持っていた物を差し出す。
ミリアンナさんの手にはクーラーボックスがあった。
「ありがとうございます」
僕は動揺を誤魔化すようにお礼を言う。
「かまいません。帰りも私がお持ちします。
これでも力には自信があるんですよ?」
ミリアンナさんは気さくな取っ付き易い人だった。
「すみません。お任せします」
こうして僕たちはしばらく釣りを楽しんだあと、コテージに帰りBBQに舌鼓を打った。
魚の下処理はマリーと熊族護衛のデリファがやってくれた。
肉や野菜はホテルの用意したものだったけど、魚は僕らが獲って来たものだ。
それと海老。なんと綾姫が取って来たんだそうだ。
彼女は素潜りが出来るので、獅子族護衛のライネットと共に別行動をしていたんだそうだ。
良かった。僕が嫌われて釣りを拒否したんじゃなかったんだ。
美味しくて楽しい食事になった。
そしてその夜。
新たな襲撃者が待ち受けていた。
追記
すみません。長くなったので中編としました。
後編につづく。




