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098 放浪編17 真・帝国艦隊

 (かえで)が「助けて」というメッセージを真・帝国に送ってしまった。

宝玉からも次元通信で誘導波が出ているらしい。

真・帝国も自らの代表であるお姫様が帝国に捕まっているとなったら、何が何でも奪還しようと燃えているはず。

このままだとアノイ要塞と真・帝国の艦隊が武力衝突してしまう。

何か良い回避手段は無いものか。


(かえで)、お前は戦艦に乗って1人で帰れるか?」


 僕は(かえで)を厄介払いすれば、武力衝突に至らないんじゃないかと思い、そう提案した。


「お兄ちゃん、宝玉が誘導波を発信したここが目標だから、ボクが帰っても真・帝国の艦隊はここに来るよ?」


 駄目か。


「奪還するべきお姫様が帰って来れば戦う必要は無いかと思ったんだけどな」


「逆にこれだけの期間拘束したってことで怒ってると思うよ?」


 ああ、僕たちは誘拐犯扱いになるのか。

誘拐された場所から人質が逃げて来ても、誘拐された身内は誘拐犯を許すわけがないもんな。


(かえで)が間に入って話を通してくれれば丸く収まらないか?」


「だけど、ボク1人じゃ帰るルートがわからないし、真・帝国の艦隊と会えなかったらどうするの?」


 アノイ要塞に真・帝国の艦隊が到着して、姫を返せと要求して来た時に、肝心の姫がいなかったら拙いか。

それこそ姫を何処へやったって増々怒るだけだな。

最悪の事態を招きそうだ。


「いっそのこと僕の正体を教えて納得してもらうしか……」


「教える時間があるかな? それに信じてくれなかったらどうするの?」


 一触即発の状態で、いちいち宝玉の鑑定を見せる暇なんて無いな。


「これもダメか……」


 僕はなんとかアイデアを絞り出そうと頭を捻る。


「いっそのこと次元跳躍門(ゲート)の亜空間側で待ち伏せして、目の前でお前を解放して返そうか?」


「それで帰ってくれればいいけど、爺やが納得しないと思う」


「爺や?」


 誰だそれ? 


「ボクのお目付け役で教育係のお爺さん。

昔から真・皇帝陛下に仕えていた侍従の一族で皇家の矜持とかに煩いの。

ボクが捕虜になったなんてことは相手を殲滅してでも無かったことにしたがると思う。

ガチガチの武闘派だし」


 なんだよ。何をやっても戦う未来しかなさそうじゃないか!


「また面倒くさい爺さんがいるもんだ」


 ある程度、こっちの力を見せないと交渉も出来ないかもしれないな。

だけど、相手を殺しちゃったら恨みが残って話どころじゃなくなる。

そういや敵勢力が有人艦で攻めて来るのはレアっぽい感じの話だったな。


(かえで)、話にくいことだと思うから嫌なら話さなくてもいいんだけど、真・帝国の軍は全て有人艦か?」


「ううん。ほとんど無人艦だよ。それに別に話せないことじゃないよ」


 軍事機密とか(かえで)は関係ないか。

よし、どんどん教えてもらおうか。


「そうか。それじゃ有人艦の見分け方ってわかるか?」


「それは知らないけど、有人艦は全て専用艦だからワンオフなのは間違いないよ」


 つまり量産艦なら無人艦か。(かえで)、頭いいな。


「なるほど。量産艦なら無人艦の確率が高いという判断でいけそうだな」


 よし、真・帝国との接触パターンをある程度シミュレーションすることが出来たぞ。

これでダメなら武力衝突もやむなしだな。



◇  ◇  ◇  ◇  ◆



 僕と(かえで)は専用艦に乗って真・帝国の艦隊を次元跳躍門(ゲート)の前で待ち伏せることにした。

(かえで)の専用艦である鹵獲戦艦は今も僕の支配下にあるんだけど、「(かえで)に貸す」と僕がイメージするだけで(かえで)に使用権を移譲出来て本人が使えるようになった。

