2章の2話
「やぁ。 この寒い中12分41秒待たしてくれた君を一体どうしてやればいいのかな?」
「あああ……できれば『そんな君が好きだよ』と言ってチューをしてくれれば嬉しいんですけど」
「フフフ、朝から君は僕を楽しましてくれてるね。半殺しまでならいくらでもしてあげて良いんだよ?」
「スイマセン。ナマいってスイマセンでした。おはようございます」
「おはよう」
そう言って一組のカップルは歩き出す。
1人は自分の好きな人(漫画or小説のキャラ)に似ていると言う理由で。
もう1人はそんな彼女が面白そうだと言う理由で。
そんな理由で2人は付き合いだした。
しばらく2人は無言で歩いていた。
風が冷たい空気を運び、息は白く、2人の頬がピンク色になっている。
沈黙を破ったのは、珍しく和也の方だった。
「言うの忘れてたけど、僕と付き合うには、それなりの覚悟はしてもらうよ」
「へ?」
射頭夢は何かを期待しているような、または何か危険を感じた顔をして和也の方に顔を向ける。
和也は射頭夢のそんな顔を見て楽しそうにクスリと笑う。
「安心しなよ。君が期待してる事にかんしては優しくしてあげるから…。ただね、ちょっと僕に敵意を向けてくる人たちが多くてね」
「……先輩やっぱりそういうヤンキーとかに絡んでいたんですね」
「君が思ってるくらい僕はそんなのにむやみに顔は突っ込まないよ」
「じゃあなんなんすか?」
訝しげな顔をうかべ、和也の方を向いたまま首をかしげる。
和也は少し「痛そうだね」と感想を述べたあと、射頭夢の質問に答えた。
「弟…弟がね、色々と僕に汚いものをぬぐり付けてくるんだよ」
そう言って射頭夢の方を見る。
射頭夢の顔は―――光り輝いていた。
「先輩弟いたんですか!? これは新展開!!」
そう言いながら自分の額を平手で軽く叩く。
「あちゃー! そういう設定考えてもみなかった! 兄弟…そう、兄弟だよ兄弟! いい! それいいよ!」
1人先走る射頭夢を和也は―――無視していた。