1章の3話
「…つまり、僕はその漫画家なんかのキャラに似てるってことでいいんだね?」
「正確には小説です。今度読みます?」
2人は学校近くのファミレスにいた。
射頭夢の方はケーキやらジュースを頼んでいるのだが、和也の方はコーヒー一杯しか見られない。
「先輩ケーキ食べないんですか? ここのって意外と美味しいんですよ?」
「僕は甘党だけど自分で作って満足したのしか食べないよ」
「わー! それもどっかの小説にあったな! 確かそれはマーマレードだったけど…」
時間は数時間前に遡る――――――
「クスックハハハハハハッ!!」
突然の笑い声に身を強張らせる射頭夢。
和也の今までに無い笑い声に「あああ。自分はもうダメだ終わった」などと心の中で叫んでいる。
だが、和也の笑い声もつかの間まだ腹を抱えているが、涙を拭いながら射頭夢に向き直る。
「フフッ いいよ、付き合ってあげても。これほど面白い子に会ったのは中学以来だね」
「えっ!? じゃあ良いんですか! 似てるからって理由で告白したのに…!」
目を丸くして驚いてはいるが、顔を少し赤らめながら聞く。いつの間にか、またも前髪を書き上げ、目を輝かしている。
「良いって言ってるでしょ。…放課後迎えに行くから、またあとでね」
そう言って和也は校舎の中に入っていった―――――――
そんなこんなで色々あって現在にいたる。
ちなみに学校に近いファミレスにいることにより、同じ学校の生徒がこちらの方を珍しそうに見ている。とはいっても、和也が射頭夢を教室まで向かいに行ったことから生徒の約半分にまで広まっていたのだが――――。
「いやー。 まさか先輩と付き合えるとは夢にまで見てなかったですよ」
「別に…。そんなたいした事でもないでしょ」
「いえいえ滅相も無い! もう凄いことですよ!」
「分かったからさっさとそれ食べちゃって? 帰り送ってかなきゃなんないんだから…」
「まじすか!? うわー、さっさと食べちゃわないと!」
そう言って2人の会話は一旦打ち切られる。
「今日はどうも有り難うございました! 色々、話させてもらえてよかったです!」
「こっちは疲れたけどね」
「うう……」
日はもう殆んど落ちて、辺りには闇が広がりかけている。
射頭夢は自分の家につくまでずっと喋り続けていた。
和也は殆んどを聞き流していたが、射頭夢はそれでもご立腹のようだった。
「それじゃ、僕はもう帰るから」
「はい! それじゃ――――」
射頭夢が別れを告げようと挨拶をしかけたが、その言葉は和也によってふさがれる。
その状態がしばらく続き――――
和也は振り向かずに帰っていった。
そのまま硬直状態が続いてた射頭夢だったが、冷たい風が吹くと同時に我に帰り、顔を真っ赤に染める。
「うわーわーヤバイヤバイ! 帰って早速オナろ!」
そう叫びながら家の中に入っていった。