これは艦の電脳が(かえで)のDNAを僕の身内として認識しているおかげらしい。

神澤社長に巡洋艦を貸せたのも仲間として認識しているからだろうか。

ここにもプリンスの嘘があったのかもしれないけど、まあ貸せることがわかったからそれでいいや。

ちなみに鹵獲戦艦のエネルギー分配器は次元格納庫の中で修理済みだ。


 既に通常次元跳躍門(アノイゲート)が敵勢力からシステムへの介入を受け、介入警報が発令されていた。

敵が現れるのももう直ぐだ。

前線に配置されているのは交渉に臨む僕と(かえで)の専用艦の2艦のみ。

さすがに後方にはいざという時のために防衛戦力を展開中だ。


 通常次元跳躍門(アノイゲート)から敵勢力の艦が次々と通常空間に突入して来る。

量産艦ばかりで無人艦だろうから遠慮無く撃つ。

僕は立ち上げていた対艦レーダーと戦術兵器統合制御システムにより脅威判定をして敵艦をマルチロックオン。

増設した長砲身5cmレールガン3門を使って侵食弾を次々と撃ち込んで行く。

残弾∞備蓄のおかげで次々と支配し無力化していく。

まさかここで小口径ゆえの速射性が有利に使えるとは思わなかった。


 ついに敵旗艦と思われる大型艦が突入して来た。

僕は敵旗艦にレーザー通信を送り交渉を始める。

この通信内容は、さすがに外部に漏らすわけにはいかない。

帝国第6皇子()が真・帝国と接触を持ったなんて帝国に知られてはならないのだ。


『真・帝国の指揮官に告げる。そちらの姫は返す。帰ってくれないか?』


(かえで)である。

彼は敵ではない。彼は私の兄様の八重樫晶羅(やえがしあきら)だ。

攻撃をするな。命令だ。攻撃をするな!』


 (かえで)もレーザー通信をつなげ、姫モードで指揮官を説得する。

真・帝国の指揮官は困惑したようで、返信もなかったが、攻撃もして来なかった。

僕はとりあえず、突っ込んで来る敵艦だけは侵食弾で無力化していった。


『突入を()めさせてくれ。それ以上接近すれば、このように無力化せざるを得ない。

停戦に同意するなら、艦を()めてくれ。止まった艦は撃たない』


(かえで)の名において命ずる。停戦せよ。私は犠牲を出したくない!』


 それでもまだ、敵艦が突っ込んで来る。僕は侵食弾を撃ち無力化する。

しかたないな。僕は脅しをかけることにした。


『そちらから3時の方向に岩塊があるのが見えるか? よく見てろよ』


 僕は長砲身5cmレールガン1門を岩塊に向け、岩塊をロックオンするとGバレットを撃った。

Gバレットの弾体が岩塊に向かう。

急速に重力の増した弾体が速度と重量による膨大なエネルギーを命中した岩塊にぶつける。

その結果、岩塊は跡形もなく粉砕された。

それを見た敵旗艦から通信が入る。


『停戦に応じる。ただし、これは降伏ではない。繰り返す。これは降伏ではない』


『了解した。こちらも武器使用を控える』


 僕は警戒しつつ撃つのを止めた。

(かえで)がホッと安堵の溜息をついたのが聞こえて来た。


『僕の隣にいる艦の搭乗者は、あなた方の姫だ。わかるな?

姫は返す。こちらに戦う意思はない』


『彼は八重樫晶羅(やえがしあきら)、私の兄様、真・皇帝陛下の御子だ! 宝玉が反応したから間違いない』


『!』


 真・帝国の指揮官が息を飲む。


『詳しいことは姫様が戻ってからにします。本当に間違いないのですね?

それでは我々が戦う意味が無い。本当ならば是非とも会談を望みたいところです』


『とりあえず、そちらの姫を返すので詳しい話は姫から聞いてください。

その後会談をセッティングしましょう』


『わかりました』


(かえで)、こちらの事情を話して来てくれ。

通信は帝国に盗聴されかねないから無しだぞ』


『わかった。任せておいて』


 僕は(かえで)の専用艦を送り出すとアノイ要塞へと引き上げる。

(かえで)が真・帝国に保護されたのを確認し、侵食弾で無力化していた敵艦を解放する。

敵艦にはナーブクラックを使っていないため、侵食弾で艦内ネットワークを支配しただけなので、その制限を解除するだけで解放出来た。

実は再支配が簡単に出来るんだけど黙っておこう。


 こうして真・帝国の艦隊とトラブルメーカーな妹は帰って行った。



◇  ◇  ◇  ◆  ◇



SIDE:真・帝国某所拠点


 真・帝国の拠り所、真・皇帝の血を引く姫である(かえで)が行方不明になって十数日、彼女の無事な帰還に拠点の皆が安堵の表情を浮かべていた。


「姫様ーーーーーーーーーーーーー!」


 白髪の執事服を来た老人が(かえで)に向かって走り寄って来る。

抱きつかれる刹那、(かえで)がサッと身を避ける。


「爺や、そのようなスキンシップは不要だ」


「これは失礼いたしましたのじゃ。じゃが爺は心配で心配で……。

将軍! 奴らは殲滅したのであろうな?」


 姫に対するデレデレした顔から一瞬で厳しい顔に切り替えて将軍に詰め寄る爺や。

ちなみに爺やは真・皇帝陛下の侍従として古くから仕える譜代の家臣の子孫であり、(かえで)の教育係でもある。

そのため姫に優しく周囲に厳しくという性格だった。


「それはこれからご報告が……」


「何ぃ? 任務を全うせずに帰ったと?」


 爺やが目に威圧を込める。この爺やもスキル持ちのようだ。


「爺や! それには理由があるのだ。話を聞け」


 (かえで)の言葉に爺が威圧を解く。


「しかし、このようにやつれた姫を見ては黙っているわけには「それはもう良いのだ!」」


 (かえで)が食い気味に止める。


「聞け! ボクは向こうで大事な人に助けられたのだ。

それは地球に残されていた晶羅(あきら)お兄ちゃんだぞ」


「なんじゃと! 晶羅(あきら)様じゃとーーーーーーーーーー!」


 爺やの声が五月蠅い。(かえで)は思わず耳を塞ぐ。

気を取り直して(かえで)は説明を続ける。


「うん。宝玉が眩しいぐらいに輝いた。間違いないよ」


「御子がみつかるなんて……。爺は爺はうれしくてたまりませんぞ!」


 爺やが大声で泣く。鬱陶しいこと甚だしい。


「向こうはお兄ちゃんが掌握してた。だから殲滅しなかった。いい?」


「戦ったら、逆に殲滅されていたのはこっちですけどね……」


 将軍がボソリと呟く。それが晶羅(あきら)の専用艦単艦での仕業だとは、とてもじゃないが言えなかった。


「次元通信は届いてなかったの? ボクが必死に念を送ったのに」


「”助けて”を受けたので艦隊を送ったのじゃ。ところで姫、”アニアギス発見。紅玉の洋梨”とは何の暗号じゃ?」


「あー。そっちはダメだったんだ。それは”兄アキラ発見。攻撃の要なし”だよ」


「それが届いていればあんなことには……」


 将軍が項垂れる。


「お兄ちゃんは単艦でめちゃくちゃ強かったぞ。

それにボクはお兄ちゃんからメッセージを託されてる。それを聞いて欲しい」


「そうであったか。おい、幹部を全員集めるのじゃ!」


 爺やが真・帝国の幹部を招集し、謁見の間に場所を移すことになった。


                 ・

                 ・

                 ・


 列席する真・帝国家臣団の前に豪華なドレスとティアラや宝石で着飾った(かえで)が現れ玉座に座った。


「皆、心配をかけた。ゆるせ」


 (かえで)が威厳のある振る舞いで列席する家臣団全員に視線を回す。

全ての家臣に自分の言葉が伝わったのを確認し、言葉を続ける。


「この度私は重大なメッセージを持って帰還した」


 普段はお転婆な(かえで)の姫モードに家臣団が息を呑む。

それほど重要な話ということだ。


「簒奪帝国の捕虜となったと思った私だったが、私を保護したのは私の兄八重樫晶羅(やえがしあきら)であった。

我々がビギニ星系の超ハブ次元跳躍門(ゲート)を奪取しようとしていたのは他でもない。

地球に残された姉華蓮(かれん)と真・皇帝陛下の御子である兄晶羅(あきら)を救うのが目的だった。

その晶羅(あきら)が簒奪帝国に身を寄せ、簒奪帝国の第6皇子となっていた。

本人確認は、この宝玉で行った。私より遥かに強く輝いたぞ」


 会議室がざわつく。

晶羅(あきら)が簒奪帝国の皇子だという話が衝撃的だったのだ。

(かえで)はさわめきを手で制する。


「その兄様から『我と共に戦ってくれ』とのメッセージだ。

兄様は騙され簒奪帝国に身を寄せることとなったが、皇帝の因子のおかげで簒奪帝国の第6皇子となって勢力を拡大しておった。

だが、兄様はそのせいで後継者争いに巻き込まれ罠にかけられて抹殺されるところだったそうだ」


 真・帝国家臣団幹部達が息を飲む。

自分達が崇拝する真・皇帝陛下の御子が抹殺されるところだったとは。


「いま一番の脅威は簒奪帝国第13皇子ケイン、通称プリンスという男であるという。 

やつは兄様の味方を装って近づき兄様を陥れようと虎視眈々と狙っておった。

現在、兄様の戦力は要塞艦1艦と宇宙艦11500艦ほどだ。

プリンスとの戦力差は、ややプリンス優勢とのこと。

そこで、我らの力を貸して欲しいということなのだ」


「我らは真・皇帝陛下に忠誠を尽くす者です。真・皇帝の因子が確認出来れば協力しないという選択肢はありません。

まず使者を送り精密検査を。そして協力体制の詳細を詰めるべきかと」


 家臣団の中から将軍格の者が一歩前に出て言う。


「使者には()が行くとして、遺伝子研究の専門家である八重樫の父母にも行ってもらおう。

そして実務協議には軍部から1人を見つくろってくれ。

我らが表に出ると兄様の簒奪帝国での立場が悪くなる。我らは影で支えることとなろう。

兄様を簒奪帝国の皇帝とすれば、我らの帝国奪還もなるのだ」


 (かえで)が終始姫らしく振る舞い御前会議は終わった。

家臣団幹部が去ると(かえで)は空気の抜けた風船のように腑抜けた。


「やっぱりガラじゃないよーーー!」


 実年齢5歳である(かえで)の姫モードは本人にとっても無理があり消耗が激しすぎるのだ。



◇  ◇  ◇  ◆  ◆



(かえで)から、次元通信で来訪の報告があった。

(かえで)と使者、技術者を含め計4人で来訪する予定だそうだ。

僕は(かえで)を迎えるため、予定時間少し前に通常次元跳躍門(アノイゲート)の直前に専用艦を進出させて待っていた。


 通常次元跳躍門(アノイゲート)に艦隊突入の警報が発令された。

タイミング的に(かえで)達の使者だろうと、通常次元跳躍門(アノイゲート)の目の前で持ち構える僕の専用艦。

だが、突入して来たのは僕がマーキングしている真・帝国の艦ではなかった。


『くっ。油断した。

突入して来たのはレッド! 敵艦隊だ! 迎撃戦に入れ!』


 僕達は敵勢力の奇襲を受けてしまった。

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